総務省が2026年9月20日に公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、2026年9月15日現在の75歳以上人口は2168万人に達しました。こうした高齢化を背景に、親の介護や実家の安全対策に直面するご家族も増えています。

シニア世代は、一度の転倒がきっかけで活動が減り、心身の衰えが進むことがあります。親が要支援や要介護の認定を受けたあとは、廊下や玄関、トイレなど住み慣れた自宅での転倒がより一層気になるでしょう。

そこで頼りになるのが、介護保険を利用して手すりの取付けや段差の解消などの工事費を支給する「住宅改修費」の仕組みです。厚生労働省の「令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、介護保険の住宅改修は2024年度に43万4746件ありました。

ここでは、この制度の対象となる工事と支給の上限、そして上限がもう一度設定される条件を確認します。

1. 介護保険の住宅改修費は、手すりの取付けや段差の解消など6種類の工事が対象

介護保険の住宅改修費は、在宅での介護を続けやすくし、高齢者の自立を支える観点から設けられています。要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた人が自宅で行う、次の6種類の工事が対象です。

介護保険の住宅改修費の対象と支給の上限1/2

介護保険の住宅改修費の対象となる6種類の工事と、自己負担1割・2割・3割ごとの保険給付の上限18万円・16万円・14万円を示した表

出所:厚生労働省「介護保険における住宅改修」を参考にLIMO編集部作成

1.1 住宅改修の6種類は、手すり・段差・床材・扉・便器と、それに付帯する工事

  • 手すりの取付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
  • 引き戸等への扉の取替え
  • 洋式便器等への便器の取替え
  • その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

たとえば、和式の便器を洋式に取り替える工事や、玄関の上がりかまちの段差を小さくする工事、開き戸を引き戸に替える工事が当てはまります。

2. 介護保険の住宅改修費の支給限度基準額は20万円、自己負担1割なら18万円まで支給

住宅改修費の支給限度基準額は20万円です。要支援・要介護の区分にかかわらず定額で、厚生労働省は、住宅改修が個人の資産の形成につながる面があることや、賃貸住宅などに住む高齢者との均衡を考えた額だと説明しています。

2.1 保険給付は1割負担で18万円、2割負担で16万円、3割負担で14万円が上限

保険から支給されるのは、原則として費用の9割です。所得に応じて8割または7割になり、上限は次のとおりです。

  • 自己負担1割:保険給付は18万円まで
  • 自己負担2割:保険給付は16万円まで
  • 自己負担3割:保険給付は14万円まで

20万円の範囲内であれば、複数回に分けて申請することもできます。たとえば1回目に8万円の手すりの工事をした場合、残りの12万円の枠を別の工事に使えます。

2.2 【計算例】工事費25万円なら、1割負担の自己負担は7万円

自己負担1割の人が25万円の工事をした場合、対象になるのは20万円までです。保険給付は20万円の9割の18万円で、自己負担は20万円の1割の2万円と、20万円を超えた5万円を合わせた7万円になります。

同じ工事で自己負担2割の人なら、保険給付は16万円、自己負担は4万円と5万円で9万円です。

2.3 負担割合は、改修費を支払った日の時点のものが使われる

横浜市の案内では、適用される負担割合は、改修費用の支払日(領収書の日付)の時点のものとしています。毎年の負担割合証の切り替えの前後に工事代金を払う場合は、どの時点の割合になるかを市区町村に確かめておくと安心です。

3. 介護保険の住宅改修の20万円は、要介護度が3段階以上重くなったときと転居したときにもう一度設定される

住宅改修費の20万円は、原則として1人あたり生涯の枠です。ただし、次の2つの場合は、それまでの支給額にかかわらず、改めて20万円までの支給を受けられます。

3.1 要介護度の「段階」が3段階以上重くなったとき(1回に限る)

住宅改修費の段階は、要支援・要介護の区分を次の6つにまとめたものです。

  • 第一段階:要支援1
  • 第二段階:要支援2・要介護1
  • 第三段階:要介護2
  • 第四段階:要介護3
  • 第五段階:要介護4
  • 第六段階:要介護5

最初に住宅改修費の支給を受けた工事の着工時点と比べて、この段階が3段階以上重くなった場合に、20万円の枠がもう一度設定されます。この取扱いは1回に限られます。

たとえば、要支援1(第一段階)から要介護3(第四段階)、要介護1(第二段階)から要介護4(第五段階)になった場合は3段階の上昇です。要支援2と要介護1は同じ第二段階なので、要介護1から要介護3になった場合は2段階の上昇で、枠は戻りません。

3.2 転居したとき

住宅改修費の限度額は、いま住んでいる住宅について管理されます。そのため、転居した場合は、前の住宅で支給を受けた額にかかわらず、新しい住宅で改めて20万円までの支給を受けられます。

4. 介護保険の住宅改修は2024年度に43万4746件、要支援1から要介護1で64.0%

厚生労働省の「令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、2024年度(2024年4月〜2025年3月)の介護保険の住宅改修は43万4746件、費用額は約416億5031万円でした。

介護保険の住宅改修の件数(要介護度別)2/2

令和6年度の介護保険の住宅改修の件数を、要支援1の9万397件から要介護5の9286件まで要介護度別に並べた横棒グラフ

出所:厚生労働省「令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)」第8-1表をもとにLIMO編集部作成

4.1 住宅改修の件数は要介護1が9万6557件で最も多い

要介護度別の件数は次のとおりです。

  • 要支援1:9万397件
  • 要支援2:9万1170件
  • 要介護1:9万6557件
  • 要介護2:7万5109件
  • 要介護3:4万2444件
  • 要介護4:2万9783件
  • 要介護5:9286件

要支援1・要支援2・要介護1の3つを合わせると27万8124件で、全体の64.0%を占めます。要介護3以上の3つを合わせた8万1513件(18.8%)の3倍あまりです。

4.2 住宅改修の1件あたりの費用額は約9万5800円

費用額を件数で割ると、1件あたりは約9万5800円です。費用額は、保険から支給される分と利用者が負担する分を合わせた金額です。同じ年度の保険給付の額(給付費)は約367億7403万円でした。

介護保険の住宅改修費は、手すりの取付けや段差の解消など6種類の工事が対象で、支給限度基準額は1人20万円です。2024年度は43万4746件あり、要支援1から要介護1までで64.0%を占めました。

親の要介護度と負担割合は、市区町村から届く介護保険被保険者証と介護保険負担割合証で確かめられます。

ここからは、工事の前の申請から支給を受けるまでの手続きと、親の家で工事をするときに家族が確かめておきたい書類を見ていきます。

熊谷 良子

筆者自身も親の介護経験者です。

足腰の丈夫だった母が、一度の転倒を機に入院し、その後に認知機能まで落ちていく姿を目の当たりにしました。

この実体験からも、手すりの取付けや段差解消といった「転倒予防の備え」は、できる限り早めに検討しておくことを強くお勧めします。