パートやアルバイトで働く人にとって、年末が近づくと気になるのが「年収の壁」です。2026年は、その壁のうち所得税の部分が12月の年末調整から動きます。
令和8年度税制改正の法律は2026年3月31日に成立し、所得税がかかり始める給与収入は178万円に引き上げられました。国税庁は2026年9月に「令和7年分 民間給与実態統計調査」を公表し、年間給与の階級ごとに何人が働いているかを示しています。
この記事では、178万円の内訳と施行の時期を確認したうえで、民間給与実態統計調査から、年間給与200万円以下で働く人の数と、年末調整を受けた人の数を見ていきます。
1. 年収の壁は令和8年分の所得税から178万円に。基礎控除104万円と給与所得控除74万円
所得税の「年収の壁」は、基礎控除と給与所得控除の合計額で決まります。財務省は、令和8年度税制改正によって、全ての納税者の「所得税の負担開始水準」が178万円以上になったと説明しています。
1.1 178万円は基礎控除104万円と給与所得控除74万円の合計
収入が給与だけの人は、給与収入から給与所得控除を引いた額が所得になり、そこから基礎控除などを引いた残りに所得税がかかります。令和8年分は、給与所得控除の最低保障額が74万円、基礎控除が最大104万円になりました。
74万円と104万円を足すと178万円です。給与収入が178万円以下で、ほかに所得がなければ、所得税はかかりません。
所得税がかかり始める給与収入は、令和7年分の160万円から令和8年分は178万円になった1/3
出所:国税庁「No.1199 基礎控除」、国税庁「No.1410 給与所得控除」を参考にLIMO編集部作成
基礎控除の額は、本人の合計所得金額によって変わります。令和8年分の基礎控除は次のとおりです。
- 合計所得金額489万円以下:104万円
- 489万円超655万円以下:67万円
- 655万円超2350万円以下:62万円
- 2350万円超2400万円以下:48万円
- 2400万円超2450万円以下:32万円
- 2450万円超2500万円以下:16万円
- 2500万円超:0円
1.2 178万円への上乗せ分は令和8年・9年の時限措置
178万円のうち一部は、期間を区切った措置です。財務省によると、物価上昇に連動した引き上げで、基礎控除の本則は58万円から62万円に、給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円になりました。
そのうえで、令和7年度改正でできた基礎控除の特例(改正前37万円)を5万円引き上げて42万円とし、対象も給与収入200万円相当までから475万円相当までに広げました。給与所得控除の最低保障額も5万円引き上げられ、74万円になりました。
これで基礎控除は本則62万円と特例42万円を合わせて104万円になり、給与所得控除74万円と合わせて178万円です。あわせて、給与収入475万円相当から665万円相当までの人の特例(改正前10万円)も32万円引き上げられました。
これらの上乗せは、令和7年度改正で時限措置とされた基礎控除の特例を含め、令和8年・9年の時限措置として講じられました。
財務省は、生活保護基準額が178万円に達するまでは課税最低限178万円を維持しつつ、物価連動による本則の引き上げに応じて、同額を特例から振り替えていく方針を示しています。
1.3 改正の施行は2026年12月1日。11月までの源泉徴収は改正前のまま
国税庁のQ&Aによると、基礎控除の引き上げなどは2026年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じず、12月に行う年末調整で1年間の税額を計算し直して精算します。
財務省の広報誌「ファイナンス」は、この扱いを次のように説明しています。
令和8年分所得への適用は、源泉徴収義務者等の事務負担に配慮し、年末調整からとする。
出所:財務省「特集 令和8年度 税制改正(国税)等について」(ファイナンス令和8年4月号)
改正後の源泉徴収税額表を使うのは、令和9年1月1日以後に支払う給与からです。
2. 民間給与実態統計調査、年間給与200万円以下で働く人は952万8000人
年収の壁が178万円になると、壁の近くで働く人はどれくらいいるのでしょうか。国税庁の「令和7年分 民間給与実態統計調査」の給与階級別分布から確認します。数字は、1年を通じて勤務した給与所得者5163万1000人についてのものです。
2.1 年間給与100万円超200万円以下は582万5000人、うち女性は413万1000人
令和7年分で、年間給与が100万円以下の人は370万3000人(構成比7.2%)、100万円超200万円以下の人は582万5000人(同11.3%)でした。合わせて952万8000人で、1年を通じて勤務した給与所得者の18.5%にあたります。
【男性】
- 100万円以下:100万7000人(3.4%)
- 100万円超200万円以下:169万4000人(5.8%)
【女性】
- 100万円以下:269万6000人(12.1%)
- 100万円超200万円以下:413万1000人(18.5%)
【男女計】
- 100万円以下:370万3000人(7.2%)
- 100万円超200万円以下:582万5000人(11.3%)
構成比は、男女それぞれの給与所得者数(男性2933万7000人、女性2229万4000人)に占める割合です。
2.2 女性の給与所得者では、年間給与200万円以下が30.6%
女性で年間給与200万円以下の人は682万7000人で、女性の給与所得者の30.6%でした。男性では270万1000人で、男性の給与所得者の9.2%です。
女性の100万円超200万円以下の人数を過去5年分で並べると、令和3年分483万4000人、令和4年分461万5000人、令和5年分449万2000人、令和6年分407万2000人、令和7年分413万1000人です。令和3年分からは70万3000人少なくなっています。
ここでの年間給与は、給料・手当と賞与を合わせた1年間の額面です。所得税の年収の壁178万円は、この年間給与の100万円超200万円以下の区分の中にあります。
3. 民間給与実態統計調査、令和7年分の年末調整を行った人は4744万人
12月の年末調整は、年収の壁の引き上げが反映される場面です。同じ調査から、年末調整を行った人と、配偶者控除・扶養控除を受けた人の数を確認します。
3.1 年末調整を行った人は4744万人で、前年より23万人増えた
令和7年分で年末調整を行った給与所得者は4744万人で、前年より23万人(0.5%)増えました。1年を通じて勤務した給与所得者の9割を超える人が、年末調整で1年分の所得税を精算しています。
3.2 配偶者控除または扶養控除を受けた人は1122万人で、前年より53万人減った
年末調整を行った人のうち、配偶者控除または扶養控除の適用を受けた人は1122万人でした。前年より53万人(4.5%)減っています。
扶養人員のある人1人当たりの平均扶養人員は1.39人でした。
令和8年分の所得税では給与収入178万円までは所得税がかからなくなり、民間給与実態統計調査では、その近くにあたる年間給与200万円以下の人が952万8000人います。改正の反映は12月の年末調整からで、11月までに引かれた所得税は年末調整で精算されます。
精算の結果は、年末調整を行った月の給与明細と、勤務先から受け取る令和8年分の源泉徴収票で確かめられます。
ここからは、年収別に所得税がどれだけ変わるかの試算と、12月の年末調整で勤務先に出す書類、世帯で見るときに確かめたい健康保険の扶養の基準を見ていきます。
年末調整で戻る所得税は、毎月の手取りとは別のタイミングで入るお金です。12月の給与明細で精算の額を確かめ、家族の分もあわせて世帯の手取りとして見ておくと、来年の働き方を考える材料になります。
