韓国のLGディスプレーが発表した2019年7~9月期の業績は、売上高が前年同期比5%減の5兆8220億ウォン(約5415億円)、営業損益が4360億ウォンの赤字(前年同期は1400億ウォンの黒字)となり、3四半期連続で営業赤字に終わった。

工場の稼働率低下

 7~9月期のディスプレー生産可能面積は前四半期比2%減の1300万㎡だったが、ディスプレー出荷面積も同4%減の950万㎡となり、工場稼働率は73%に落ちた。㎡あたりのディスプレー平均売価が前四半期の456ドルから513ドルへ上昇したが、在庫は前四半期末から6%増えた。在庫の増加は、モバイル(主にスマートフォン)用有機ELの大量生産準備によるものだという。

 製品用途別の売上高構成比は、テレビが32%(前四半期は41%)、モニターが18%(同18%)、ノート&タブレットが21%(同22%)、モバイルその他が28%(同19%)だった。設備投資額は1.46兆ウォン(前四半期は2.09兆ウォン)と減少した。

韓国のテレビ用液晶を削減へ

 液晶パネルの供給過剰と価格下落に対応し、長期的に競争力を確保するため、テレビ用液晶パネルの生産能力を縮小する。韓国にあるマザーガラスのサイズが7.5G世代(7.5G=1950×2250mm)の「P7」工場と8.5G(2200×2500mm)の「P8」工場をこれから再編する予定で、詳細は明らかにしなかったが、稼働調整にとどまらず、シャットダウンも視野に入れているとみられる。

 一方、中国広州の8.5Gテレビ用有機ELパネル工場では、19年内に月産6万枚体制を整えるが、20年末ごろ稼働を予定していた残り3万枚の追加能力(合計9万枚化)については稼働時期を前倒しする考えを示した。

構造改革で設備投資を減額

 こうした一連の構造改革に伴い、19年の設備投資額を当初計画の8兆ウォンから5000億ウォン削減し、7.5兆ウォンに減額する。また、テレビ用有機ELパネルは現在15のテレビメーカーにパネルを供給しているが、広州8.5G工場の立ち上げが遅れ未稼働であるため、年間出荷台数を当初見込みの360万台から350万台以下へ下方修正した。20年は600万台の販売を目指す。

 19年10~12月期については、テレビ用液晶パネルの出荷が引き続き減少するが、戦略顧客向けのモバイル用有機ELの販売増によって、収益は増加する見込み。この戦略顧客とはアップルだとみられ、「ボリューム要件において、これまで満たせなかった問題を解決できた」と説明した。ただし、液晶の収益性のさらなる悪化と構造改革の一時費用が10~12月期の収益に影響を及ぼす可能性もあるという。

サムスン参入を歓迎

 一方、ライバルのサムスンディスプレーが先ごろ、新型のテレビ用有機パネル「QD-OLED」へ約13兆ウォンを投資すると発表したことについては「他のプレーヤーが有機ELテレビに参入することを歓迎する。当社は数年前からテレビ用有機ELを手がけ、その価値を十分に築き上げてきたが、他社の参入によって、有機ELのエコシステム自体が拡大することに加え、有機ELがプレミアムディスプレーであり、その主流だという世論形成にもつながる」と述べた。

 また、「当社も独自の差別化された価値を提供するため努力を続け、他社が参入しても独自性と差別化技術を維持していく」と自信を見せた。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏