海外旅行を控えて、「マイナンバーカードは持っていくべきか、それとも置いていくべきか」と迷っている方に向けた記事です。「マイナンバーカードが海外で使えるようになった」というニュースを見て、旅行にも関係があるのかと思った方もいるかもしれません。

マイナンバーカード総合サイトの公式情報をもとに、海外での取り扱いの実際と、短期旅行の場合に知っておきたい注意点を確認していきます。

1. 「海外で使える」は、短期旅行とは別の制度

令和6年5月27日から、マイナンバーカードは国外に転出した後も継続して利用できるようになりました。ただし、これは住民票を海外に移す「国外転出者」を対象とした制度であり、数日から数週間の海外旅行とは前提がまったく異なります。

1.1 「国外転出者向けマイナンバーカード」への切替が必要な制度

この制度を利用するには、国外転出を予定している方が、転出予定日の前日までに「個人番号カード国外継続利用申請書」を提出し、市区町村で券面に国外転出日を追記してもらうなどの切替手続きを行う必要があります。手続きをしないまま国外に転出すると、マイナンバーカードは転出予定日に失効します。

つまり「海外で使える」というニュースは、住民票の異動を伴う長期の海外移住・赴任を想定した制度についての話であり、住民票を日本に残したまま行う短期の海外旅行者は、この制度の対象にはなりません。

2. 【編集者の視点】

ニュースの見出しだけを見ると、「マイナンバーカードが海外対応した」という印象を受けやすいのですが、実際に読み解くと「住民票を海外に移す人向けの制度が整った」という内容です。この違いを見落とすと、「じゃあ旅行にも使えるのか」という誤解が生まれやすくなります。

短期旅行者にとって、この制度変更による直接的な変化はありません。マイナンバーカードの海外での位置づけそのものは、これまでと同じだと理解しておくとよいでしょう。ニュースの見出しだけで判断せず、自分に関係のある制度かどうかを一度確認する習慣が役立ちます。

齊藤 慧
「海外で使える」というニュースの主語は、住民票を移す人です。数日の旅行に出かけるだけなら、この制度は特に気にする必要はありません。旅行の準備では、パスポートや現地の通信手段の確保など、別の点に意識を向けておくとよいでしょう。

3. 通常のマイナンバーカードと国外転出者向けカードの違い

短期旅行者が持っているのは、住民票を日本に置いたままの「通常のマイナンバーカード」です。これと「国外転出者向けマイナンバーカード」は、券面の記載や手続きの面で異なります。

3.1 【通常のマイナンバーカードと国外転出者向けマイナンバーカードの違い】

前提条件:マイナンバーカード総合サイトの公式情報による整理1/2

前提条件:マイナンバーカード総合サイトの公式情報による整理

出所:マイナンバーカード総合サイト「マイナンバーカードを国外で利用する」を基にLIMO編集部作成

通常のマイナンバーカードの場合

  • 対象・特徴:住民票を日本に置いたまま利用。短期の海外旅行者はこちら

国外転出者向けマイナンバーカードの場合

  • 対象・特徴:住民票を海外に移した後も継続利用するための切替済みカード(転出前の切替手続きのほか、2015年10月5日以降に国外転出した日本国籍の人が、カードを持っていない場合に海外から新規申請することもできる)

4. 旅行の日数によって考え方は変わる

マイナンバーカードを持っていくかどうかの判断は、旅行の日数や目的によっても変わってきます。

4.1 数日間の観光旅行の場合

数日程度の観光旅行であれば、滞在中にe-Taxのようなオンライン手続きが必要になる場面は限られます。紛失のリスクを考えると、あえて持っていかず、自宅の安全な場所に保管しておくという判断も十分に合理的です。

4.2 長期の出張や留学の場合

一方、数週間から数か月にわたる出張や留学の場合は、その間に確定申告の時期が来たり、日本国内の行政手続きが必要になったりする可能性が高まります。この場合は、マイナンバーカードを携行し、必要な暗証番号を正しく覚えているか出発前に確認しておくことをおすすめします。

長期滞在になるほど、日本国内での住所変更や各種契約の更新など、マイナンバーカードの提示や電子証明書が必要になる場面が増えていきます。出発前に、滞在期間中に発生しそうな手続きをあらかじめ洗い出しておくと、現地で慌てずに済みます。

ただし、これらはあくまで一般的な考え方です。旅行や滞在の目的・予定によって最適な判断は異なるため、迷った場合は、実際にどのような手続きが必要になりそうかを具体的に洗い出したうえで検討するとよいでしょう。

5. マイナンバーカードは、海外では公的な本人確認書類にならない

マイナンバーカードは、日本国内において本人確認書類として利用できる公的なICカードです。しかし、海外の空港や施設でこのカードを提示しても、現地の公的な本人確認書類としては通用しません。

5.1 海外での身分証明はパスポートが基本

海外渡航時の本人確認・身分証明は、パスポート(旅券)が基本になります。マイナンバーカードを海外に持っていくとしても、それはパスポートの代わりになるものではなく、あくまで帰国後に日本国内で使うための補助的な携行品という位置づけになります。

6. 旅行中でも、電子証明書を使う場面は想定できる

「海外にいる間は、マイナンバーカードは一切使わない」というわけでもありません。カードに搭載された電子証明書は、インターネット環境があれば、海外からでもオンライン手続きに使える場面があります。

6.1 e-Taxなどのオンライン手続きでの利用

マイナンバーカードの署名用電子証明書は、e-Taxでの確定申告など、電子文書に署名する手続きで使用します。旅行中に確定申告の時期と重なった場合など、オンラインで手続きを済ませたい場面では、マイナンバーカードとカードリーダー対応のスマートフォンやパソコンがあれば、海外からでも操作自体は可能と考えられます。

ただし、通信環境や利用するサービスによって条件が異なるため、確実に手続きを終えたい場合は、渡航前に済ませておくか、必要な準備を確認しておくことをおすすめします。

スマートフォンでマイナンバーカードを読み取って手続きする操作に慣れておくと、旅行中でも落ち着いて対応できます(スマホをマイナ保険証として利用する手順で解説している読み取り操作は、e-Taxなど他の電子証明書を使う手続きでも共通する部分があります)。

7. 【編集者の視点】

「海外では使えない」と「海外に持っていく意味がない」は、実はイコールではありません。対面での本人確認書類としては機能しない一方で、オンラインでの電子証明書の利用という形では、旅行中でも役割を持つ場面があります。

持っていくかどうかを判断する際は、「対面で使う予定があるか」ではなく、「旅行中にオンラインでの手続きが必要になる可能性があるか」という軸で考えると、判断しやすくなります。前述した旅行日数の目安とあわせて、出発前に一度整理しておくと安心です。

8. 紛失した場合、国内と同じ電話番号では繋がらないことがある

旅行中にマイナンバーカードを紛失・盗難された場合、悪用を防ぐために一時利用停止の手続きをする必要があります。ここで見落とされやすいのが、電話番号の選び方です。

8.1 フリーダイヤルは海外から発信できない場合がある

マイナンバーカード総合サイトが案内する一時利用停止の連絡先には、フリーダイヤル(0120-95-0178)のほか、通話料がかかる個人番号カードコールセンター(0570-783-578)、そして一部のIP電話等でも繋がらない場合に使う050から始まる番号(050-3818-1250)が用意されています。フリーダイヤルでは、音声ガイダンスで「2番」を選ぶと、カードの一時利用停止につながります。

フリーダイヤルは、日本国内からの発信を前提とした番号のため、海外からは繋がらない可能性があります。海外で紛失に気づいた場合は、国際電話として発信できる050番号を使うか、滞在先のホテルや現地の通信事業者に、日本の番号への国際電話のかけ方を確認する必要があります。

一時利用停止の受付は24時間365日対応です。カードや電子証明書を搭載したスマートフォンを紛失した場合は、旅行を続けながらでも、気づいた時点ですぐに連絡することが被害を防ぐ第一歩になります。

マイナンバーカードは仮に他人の手に渡っても、暗証番号を知らなければ悪用が難しい設計になっています(マイナンバーカードは本当に安全?悪用が困難な理由で詳しく解説しています)が、それでも一時停止の連絡は早いに越したことはありません。

8.2 【マイナンバーカードの紛失・一時停止の連絡先】

前提条件:マイナンバーカード総合サイト「お電話でのお問い合わせ」による整理(24時間365日受付)2/2

前提条件:マイナンバーカード総合サイト「お電話でのお問い合わせ」による整理(24時間365日受付)

出所:マイナンバーカード総合サイト「お電話でのお問い合わせ」を基にLIMO編集部作成

マイナンバー総合フリーダイヤルの場合

  • 電話番号:0120-95-0178
  • 備考:国内専用の可能性が高い。音声ガイダンスで「2番」を選ぶ

個人番号カードコールセンターの場合

  • 電話番号:0570-783-578
  • 備考:通話料がかかるナビダイヤル

IP電話等用の場合

  • 電話番号:050-3818-1250
  • 備考:上記が繋がらない場合の代替(有料)

9. 海外転出者向けカードとの混同にも注意

ここまで見てきたように、「国外転出者向けマイナンバーカード」と「通常のマイナンバーカード」は別物です。もし将来的に海外赴任や海外移住を検討している場合は、今回の短期旅行の話とは切り離して、あらためて手続きを確認する必要があります。

9.1 短期旅行から長期滞在に予定が変わった場合

当初は短期旅行の予定だったものが、現地での就業や長期滞在に変わることもあるかもしれません。その場合、住民票を海外に移すのであれば、国外転出届出時に国外転出者向けマイナンバーカードへの切替手続きが必要になります。手続きをしないまま住民票を海外に移すと、その時点でカードが失効する可能性がある点に注意してください。

齊藤 慧
「短期旅行のつもりが長期滞在に」というケースは珍しくありません。住民票を移すタイミングになったら、切替手続きが必要かどうかを一度確認してみてください。予定日ギリギリでは手続きが間に合わないこともあるので、早めの確認をおすすめします。

10. 旅行前に確認しておきたいチェックポイント

ここまでの内容を踏まえ、海外旅行前にマイナンバーカードについて確認しておきたい点を整理します。

10.1 持っていく場合の準備

マイナンバーカードを持っていくと決めた場合は、暗証番号(署名用電子証明書用・利用者証明用電子証明書用)を正しく覚えているかを事前に確認しておきましょう。暗証番号を一定回数間違えるとロックがかかる仕組みになっているため、うろ覚えのまま何度も試すのは避けたいところです。

また、この記事で紹介した紛失時の連絡先(特に海外から発信できる050番号)を、スマートフォンのメモやクラウド上のメモアプリなど、カードとは別の場所に控えておくと、いざというときにすぐ対応できます。

10.2 持っていかない場合の準備

持っていかないと決めた場合は、自宅の分かりやすい、かつ安全な場所に保管しておきましょう。同居する家族がいる場合は、保管場所を共有しておくと、旅行中に急な手続きが必要になった際に、家族に代理で確認してもらいやすくなります。

齊藤 慧
持っていく・持っていかないのどちらを選んでも、正解不正解はありません。大切なのは、旅行の目的や日数に合わせて、自分なりの理由を持って判断することです。なんとなく持っていく、ではなく、必要かどうかを一度考えてみましょう。

11. パスポートと混同しないよう注意

最後に、基本的な点として、マイナンバーカードとパスポート(旅券)は別の書類であることを確認しておきます。海外渡航には必ずパスポートが必要であり、マイナンバーカードを持っているからパスポートが不要になるということはありません。

渡航の準備をする際は、パスポートの有効期限、査証(ビザ)の要否といった、渡航そのものに必須の確認事項を優先し、マイナンバーカードの携行はあくまで付随的な検討事項として位置づけておくとよいでしょう。

特にパスポートの有効期限については、渡航先によって「入国時点で残存期間が一定以上必要」という条件が設けられている場合があります。マイナンバーカードのことばかりに気を取られて、肝心のパスポートの確認がおろそかにならないよう注意してください。

12. まとめ

  • 「マイナンバーカードが海外で使えるようになった」という制度は、住民票を海外に移す国外転出者向けのものであり、短期の海外旅行とは関係ありません。
  • マイナンバーカードは、海外では公的な本人確認書類として使えません。海外での身分証明はパスポートが基本です。
  • 一方で、電子証明書を使ったe-Taxなどのオンライン手続きは、通信環境があれば旅行中でも操作できる場合があります。
  • 紛失・盗難時の一時利用停止は24時間365日対応ですが、フリーダイヤルは海外から繋がらない可能性があるため、050番号など海外から発信できる連絡先を控えておくと安心です。

マイナンバーカードを持っていくかどうかは、「旅行中にオンラインでの手続きが必要になりそうか」を基準に判断するとよいでしょう。持っていく場合は、紛失時の連絡先を事前に控えておくことをおすすめします。

詳しい手続きや最新の案内は、マイナンバーカード総合サイトで確認してください。

旅行の計画を立てる段階で、パスポートやビザの手配とあわせて、マイナンバーカードをどうするかも一緒にチェックリストに加えておくと、直前になって慌てずに済みます。

13. よくある質問

13.1 Q. マイナンバーカードは海外旅行で身分証明書として使えますか?

A. いいえ。マイナンバーカードは日本国内で利用できる公的な本人確認書類であり、海外では公的な身分証明書としては通用しません。海外での身分証明はパスポートが基本です。

13.2 Q. 「マイナンバーカードが海外で使えるようになった」というニュースは、旅行者にも関係ありますか?

A. この制度は、住民票を海外に移す国外転出者向けのものです。住民票を日本に置いたまま行う短期の海外旅行者は対象ではありません。

13.3 Q. 海外旅行中にマイナンバーカードを使う場面はありますか?

A. 対面での本人確認としては使えませんが、通信環境があれば、e-Taxなどオンラインでの電子証明書を使った手続きに利用できる場合があります。

13.4 Q. 海外でマイナンバーカードを紛失した場合、どこに連絡すればよいですか?

A. マイナンバーカード総合サイトが案内する一時利用停止の連絡先に連絡します。フリーダイヤルは海外から繋がらない可能性があるため、050から始まるIP電話用の番号を使うことをおすすめします。一時利用停止の受付自体は24時間365日対応です。

13.5 Q. マイナンバーカードを海外旅行に持っていくべきか迷ったら、どう判断すればよいですか?

A. 「旅行中にオンラインでの手続きが必要になりそうか」を基準に考えるとよいでしょう。数日程度の観光であれば持っていかない選択も、数週間以上の出張・留学であれば携行を検討する選択も、どちらも合理的です。

参考資料

齊藤 慧