生活保護を受けるようになったら、毎年の健康診断はどこで受ければよいのでしょうか。例えばそれまで国民健康保険に加入していた人の場合、毎年届いていた特定健診の案内が来なくなり、戸惑う人もいるでしょう。
厚生労働省が公表した最新の被保護者調査(令和8年7月分概数)では、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯でした。2026年3月には、福祉事務所が行う「被保護者健康管理支援事業」の手引きが第2版に改められています。
この記事では、生活保護の基本を確認したうえで、生活保護を受けている人が受ける健康診査と、福祉事務所の健康管理支援のしくみを解説します。
1. 生活保護を受けている世帯の55.2%は高齢者世帯、単身の高齢者世帯は51.6%
まずは被保護者調査の令和8年7月分概数で、生活保護を受けている世帯のようすを確認します。割合の母数は、保護停止中の世帯を除いた163万5284世帯です。
世帯類型別の世帯数と割合は次のとおりです。
- 高齢者世帯:90万3116世帯(55.2%)
- うち単身世帯:84万4423世帯(51.6%)
- うち2人以上の世帯:5万8693世帯(3.6%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8114世帯(25.6%)
- 母子世帯:5万4892世帯(3.4%)
- その他の世帯:25万9162世帯(15.8%)
生活保護を受けている人は196万9655人で、前年同月より2万438人少なくなりました。
2. 生活保護は、資産や収入を活用しても最低生活費に届かない分を支給する制度
生活保護は、世帯の収入が国の定める最低生活費に届かないときに、その差額を支給する制度です。健康診査の話に入る前に、生活保護の基本を確認しておきます。
2.1 生活保護の扶助は8種類、医療扶助は医療機関へ直接支払われる
生活保護の扶助は、生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生業・葬祭の8種類です。年金や手当などの収入がある場合は、最低生活費から収入を差し引いた額が支給されます。
医療扶助と介護扶助は、福祉事務所から医療機関や介護事業者へ直接支払われ、本人の負担はありません。生活保護は世帯単位で行い、資産や能力などあらゆるものを活用することが前提です。
2.2 生活扶助基準額の例
生活保護の基準は令和8年10月から見直されました。たとえば北九州市では、見直し後の生活扶助基準額の例を次のように公表しています。障害者加算などの加算を含まない額です。
- 一人暮らしの高齢者世帯(75歳):月6万8980円(令和7年10月は6万8820円)
- 一人暮らしの高齢者世帯(68歳):月7万5350円(同7万4350円)
- 夫婦の高齢者世帯(68歳、65歳):月12万1470円(同11万9470円)
3. 生活保護を受けると国民健康保険の特定健診から外れ、40歳以上は市区町村の健康診査へ
生活保護を受けている間は、国民健康保険や後期高齢者医療の加入者ではなくなるため、健康診査を受ける窓口も変わります。国民健康保険の特定健診との違いと、福祉事務所の健康管理支援を確認します。
3.1 生活保護を受けている人は国民健康保険や後期高齢者医療から外れる
特定健康診査(特定健診)は、40歳から74歳までの医療保険の加入者を対象に、国民健康保険などの保険者が行う健診です。国民健康保険法と高齢者の医療の確保に関する法律では、生活保護を受けている世帯の人(保護を停止されている世帯を除く)は、国民健康保険と後期高齢者医療の被保険者にならないとしています。
そのため、生活保護を受けている間は、国民健康保険の特定健診の対象から外れます。
3.2 40歳以上の生活保護受給者は、健康増進法にもとづく市区町村の健康診査の対象
厚生労働省の「被保護者健康管理支援事業の手引き(第2版)」では、被保護者などに対する健診・保健指導は、健康増進法第19条の2にもとづく健康増進事業(市町村の努力義務)として行われているとしています。
大阪市の例では、年度末時点で40歳以上となり、申し込みと受診のときに生活保護を受けている人が対象で、費用は無料です。健診項目は問診・身体計測・血圧測定・尿検査・血液検査などで、申し込むと受診券が届きます。
大阪市では、社会保険に加入している人、入院中や介護保険施設などに入所中の人は対象外です。対象や申し込み方法は市区町村ごとに決められています。
なお、会社の健康保険に加入したまま生活保護を受けている人は加入者のままなので、加入している健康保険の特定健診の対象です。
3.3 福祉事務所の「被保護者健康管理支援事業」は2021年1月から必須に
被保護者健康管理支援事業は、福祉事務所が生活保護を受けている人に情報提供・保健指導・医療機関への受診勧奨などを行う事業です。2018年の生活保護法改正で必須事業となり、2021年1月から全国の福祉事務所が行っています。
2026年3月の手引き第2版では、事業方針の期間を6年に統一するなどの見直しが示されました。第2版にもとづく取組は、令和12年度から本格実施とされています。
3.4 生活保護を受けている人は、2型糖尿病の外来受療率が国民健康保険などより高い
手引き第2版は、生活保護を受けている人は65歳以上が5割を超え、75歳以上が3割を超えていると説明しています。そのうえで、市町村国保や後期高齢者医療の被保険者と比べて、糖尿病などの生活習慣病の外来受療率が高く、比較的若い世代でも高いとしています。
40歳台前半の2型糖尿病の外来受療率は、生活保護が9.8%、市町村国保と後期高齢者医療が3.6%でした2/2
出所:厚生労働省「被保護者健康管理支援事業の手引き(第2版:令和8年3月)」を参考にLIMO編集部作成
2型糖尿病の外来受療率(NDBデータ・令和3年6月審査分)は次のとおりです。
【生活保護】
- 全体:21.7%
- 40歳台前半:9.8%
- 50歳台前半:17.8%
【市町村国保+後期高齢者医療】
- 全体:17.9%
- 40歳台前半:3.6%
- 50歳台前半:7.5%
国民健康保険や後期高齢者医療から外れた40歳以上の人は、特定健診ではなく、市区町村が行う健康診査の対象になります。2型糖尿病の外来受療率は40歳台前半で9.8%と、市町村国保と後期高齢者医療の3.6%を上回っていました。
住んでいる市区町村の健康診査の受け方は、担当のケースワーカーか、市区町村の健康づくりの担当窓口で確かめられます。
ここからは、筆者が元公務員として国民健康保険と後期高齢者医療を担当していた立場から、保護が始まる前後で健診の窓口がどう変わるかを見ていきます。
国民健康保険の資格を外れると、それまでの健診の案内も届かなくなります。生活保護が始まったら、健診をどこで受けるのかをケースワーカーに聞いておくと安心です。
