4. 金の店頭価格は消費税込み、売るときの代金にも消費税相当額が含まれる

田中貴金属工業が公表している金の店頭小売価格と店頭買取価格は、どちらも消費税込みの価格です。金地金を買うときは消費税を含む価格で支払い、売るときも消費税相当額を含む価格で代金を受け取ります。

4.1 1キログラムを10月6日の店頭買取価格で売ると、代金2287万3000円のうち約208万円が消費税相当額

10月6日14時の店頭買取価格2万2873円で1キログラムの金地金を売ると、代金は2287万3000円です。1キログラムは500グラム以上なので、買取の別途手数料はかかりません。

この代金に含まれる消費税相当額は、税率10%の税込価格から逆算すると、2287万3000円×10÷110=約208万円です。

4.2 消費税相当額を利益にしようとする金の密輸、令和7年の摘発は192件

財務省・税関の「金密輸の取締強化について」(令和6年11月)は、金の密輸について、金を隠して日本に持ち込むことで消費税の納税を逃れ、国内で消費税込みの価格で買取業者に売ることで、消費税額相当分を利益として得ることを目的に行われていると説明しています。

同じ資料によると、平成26年4月に消費税率が8%に引き上げられると金の密輸は急増し、平成29年には1347件、押収量にして約6.3トンが摘発されました。財務省が令和8年2月17日に公表した「令和7年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況」では、令和7年の金地金の摘発件数は192件(前年比61%減)、押収量は約425キログラム(同68%減)でした。

5. 金地金の買取で本人確認書類を求められる理由の一つは、消費税の仕入税額控除の要件

金地金を売るとき、買取業者から本人確認書類の提示を求められます。理由の一つが、消費税の仕組みです。

5.1 令和元年10月から、売り手の本人確認書類を保存しないと仕入税額控除を受けられない

国税庁の「消費税法改正のお知らせ(平成31年4月)」によると、事業者が金または白金の地金を買い取った場合に、売却した人の本人確認書類(運転免許証の写しなど)を保存しないと、その買取にかかる消費税額について仕入税額控除を受けられません。令和元年10月1日以後に行う買取から適用されています。

個人で国内に住所がある人の場合、本人確認書類として次のようなものが挙げられています。

  • マイナンバーカードの写し(表面のみ。個人番号が書かれた裏面の写しは保存できない)
  • 運転免許証または運転経歴証明書の写し
  • 住民票の写し(個人番号が記載されていないもの)、印鑑証明書など

住民票の写しや印鑑証明書は、買取の日の前1年以内に作成されたものが対象です。

5.2 密輸品と知りながら買い取った場合は、平成31年4月から仕入税額控除の対象外

同じお知らせでは、買い取る資産が消費税を納めずに持ち込まれた密輸品だと知っていた場合、その買取にかかる消費税額について仕入税額控除を受けられないとしています。平成31年4月1日以後に行う課税仕入れから適用され、対象は金や白金の地金に限らず、密輸されたすべての資産です。

6. 他社製の金地金は、ブランドと「999.9」の刻印で買取の扱いが変わる

金地金を売るときは、どこで作られた地金かによって、買い取ってもらえるかどうかや買取価格が変わることがあります。

6.1 田中貴金属工業が他社製の金地金を買い取るのは、指定したブランドの地金

田中貴金属工業は、他社製の資産用金地金を、日本市場での流通量や品位の信頼性などを総合的に判断して買い取るとしています。買取対象は、LBMA(ロンドン地金市場協会)認定ブランドや日本金地金流通協会の正会員のうち同社が指定したもので、それ以外のブランドの地金は買い取っていません。

6.2 重量刻印と品位刻印「999.9」がない金地金は、減額した価格での買取

買取対象ブランドの金地金のうち、重量刻印と品位刻印「999.9」があるものは、同社が公表する店頭買取価格(税込)で買い取ります。それ以外は品位刻印が995以上のものに限り、減額した価格での買取です。

7. 金地金の重さは、売るときの分け方まで考えて選ぶ

金地金について「1グラムいくらで買ったか」とともに、手数料まで含めた金額も把握しておきましょう。

7.1 別途手数料は1グラムあたりに直して、買うときと売るときの両方で比べる

10グラムの金地金を1本買うと、購入時8800円・売却時2200円の別途手数料で、1グラムあたり1100円になります。500グラムの金地金なら、どちらも不要です。一方で、500グラムの地金は1本で1000万円を超える金額になり、一部だけを売ることはできません。いくらずつ売る可能性があるかも考えて、重さを選ぶとよいでしょう。

7.2 購入時の明細書は、売ったときの利益を計算する材料になる

金地金を売ったときの利益は、売った金額から買ったときの金額などを差し引いて計算します。購入時の明細書は地金と一緒に保管しておきましょう。売るときには本人確認書類が必要になるので、有効期限や作成日もあわせて確かめておくと安心です。

8. まとめ

田中貴金属工業の10月6日14時の公表では、金の店頭小売価格は1グラム2万3229円、店頭買取価格は2万2873円でした。500グラム未満の金地金には、購入時に1本あたり8800円から1万6500円、売却時に1件あたり2200円から1万6500円の別途手数料がかかります。同じ日に買って売った場合の差は、10グラムで1グラムあたり1456円、500グラムで356円でした。

店頭価格は消費税込みで、売るときの代金にも消費税相当額が含まれます。この仕組みを利用した金の密輸への対策として、金地金の買取業者には売り手の本人確認書類の保存が求められています。

金地金を買う前に、取扱会社の別途手数料の一覧と、他社製の地金の買取条件を確かめておいてはいかがでしょうか。

参考資料

和田 直子