家族が亡くなったとき、「マイナンバーカードは返納しなければいけないのでは」と考える方に向けた記事です。ただでさえやることの多い死亡後の手続きに、さらに一つ加わるのではと不安に思う方もいるかもしれません。

複数の自治体の公式情報をもとに、亡くなった方のマイナンバーカードが実際にはどう扱われるのか、返納の要否と、手元に残しておくべき理由まで確認していきます。

1. マイナンバーカードは、死亡届の提出で自動的に失効する

松山市の公式ページによると、亡くなった方のマイナンバーカードは、死亡届が提出され住民票が消除されると自動的に廃止となり、使用できなくなります。この廃止のための特別な手続きは不要です。

1.1 廃止の手続きをする必要はない

「死亡した人のマイナンバーカードの廃止手続は必要ですか」という質問に対し、松山市は「手続は不要です」と明確に回答しています。死亡届の提出という、死亡後にほぼ必ず行う手続きの中で、カードの失効も自動的に処理される仕組みになっています。この点は、他の多くの自治体でも共通する取り扱いと考えられます。

2. 返納は法令上の義務ではない

「失効するなら、カード自体も返納しなければならないのでは」と思われがちですが、これも誤解です。松山市は「法令上、返納する必要はありません」と明記しています。

2.1 【亡くなった方のマイナンバーカードの取り扱い】

前提条件:松山市公式ページ「亡くなった方のマイナンバーカードの取扱い」による回答1/2

前提条件:松山市公式ページ「亡くなった方のマイナンバーカードの取扱い」による回答

出所:松山市「亡くなった方のマイナンバーカードの取扱い」を基にLIMO編集部作成

カードの廃止手続きの場合

  • 取り扱い:不要(死亡届提出・住民票消除で自動的に廃止)

カードの返納の場合

  • 取り扱い:法令上の義務なし

3. 【編集者の視点】

死亡後の手続きは、役所への届出、年金や保険の手続き、金融機関への連絡など、短期間にやることが集中しがちです。そこに「マイナンバーカードの返納」という項目まで加わると考えると、気が重くなる方も多いはずです。

しかし実際には、カードの失効は死亡届の提出という、避けて通れない手続きの中で自動的に処理されます。返納という追加の手続きは法令上求められていないため、この点だけは「やらなくてよいこと」としてリストから外してしまって構いません。

やるべきことが多い時期だからこそ、「本当にやらなければならないこと」と「実は不要なこと」を切り分けることが、手続き全体の負担を減らす一歩になります。

齊藤 慧
「返納しなくては」という思い込みだけで、慌てて手続きに走る必要はありません。やらなくてよいことを一つ減らせるだけでも、気持ちが少し楽になるはずです。まずは落ち着いて、他の手続きから進めていきましょう。

4. しばらくは手元に残しておくことが勧められている

返納する義務がないどころか、複数の自治体は、亡くなった方のマイナンバーカードをしばらくの間、手元に保管しておくことをすすめています。

4.1 相続や保険金請求の手続きで必要になることがある

松山市は「相続等の手続で亡くなられた方のマイナンバーが必要になることがあるため、しばらくの間は保管することをお勧めします」と案内しています。多賀城市も同様に、「死亡保険金の請求など、死亡後の色々なお手続きで使用する可能性があるため、それらの手続きが完了した後で返納すること」をすすめています。

つまり、マイナンバーカードは死亡によって「使えなくなる」と同時に、相続手続きや保険金請求といった、死亡後に必要になる別の手続きの中で、マイナンバーを確認する書類として再び必要になる場面があるということです。

齊藤 慧
「失効した=もう用済み」ではなく、「失効しても、番号を確認する書類としてはまだ役に立つ」という感覚で捉えておくと、いざというときに慌てずに済みます。手続きが一段落するまでの、いわば控えとして扱うイメージを持っておくとよいでしょう。

5. 【編集者の視点】

「もう使えないカードだから、早めに処分してしまおう」と考えるのも無理はありませんが、この判断は少し急ぎすぎかもしれません。マイナンバーカードには個人番号が記載されており、相続税の申告や生命保険金の請求など、マイナンバーの提示を求められる手続きが、死亡後にいくつも控えています。

手続きのたびに「マイナンバーを確認できる書類がない」と慌てるより、一連の相続・保険関連の手続きがひと通り終わるまでは、カードを手元に残しておくほうが、結果として手間を減らせる可能性があります。

6. マイナンバーの確認を求められる主な手続き

「相続等の手続で必要になることがある」とされる具体的な場面には、どのようなものがあるのでしょうか。一般的に、マイナンバーの記載・提示が求められる手続きには、次のようなものがあります。

6.1 【マイナンバーの確認が必要になりやすい手続きの例】

前提条件:一般的に個人番号の記載・提示が求められる代表的な手続きの整理2/2

前提条件:一般的に個人番号の記載・提示が求められる代表的な手続きの整理

出所:松山市「亡くなった方のマイナンバーカードの取扱い」等を基にLIMO編集部が一般的な手続き例を整理

相続税の申告の場合

  • マイナンバーとの関わり:申告書には財産を取得した相続人の個人番号を記載します。被相続人(故人)の個人番号の記載は、平成28年10月以降に提出する申告書から不要になっています

生命保険金の請求の場合

  • マイナンバーとの関わり:受け取る保険金などが一定額を超える場合、保険会社が税務署に出す支払調書に受取人の個人番号を記載するため、提示を求められることがあります

年金関連の手続きの場合

  • マイナンバーとの関わり:遺族年金の請求など、年金事務所での手続きに関わる場合があります

手続きごとに必要な書類は異なるため、実際に何が必要かは、提出先の窓口や機関に確認することをおすすめします。あくまで「こうした場面でマイナンバーの確認を求められることがある」という一般的な傾向として押さえておくとよいでしょう。

齊藤 慧
どの手続きで何が必要になるかは、ケースによってさまざまです。迷ったときは、提出先の窓口に「マイナンバーの確認書類は必要ですか」と一言確認するだけで、二度手間を防げます。事前の一本の電話が、当日の慌てを減らしてくれます。

7. マイナポータルへのログインはどうなるのか

亡くなった方がマイナポータルを利用していた場合、そのアカウントは遺族が引き継いでログインできるものではありません。マイナポータルは、マイナンバーカードとその暗証番号によって本人が利用する仕組みであり、本人以外がログインして情報を確認することは想定されていません。

7.1 準確定申告などで電子証明書が必要になる場合もある

亡くなった方に一定の所得があった場合、相続人が代わって行う「準確定申告」という手続きが必要になることがあります。この手続きをe-Taxでオンライン申告する場合、故人の署名用電子証明書が必要になる場面も考えられますが、カードが死亡によって失効していると、この電子証明書も使えなくなっている点に注意が必要です。オンラインでの手続きが難しい場合は、書面での申告方法を税務署に確認することになります。

8. 通知カードしか持っていない場合はどうなるか

マイナンバーカードをまだ取得しておらず、紙製の「通知カード」だけを持っていた方が亡くなった場合についても、基本的な考え方は同じです。多賀城市の案内の見出しにも「マイナンバーカード(通知カード)」とあるように、通知カードについても返納の義務は課されていません。

通知カードは、令和2年5月25日に新規発行が終了した書類ですが、それ以前に交付されたものは、氏名や住所などの記載事項に変更がなければ、マイナンバーを確認する書類として現在も使える場合があります。処分に迷う場合は、マイナンバーカードと同様に、相続関連の手続きが落ち着くまで保管しておくとよいでしょう。

なお、通知カードには顔写真や電子証明書が搭載されておらず、本人確認書類としての機能はマイナンバーカードより限定的です。相続手続きで求められるのが「マイナンバーの確認」なのか「本人確認」なのかによって、使える書類が変わる点にも注意しておきましょう。

9. 健康保険の資格喪失手続きも別途必要

マイナンバーカードの扱いとあわせて見落とされやすいのが、亡くなった方が加入していた健康保険の資格喪失手続きです。マイナ保険証として利用していた場合も、死亡によって保険の資格そのものが失われるため、別途の手続きが必要になります。

国民健康保険に加入していた方が亡くなった場合、資格喪失の届出には期限が設けられています(国民健康保険への切り替えは14日以内。手続きが遅れるとどうなるかで解説した加入時の期限と同様、資格の異動にはそれぞれ期限がある点に注意が必要です)。マイナンバーカードの返納が不要だからといって、健康保険まわりの手続きも同様に不要というわけではありません。

10. 不要になった後は、どう処分すればよいか

相続や各種手続きが落ち着き、カードが本当に不要になった段階での処分方法についても、自治体の案内があります。

10.1 ICチップにはさみを入れて破棄する方法

松山市の案内では、「不要になったらICチップ部分にはさみを入れて破棄しても構いません」とされています。個人番号や氏名などの情報が記録されたICチップを物理的に破損させることで、情報の読み取りができない状態にしてから処分する方法です。

多賀城市の案内にもある通り、紛失等に備えて念のため役所に返納することも可能です。処分方法に迷う場合は、お住まいの市区町村の窓口に確認するとよいでしょう。

マイナンバーカードは、ICチップに記録された情報だけで悪用されるような単純な作りにはなっていません(マイナンバーカードは本当に安全?悪用が困難な理由で詳しく解説しています)。とはいえ、亡くなった方の個人情報が記録されたカードである以上、不要になった段階では、案内された方法で確実に処分しておくと安心です。

11. マイナ保険証・公金受取口座の登録はどうなるか

マイナンバーカードには、健康保険証としての利用登録や、給付金等を受け取るための公金受取口座の登録といった機能も紐づいています。これらの登録情報も、死亡によって自動的に整理されるのか、疑問に思う方もいるでしょう。

11.1 健康保険の資格喪失にあわせて利用できなくなる

マイナ保険証としての利用登録は、健康保険の資格そのものと連動しています。前述の通り、健康保険の資格喪失手続きが別途必要になるため、この手続きを通じて、マイナ保険証としての利用も実質的に終了する形になります。公金受取口座についても、口座自体は遺族が相続手続きの中で確認・解約していくことになるため、カードの返納とは別の手続きとして進める必要があります。

いずれも、マイナンバーカード本体の返納とは切り離して考えるべき手続きです。「カードを返せばすべてが片付く」というものではなく、それぞれの制度ごとに、個別の届出や解約の手続きが必要になる点を押さえておきましょう。

12. 手続きの順番に迷ったら、まず死亡届から

ここまで見てきたように、マイナンバーカードに関する手続きの多くは、死亡届の提出を起点として自動的に進みます。逆に言えば、死亡届の提出さえ済ませておけば、カードの失効について個別に何かをする必要はありません。

その後、相続や保険金請求などの手続きを進める中で、マイナンバーの確認が必要になった場合にカードを使い、すべての手続きが落ち着いた段階で、返納するか、ICチップを破損させて処分するかを選ぶ、という順番で進めるのが、無理のない流れと言えます。

亡くなった方の手続きは、マイナンバーカードだけでなく、年金・保険・不動産・金融資産など多岐にわたります。一つひとつを同時に進めようとせず、まず死亡届のような起点となる手続きを済ませ、そこから派生する手続きを順番に片付けていくという考え方は、カード以外の手続き全般にも応用できます。

13. まとめ

  • 亡くなった方のマイナンバーカードは、死亡届の提出・住民票の消除によって自動的に失効し、廃止のための特別な手続きは不要です。
  • カードの返納は法令上の義務ではありません。
  • 相続手続きや死亡保険金の請求など、死亡後の各種手続きでマイナンバーの確認が必要になることがあるため、それらの手続きが完了するまでは手元に保管しておくことがすすめられています。
  • 不要になった段階では、ICチップにはさみを入れて破棄するか、市区町村の窓口に返納する方法があります。

「返納しなければ」という思い込みで慌てる必要はありません。むしろ、これから続く相続関連の手続きのために、しばらくは手元に残しておくことをおすすめします。

処分のタイミングや方法に迷った場合は、お住まいの市区町村の窓口に相談してみてください。

この記事で紹介した内容は、自治体が公表している一般的な取り扱いです。個別の状況によって案内が異なる場合もあるため、実際の手続きにあたっては、お住まいの市区町村の窓口に確認することをおすすめします。

14. よくある質問

14.1 Q. 家族が亡くなったら、すぐにマイナンバーカードを返納しなければいけませんか?

A. いいえ。法令上、返納する義務はありません。カード自体は、死亡届の提出・住民票の消除によって自動的に失効します。

14.2 Q. 失効したカードを廃止するための特別な手続きは必要ですか?

A. 不要です。死亡届が提出され住民票が消除されると、自動的に廃止の扱いになります。市区町村役場や区役所の窓口で、別途カードの廃止だけを目的とした申請を行う必要はありません。

14.3 Q. すぐに処分してしまってよいですか?

A. 相続手続きや死亡保険金の請求など、死亡後の各種手続きでマイナンバーの確認が必要になることがあるため、それらが完了するまでは手元に保管しておくことがすすめられています。急いで処分する必要はありません。

14.4 Q. 不要になったら、どう処分すればよいですか?

A. 自治体の案内では、ICチップ部分にはさみを入れて破棄する方法や、市区町村の窓口に返納する方法が紹介されています。詳しくはお住まいの自治体の窓口に確認してください。

14.5 Q. マイナポータルに保存されていた情報は、遺族が確認できますか?

A. マイナポータルは本人がマイナンバーカードと暗証番号でログインする仕組みのため、遺族が故人に代わってログインし、情報を確認することは想定されていません。必要な情報がある場合は、それぞれの手続き先の窓口に個別に確認することになります。年金・保険・税務など、情報の種類によって問い合わせ先が異なる点にも注意が必要です。

14.6 Q. 通知カードしか持っていなかった場合も、返納の義務はありませんか?

A. マイナンバーカードと同様、通知カードについても返納の義務は課されていません。記載事項に変更がなければマイナンバーを確認する書類として使える場合があるため、相続関連の手続きが落ち着くまで保管しておくとよいでしょう。ただし、通知カードには電子証明書が搭載されていないため、e-Tax等での利用はできません。

14.7 Q. マイナンバーカードは死亡届と一緒に窓口へ持参して返納する必要がありますか?

A. いいえ。死亡届の提出とカードの返納は別の手続きです。死亡届の提出によってカードは自動的に失効しますが、その場でカード自体を提出する必要はありません。

参考資料

齊藤 慧