4. 生活保護の扶養照会をしなくてよい扶養義務者の3つの類型

親族のあいだで長く行き来がない方や、相続をめぐって関係が難しくなったご家族もあります。

事務連絡は、こうした事情を含めて、扶養義務の履行が期待できない扶養義務者を3つの類型で例示しています。

4.1 扶養照会をしなくてよい扶養義務者として例示されている3つの類型

  • 扶養義務者自身が、生活保護を受けている人、社会福祉施設の入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦・主夫など)、未成年者、おおむね70歳以上の高齢者などである場合
  • 借金を重ねている、相続をめぐって対立している、縁が切られているなど、生活歴などから特別な事情があり、明らかに扶養ができない場合
  • 夫の暴力から逃れてきた母子や虐待などの経緯がある人など、扶養を求めることで明らかに本人の自立を妨げることになる場合

事務連絡は、この3つはあくまで例示で、直接当てはまらなくても同等と判断できる場合は同じように扱ってよいとしています。

4.2 10年程度音信不通なら、ほかの事情を問わず「交流断絶」と判断してよい

2つ目の類型について、事務連絡は、一定期間(たとえば10年程度)音信不通で交流が断絶している場合は、著しい関係不良とみなしてよいとしています。10年程度音信不通であれば、ほかの事情の有無を問わず交流断絶と判断してよいとされています。

それまでは「20年間音信不通である」ことが該当例として示されていました。音信不通の正確な期間が分からなくても、それに相当する期間音信不通だという申し出があり、その内容を否定する明確な根拠がなければ、該当すると判断して差し支えないとされています。

5. 夫婦や親と中学3年以下の子は、扶養照会を控えても関係先の調査が行われる

事務連絡は、夫婦と、親から中学3年以下の子に対する関係を「生活保持義務関係」と呼び、ほかの親族とは扱いを分けています。

5.1 生活保持義務関係では、扶養照会をしない場合も関係機関への調査が行われる

扶養義務の履行が期待できないと判断された扶養義務者には扶養照会を行いませんが、生活保持義務関係にある人の場合は、関係機関などへの照会である「関係先調査」が行われます。

5.2 暴力や虐待から逃れてきた場合は、夫婦や親子でも扶養照会を控える

扶養を求めることで本人の自立を妨げると認められる場合は、生活保持義務関係であっても扶養照会を控えるとされています。関係先調査を行うときも、調査をしている事実や本人の居住地、福祉事務所名のような手がかりとなる情報が扶養義務者本人に知られないよう、特に慎重に行うことが求められています。

6. 扶養照会を避けたい事情は、生活保護の申請の相談のときに伝える

扶養の可能性の調査は、本人からの聞き取りなどで行われます。親族との関係にどのような事情があるのかは、相談の段階で伝えておくと、福祉事務所が判断する材料になります。

6.1 伝えておきたいのは、関係が途絶えた時期や経緯

最後に連絡を取ったのがいつごろか、借金や相続をめぐる対立があったか、暴力や虐待から逃れてきたのかといった経緯は、類型に当てはまるかどうかの判断にかかわります。手元に記録がなくても、覚えている範囲で時期と経緯を整理しておくと話を進めやすくなります。

6.2 生活保護を受けられるかどうかの回答は、申請から原則14日以内

厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」によると、生活状況や資産の調査を行ったうえで、申請した日から原則14日以内(調査に日時を要する特別な理由がある場合は最長30日)に、生活保護を受けられるかどうかの回答があります。

7. まとめ

2026年6月に生活保護を受けていた世帯は164万2778世帯で、世帯類型では高齢者世帯が55.3%を占めました。扶養義務者による扶養は保護に優先しますが、扶養の可否が保護を受けられるかどうかの判定を左右するものではありません。

扶養照会が行われるのは、援助が期待できると判断された扶養義務者に限られ、10年程度音信不通の場合や、暴力・虐待から逃れてきた場合などは照会しない扱いが示されています。親族との関係に事情があるときは、住んでいる地域を担当する福祉事務所に相談する際に、その経緯もあわせて伝えておくとよいでしょう。

参考資料

和田 直子