10月24日、母親(80)の遺体を自宅に放置したとして埼玉県川口市に住む無職の男性(52)が死体遺棄容疑で逮捕されました。この親子の年齢を聞いて、昨今社会問題となっている中高年のひきこもりと、親が経済や介護などさまざまな局面で困難な状況に陥る「8050問題」だと認識した人は多いことでしょう。

「8050問題」で取り沙汰されるひきこもりについては、日々一生懸命働いている人たちからすると少し遠い世界の話のようにも聞こえます。一方で、実際に70代~80代の親を持つ40代~50代男性の中には、別のコンプレックスや問題を抱えているケースも。筆者の夫とその父親(義父)の例をご紹介します。

働いた分だけ稼げて家族を養い、家にいないことが当たり前だった義父

筆者の夫の父親(以下、義父)は75歳。区切ると「戦中生まれ世代(焼け跡世代とも)」に入りますが、ほぼ「団塊の世代」と同じ年代です。

義父は高校時代、成績優秀だったものの家庭が裕福ではなかったために大学進学を断念。当時も大卒の方が就職先に困らなかったものの、義父は高卒でもお給料を十分に貰えそうな就職先を調べ上げた上で、高度成長期当時に伸びに伸びていた重化学工業分野の会社に就職しました。

仕事人間だった義父は、結婚して夫を含めた2人の子どもが産まれてからもほとんど家に帰ることがなかったそうです。朝から晩まで働き詰めで、時には会社に寝泊まりをし、取引先ととにかく飲み会、休みの日でも出張やゴルフなどが当たり前で、夫も「大人になるまで親父が家にいた記憶が数えるほどしかない」とよく笑いながら振り返ります。専業主婦だった義母は、2人の子どものワンオペ育児とすべての家事を文句も言わずにこなしていたのだとか。

義父のサラリーマン時代の話を聞いていると、仕事がハードだったと言えども今の時代とはあまりにも違うことに驚かされます。年に4回のボーナス、年に2回あるという数万円の昇給…。バブル絶頂期には、家族4人でアメリカへ2週間の家族旅行へ出かけたと言い、航空券や宿泊費などトータルで100万円以上使ったそう。

そして、18歳から定年まで同じ会社で勤め上げた義父の退職金は、それはそれは相当な額だったようです。

義父にとって、家庭を顧みずに働くことは「男として」当たり前。そして、頑張って働いた分だけ給料が上がっていくことは「仕事をする上で」もちろん当たり前でした。そしてその当たり前を、自分の息子にも当てはめていました。

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