超高齢化社会を迎えつつある日本では昨今、健康寿命をのばすためにさまざまな取り組みがなされています。平成元年から厚生省(当時)が日本歯科医師会とともに推進している「8020(ハチマル・ニイマル)運動」もその一つ。歯科疾患が食生活や社会生活に大きな影響を及ぼすことから、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」ということを掲げています。

そんな国の方針がある一方で、忙しい現代人はまだまだ歯から健康を見直す動きが十分ではないと指摘されています。そんな中、11月8日の「良い歯の日」に向け、日本歯科医師会主催、パナソニック協賛で「歯の健康シンポジウム 2019秋」が行われました。

自覚症状なく歯周病になっている若年層は意外と多い

シンポジウムにはまず、日本歯科医師会常務理事の小山茂幸氏が登壇。厚生労働省が発表した「平成28年歯科疾患実態調査」によると、運動開始当初には1割にも満たなかった8020達成者(80歳で20本以上の歯を有する人の割合)は51.2%となり、想定よりも6年早く目標値に到達しました。これにより現在「8020運動」は、最も成功した国民運動の一つとして評価されています。

一方で、同調査からわかるのは、平均20本の歯を有するのは69歳までであり、70歳以降は19本、18本…と歯の本数が減少していく人が急増するということ。これは、70歳になってから歯の健康意識を高めるのでは遅すぎるという結果でもあり、働く世代や子育て世代こそ気を付けなければいけないことだと、小山氏は警鐘を鳴らします。

実際に2005年に8020推進財団が行った「永久歯の抜歯原因調査」を見ても、歯周病による抜歯数は35歳を超えたあたりから徐々に増えていき、55歳~59歳でピークに。

歯垢が原因で起こる歯周病は、始まりはほとんど自覚症状がありません。歯周病は中高年で起こるイメージがありますが、実際には10代~20代の若者でも自覚症状なく起こっているケースが少なくないといいます。また、中高年以降で進行すると骨自体が溶けて歯茎がスカスカになるので、治療が完了しても継続的な口腔ケアが必須となってしまうのだとか。

歯の健康を保たないとリスクが高まる介護や医療費

一方、う蝕(むし歯)による抜歯数は歯周病による抜歯数ほど多くないものの、20歳を越えたあたりから確実に増えていき、30代では50代と同程度の割合になっています。

その要因としては、高校生まで義務付けられている定期歯科検診が、大学生や社会人になると任意になることが挙げられるでしょう。日々の忙しさから歯科検診をおろそかにした結果、気付いた時には歯周病やう蝕が進行している人は非常に多いと指摘されています。

小山氏は「近年になって歯の重要性がさかんに叫ばれているのは、口腔健康管理がその人の人生に及ぼす影響が鮮明にわかってきたから」と強調しました。

まず、歯を喪失していたり義歯を使用していなかったりする65歳以上の高齢者は、そうではない高齢者に比べて転倒リスクが2.5倍に上がってしまうことがわかっています。また、歯が19本以下の高齢者は20本以上の高齢者と比べ、咀嚼機能の低下から要介護リスクが高くなり、歯が1本でも減ると医科医療費が高くなることも判明。

さらに歯周病が糖尿病や認知症発症リスクを高めることもわかっており、日本歯科医師会が50代~70代を対象にした調査では「早めの歯科検診や治療をしておけばよかった」と後悔している人は4人に3人という結果になりました。

ホリエモンが問う、歯ブラシ以外のマーケット拡大と広告宣伝のあり方

これだけ歯の重要性が認められているにも関わらず、どうして働く世代は歯の健康を軽視しがちなのでしょうか。続いて、医師やクリエイターとともに「一般社団法人 予防医療普及協会」を発足させた実業家の堀江貴文氏が、パフォーマンスを向上させるオーラル意識改革について小山氏とトークをしました。