裁判所の案内(2026年10月時点)によると、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述する手続きです。受理されると、最初から相続人ではなかったものとみなされます。

手続きそのものは、申述書と戸籍などを家庭裁判所に出すもので、複雑ではありません。ただ、見落としやすい決まりがあります。必要書類は、申述する人の立場で変わります。相続財産を処分すると、単純承認とみなされる場合もあります。

この記事では、前半でこの疑問に、裁判所の公表資料(2026年10月時点)と民法の条文、編集部の試算で答えます。後半では、手続きの流れ、立場別の必要書類、費用を順に確認します。個別の判断は、家庭裁判所や弁護士に確認してください。

1. 葬儀代を故人の預金から払うと、相続放棄できなくなる?放棄したら次は誰に回る?

「父が亡くなりました。借金があるかもしれず、相続放棄を考えています。葬儀の支払いが迫るなか、父の預金から払ってよいのか分からず、手が止まっています。それで放棄できなくなりますか。私が放棄したら、借金は次に誰へ行くのでしょうか」。この疑問は、編集部が想定したもので、実際の問い合わせではありません。

この疑問は、一人の事情に見えますが、同じ仕組みは、相続の手続きをする人にも当てはまりえます。答えは、次の3点です。

  • 相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認したものとみなされます。預金の引き出しは、慎重に確認する必要があります
  • 葬儀費用に預金を使った場合の扱いは、確認できた公的資料からは読み取れませんでした。預金に手を付ける前に、家庭裁判所や弁護士に確認してください
  • 先の順位の人が放棄すると、次の順位の人が相続人になる場合があります。放棄した人は、初めから相続人でなかったものとみなされます

2. 相続放棄の前に預金を使うとどうなる?葬儀費用や子の放棄など4つの場合を裁判所の資料と民法で確認

読者の方が気にしそうな「もし」を、裁判所の資料と民法で確認します。いずれも、ご自身の相続放棄が受理されるかを確定するものではありません。

  • もし、故人の預金を引き出して使ったら:財産の処分にあたり、単純承認とみなされる場合があります
  • もし、葬儀費用に預金を使うなら:確認できた公的資料では分かりませんでした。使う前に、家庭裁判所や弁護士に確認してください
  • もし、子が放棄したら:子は初めから相続人でなかったものとみなされ、次の順位の人が相続人になる場合があります。子の子(孫)が代わりに相続人になることはありません(民法939条)
  • もし、3か月で決められないなら:期間の伸長を申し立てられます

ここからは、この答えの前提になる手続きを順に確認します。相続放棄の意味、相続の選び方、申述できる人と申述先、費用、立場別の必要書類の順です。

3. 相続放棄は、借金も含めて一切受け継がない手続き:自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する

裁判所の「相続の放棄の申述」によると、相続が開始した場合、相続人は3つのうちのいずれかを選べます。被相続人の権利も義務もすべて受け継ぐ「単純承認」、権利や義務を一切受け継がない「相続放棄」、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ「限定承認」です。

このうち、相続放棄と限定承認をするには、家庭裁判所に申述をしなければなりません。放棄は、財産に手をつけずにいれば自動的に成立するものではなく、家庭裁判所に「放棄します」と申述して、受理されることで成立します。

申述の期間は、民法により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内と定められています。起算点は、亡くなった日そのものではなく、「知った時」です。この点は、後の章でも触れます。

放棄が受理されると、民法939条により、その人は、その相続に関して、初めから相続人にならなかったものとみなされます。そのため、被相続人の借金などの債務を、相続によって負担することはありません。

齊藤 慧
大切な方を亡くした直後に、「3か月」という期限を意識するのは、気持ちの面でも大変なことだと思います。ただ、期限は「知った時」から数えます。まずは、慌てすぎずに、何が残されているのかを整理するところから始めてみてください。期限の目安を、手帳などに書き留めておくだけでも、気持ちが落ち着きやすいと思います。

4. 相続の選び方は3つ:単純承認、相続放棄、限定承認で、受け継ぐものと申述の要否が違う

3つの選び方は、受け継ぐものが大きく異なります。借金がどの程度あるか分からず、財産が残る可能性もある場合には、限定承認という選び方もあります。裁判所の説明では、そのような場合に、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐものとされています。

限定承認には、制約があります。裁判所のQ&Aによると、限定承認の申述は、共同相続人全員で行う必要があり、一部の人だけで行うことはできません。相続放棄をした人は、相続人ではなかったものとみなされるため、それ以外の共同相続人全員で申述します。

限定承認が受理されたあとの手続きも、別にあります。裁判所のQ&Aによると、限定承認者(相続人が複数のときは、受理と同時に選任された相続財産清算人)は、相続財産の清算手続を行います。期間内(限定承認者は5日以内、相続財産清算人は選任後10日以内)に、限定承認をしたことと、債権の請求をすべき旨の公告(官報掲載)の手続が必要です。

なお、亡くなった人に相続人がいるかどうか分からないときは、別の手続きがあります。裁判所のQ&Aでは、家庭裁判所に相続財産清算人の選任の申立てをし、選任された相続財産清算人に清算手続をしてもらうことになる、と説明されています。

4.1 【相続の選び方3つの違い】

前提条件:裁判所「相続の放棄の申述」と、家事事件Q&Aの説明に基づく整理。相続放棄と限定承認の申述の期間は、いずれも自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内1/2

前提条件:裁判所「相続の放棄の申述」と、家事事件Q&Aの説明に基づく整理。相続放棄と限定承認の申述の期間は、いずれも自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内

出所:裁判所「相続の放棄の申述」と、裁判所「家事事件Q&A」を基にLIMO編集部作成

  • 単純承認:土地の所有権等の権利や借金等の義務を、すべて受け継ぎます。申述が必要とされているのは、相続放棄と限定承認です。
  • 相続放棄:権利も義務も、一切受け継ぎません。家庭裁判所への申述が必要で、申述人1人ずつ行います。
  • 限定承認:相続によって得た財産の限度で、被相続人の債務の負担を受け継ぎます。家庭裁判所への申述が必要で、共同相続人全員で行います。

5. 申述できるのは相続人で、申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所:未成年者は法定代理人が代理する

裁判所によると、申述できるのは、相続人です。相続人が未成年者または成年被後見人の場合は、その法定代理人が代理して申述します。

未成年者と法定代理人が共同相続人であって、未成年者のみが申述するときなどは、その未成年者について特別代理人の選任が必要です。ただし、法定代理人が先に申述している場合は除かれます。ご家族に未成年のお子さんがいる場合は、早めに家庭裁判所に確認すると安心です。

申述先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。申述人の住所地ではない点に注意してください。申述先の裁判所は、裁判所のサイトの「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」で調べられます。

6. 費用は、申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手:家族全員で申述すると人数分かかる

裁判所によると、申述に必要な費用は、収入印紙800円分(申述人1人につき)と、連絡用の郵便切手です。郵便料は裁判所ごとに異なるため、申述先の家庭裁判所のサイトで確認する必要があります。郵便料は、保管金として納付することもできます。

家庭裁判所のQ&Aによると、相続放棄の申述が受理された証明書は、受理をした家庭裁判所に申請します。申請書に必要事項を記入し、150円分の収入印紙を添えます。郵送の場合は、返信用の郵便切手も必要です。

申述人の人数ごとの費用を、編集部が試算しました。申述人1人につき、申述の収入印紙800円と、受理証明書の収入印紙150円の合計で見ています。受理証明書を1人1通ずつ申請すると仮定しました。

6.1 【申述人の人数ごとの収入印紙の費用(編集部試算)】

前提条件:申述人1人につき収入印紙800円、受理証明書を1人1通申請して収入印紙150円と仮定した編集部試算。郵便切手は裁判所ごとに異なるため含めない2/2

前提条件:申述人1人につき収入印紙800円、受理証明書を1人1通申請して収入印紙150円と仮定した編集部試算。郵便切手は裁判所ごとに異なるため含めない

出所:裁判所「相続の放棄の申述」と、裁判所「家事事件Q&A」を基にLIMO編集部試算

  • 申述人が1人の場合:申述の収入印紙は800円、受理証明書の収入印紙は150円で、合計950円です。
  • 申述人が3人の場合:申述の収入印紙は2400円、受理証明書の収入印紙は450円で、合計2850円です。
  • 申述人が5人の場合:申述の収入印紙は4000円、受理証明書の収入印紙は750円で、合計4750円です。

この試算に、郵便切手の費用は含まれていません。また、戸籍謄本などの取得費用や、専門家に依頼したときの報酬も含まれていません。これらの費用は、本記事の範囲では確認できませんでした。

7. 必要書類は、共通の2点に、申述人の立場ごとの戸籍が加わる:配偶者、子、父母・祖父母、兄弟姉妹で違う

裁判所によると、申述には、相続放棄の申述書と、標準的な添付書類が必要です。添付書類のうち、すべての申述人に共通するのは、被相続人の住民票除票または戸籍附票と、申述人(放棄する方)の戸籍謄本の2点です。

そこに、申述人の立場ごとに、戸籍が加わります。配偶者は、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本です。被相続人の子や孫などは、これに加えて、孫などが申述する場合に、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要です。

被相続人の父母・祖父母等と、兄弟姉妹・おいめいは、書類が多くなります。被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本が必要です。どの書類が必要かを、立場別にまとめました。

7.1 【申述人の立場ごとの、共通書類に加えて必要な戸籍】

  • 配偶者の場合:被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要です。
  • 子・孫等(第一順位)の場合:被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要です。孫等の場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本も必要です。
  • 父母・祖父母等(第二順位)の場合:被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本が必要です。死亡している子や直系尊属がいる場合は、その戸籍も必要です。先順位から提出済みのものは不要です。
  • 兄弟姉妹・おいめい(第三順位)の場合:被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本が必要です。死亡している子がいる場合はその戸籍、直系尊属の死亡の記載のある戸籍が必要です。おいめいの場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍も必要です。先順位から提出済みのものは不要です。
齊藤 慧
戸籍を集めるのは、思った以上に手間がかかる作業だと思います。特に、出生から亡くなるまでのすべての戸籍が必要になると、いくつもの役所を回ることになる場合があります。まずは、ご自身がどの立場に当たるのかを確かめて、必要な書類を、早めに洗い出してみてください。

8. 兄弟姉妹やおいめいは、先の順位の人が相続人にならない場合に相続人になる:書類が最も多くなる理由

民法889条によると、被相続人の直系尊属と兄弟姉妹は、子などの第一順位の相続人がいない場合に、順番に相続人になります。直系尊属が先で、兄弟姉妹が後です。

裁判所の説明で、兄弟姉妹・おいめいの書類が多いのは、この順位の仕組みのためだと読み取れます。先の順位の人がいないこと、つまり子や直系尊属が亡くなっていることなどを、戸籍で確かめる必要があるからです。

書類の中に、先順位の相続人(または別の相続人)から提出済みのものがある場合は、同じものを添付する必要はありません。同じ被相続人についての相続放棄の申述などが先に出されていれば、その事件で提出済みの書類は不要です。

なお、先の順位の人が相続放棄をした場合は、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます。その結果、次の順位の人が相続人になる場合があります。この点は、後の章で整理します。

9. 【編集者の視点】

相続放棄の手続きは、「3か月以内に、書類をそろえて出す」という点だけを見ると、単純に思えます。ただ、実際に時間がかかるのは、立場に応じた戸籍をそろえる作業だと感じます。

裁判所は、申述前に入手できない戸籍がある場合は、申述後に追加提出してもよいとしています。期限が迫っているときは、書類が全部そろうのを待たずに、まず申述することが、選択肢の1つになります。

ただし、追加の書類を求められることもあります。具体的な進め方は、申述先の家庭裁判所の窓口で、事前に確認してください。

10. 申述書は裁判所の書式と記載例を使う:成人用と未成年者用があり、戸籍の一部は後から追加できる

申述書の書式と記載例は、裁判所のサイトにあります。申述人が成人の場合と、未成年の場合で、別々に用意されています。

戸籍の謄本は、「戸籍等の全部事項証明書」という名称で呼ばれる場合があります。また、戸籍等に代えて「法定相続情報一覧図の写し」を提出できる場合がありますが、申述する家庭裁判所に確認する必要があります。

審理のために必要な場合は、追加書類の提出をお願いされることがあります。裁判所の説明は、「標準的な」添付書類を示したものです。実際には、事案によって異なる場合があります。

11. 3か月の期間は、延ばせる場合がある:期間の伸長の申立てと、財産の存在を知った時から数える例外

裁判所によると、相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、相続財産の状況を調査しても、まだ、単純承認、限定承認、相続放棄のどれにするかを決められない場合は、家庭裁判所は、申立てにより、この期間を伸ばすことができます。

申立人は、利害関係人(相続人も含む)か検察官で、申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。申立てに必要な費用は、収入印紙800円分(相続人1人につき)と、連絡用の郵便切手です。申立ては、3か月以内にする必要があります。

もう1つ、家庭裁判所のQ&Aには、数年前に亡くなった場合の例があります。申述は、亡くなったことと、これにより自己が相続人となったことを知った時から3か月以内です。ただし、相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から3か月以内に申述すれば、受理されることもあります。

これは、「必ず受理される」という意味ではありません。「受理されることもあります」とされています。個別の事情での判断は、家庭裁判所や、弁護士・司法書士に確認してください。

12. 相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認したものとみなされる:預金の引き出しなどは慎重に

民法921条によると、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。ただし、保存行為と、一定の期間を超えない賃貸は、この限りではありません。

また、同条は、相続人が3か月の期間内に限定承認または相続の放棄をしなかったときも、単純承認をしたものとみなす、と定めています。さらに、放棄や限定承認の後でも、相続財産を隠したり、勝手に使ったり、悪意で財産の目録に載せなかったりしたときは、単純承認をしたものとみなされます。ただし、放棄によって相続人になった人が承認した後は、この限りではありません。

この記事で確認できたのは条文の内容です。具体的にどのような行為が「処分」に当たるかは、本記事の範囲では確認できませんでした。判断に迷う行為は、手をつける前に、弁護士・司法書士などに確認してください。

相続が始まった後の預金の引き出しについては、【元銀行員が解説】「死亡届を出すと口座凍結」は本当?銀行へ連絡する前の「預金引き出し」が招く相続トラブルとは やってはいけないNG行動と「預貯金の仮払い制度」を解説でも紹介されています。

13. 放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされる:ほかの相続人や、次の順位の人に影響が出る場合がある

民法939条によると、相続の放棄をした人は、その相続に関して、初めから相続人にならなかったものとみなされます。裁判所のQ&Aも、放棄した人は相続人ではなかったものとみなされるため、限定承認は、それ以外の共同相続人全員で申述する、と説明しています。

この仕組みから、2つの影響が読み取れます。1つ目は、共同相続人のうちの1人が放棄すると、残りの相続人の人数が変わることです。2つ目は、先の順位の人が全員放棄すると、民法889条の順位に従って、次の順位の人が相続人になる場合があることです。

後者は、例えば、子が全員放棄した場合に、直系尊属や、さらに兄弟姉妹へと、相続人が移る可能性があるということです。次の順位の人にとっては、突然、相続放棄の期限が始まることもあります。

この点は、条文の読み取りであり、期限の起算点などは、個別の事情で変わります。放棄をする方は、次の順位の方へ、事前に知らせておくかどうかも含めて、家庭裁判所や専門家に確認してください。

齊藤 慧
自分が放棄をした結果、ほかのご親族に影響が及ぶ可能性があると知ると、戸惑う方も多いと思います。ご家族や親戚とのお付き合いは、お金の問題だけではないからこそ、手続きの前に、落ち着いて話し合う機会を持てるとよいと思います。お一人で抱え込まず、状況をご家族と共有しておくことが、後々の安心にもつながると思います。

14. 【編集者の視点】

相続放棄は、「借金を引き継がないための手続き」として知られています。ただ、放棄は、プラスの財産も含めて、すべてを受け継がない選択です。何があるのか分からないまま決めてしまうことが、後で悔やむ原因になりやすいと感じます。

財産の状況が分からないときは、期間の伸長の申立てを使って調べる時間を確保する方法があります。また、限定承認という選び方もあります。ただし限定承認は、共同相続人全員で行う必要があり、手続きも別にあります。

どの選び方が合うかは、ご家族の状況によって変わります。1人で決めずに、家庭裁判所や、弁護士・司法書士に相談しながら進めてください。

15. 放棄が受理されたあとは、財産の引き継ぎと債権者への連絡が必要になる:受理証明書は家庭裁判所に申請する

家庭裁判所のQ&Aによると、相続放棄の申述が受理されたときに、亡くなった人の財産を管理している場合は、相続人に引き継ぐことになります。債権者から債務の請求をされている場合は、債権者に、家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよい、とされています。

受理されたことの証明書が必要なときは、受理をした家庭裁判所に申請します。申請書に必要事項を記入し、150円分の収入印紙を添えます。直接窓口へ行く場合は、印鑑と、受理通知書や運転免許証などの本人を確認できるものを持参します。

放棄をせずに、相続した不動産の名義を変える場合は、相続登記にも期限があります。この点は、相続した実家「うっかり放置」で10万円のペナルティも…2027年3月31日までに相続登記をでも紹介されています。

齊藤 慧
相続の手続きは、一つひとつは小さくても、重なると負担が大きく感じられるものだと思います。わからないことがあれば、家庭裁判所や専門家に、遠慮せずに確認してみてください。手続きの順番や必要書類は、ご家族の状況で変わります。一人で悩まず、まず窓口で聞いてみることが、近道になると思います。※本記事は、編集部が裁判所と、法令の条文という公式の一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

16. まとめ

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述する手続きです。受理されると、民法939条により、初めから相続人にならなかったものとみなされます。

費用は、申述人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手です。編集部の試算では、受理証明書も1人1通申請すると、収入印紙の費用は、申述人1人で950円、3人で2850円、5人で4750円でした。

必要書類は、共通の2点に、申述人の立場ごとの戸籍が加わります。民法921条により、相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認したものとみなされます。3か月で決められない場合は、期間の伸長の申立てができます。個別の判断は、家庭裁判所や、弁護士・司法書士に確認してください。

17. よくある質問

17.1 Q. 相続放棄の期限は、いつからいつまでですか?

自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。亡くなった日ではなく、「知った時」から数えます(裁判所「相続の放棄の申述」)。

17.2 Q. 相続放棄の申述は、どこに出しますか?

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。申述人の住所地ではありません(裁判所「相続の放棄の申述」)。

17.3 Q. 相続放棄の費用は、いくらですか?

収入印紙800円分(申述人1人につき)と、連絡用の郵便切手です。郵便料は、裁判所ごとに異なります(裁判所「相続の放棄の申述」)。

17.4 Q. 相続放棄の必要書類は、誰でも同じですか?

共通の書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票と、申述人の戸籍謄本です。それに加えて、配偶者、子や孫、父母や祖父母、兄弟姉妹やおいめいで、必要な戸籍が異なります(裁判所「相続の放棄の申述」)。

17.5 Q. 戸籍がそろわないと、申述できませんか?

申述前に入手できない戸籍等がある場合は、申述後に追加提出しても差し支えない、とされています。ただし、追加書類を求められることがあります(裁判所「相続の放棄の申述」)。

17.6 Q. 3か月で決められないときは、どうすればよいですか?

相続財産の状況を調査しても決められない場合は、家庭裁判所に、相続の承認または放棄の期間の伸長を申し立てることができます。申立ては、3か月以内に行います(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。

17.7 Q. 相続財産を使ってしまうと、どうなりますか?

民法921条により、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。ただし、保存行為などは除かれます(民法921条)。

17.8 Q. 一部の相続人だけで、限定承認はできますか?

できません。限定承認の申述は、共同相続人全員で行う必要があります。相続放棄をした人は、相続人ではなかったものとみなされるので、それ以外の共同相続人全員で申述します(裁判所「家事事件Q&A」)。

17.9 Q. 相続放棄が受理されたことの証明書は、どう申請しますか?

受理をした家庭裁判所に、申請書と150円分の収入印紙を添えて申請します。郵送の場合は、返信用の郵便切手も必要です(裁判所「家事事件Q&A」)。

参考資料

齊藤 慧