生活保護の相談を考えたとき、「申請すると親族に連絡がいくのでは」と気になって、窓口へ行くのをためらう人もいるかもしれません。
厚生労働省が2026年9月2日に公表した「被保護者調査(令和8年6月分概数)」によると、生活保護を受けている人は196万9502人、世帯は164万2778世帯でした。親族に援助できるかを問い合わせる「扶養照会」について、厚生労働省は2021年2月の事務連絡で、照会しなくてよい扶養義務者の判断基準を示しています。
この記事では、生活保護を受けている世帯の内訳と保護費の決まり方を確認したうえで、扶養照会がどのような人に対して行われ、どのような場合に行われないのかを見ていきます。
1. 生活保護を受けている世帯は164万2778世帯、高齢者世帯が55.3%
被保護者調査は、生活保護を受けている人と世帯の数を毎月集計している統計です。最新の令和8年6月分概数で、生活保護を受けている人と世帯の規模を見ます。
1.1 生活保護を受けている人は196万9502人、前年同月から1万8995人減少
2026年6月に生活保護を受けていた人(保護停止中を含む)は196万9502人で、前年同月と比べて1万8995人(1.0%)減りました。世帯数は164万2778世帯で、前年同月から2424世帯(0.1%)の減少です。
同じ月の保護の申請件数は2万970件で、前年同月から73件(0.3%)増えました。保護が始まった世帯は1万8171世帯で、前年同月から149世帯(0.8%)の増加でした。
1.2 生活保護を受けている世帯の55.3%は高齢者世帯、単身の高齢者世帯は全体の51.7%
保護停止中を除いた163万4108世帯を世帯類型別に分けると、高齢者世帯が90万3532世帯で55.3%を占めました。このうち単身の高齢者世帯は84万4730世帯で、生活保護を受けている世帯全体の51.7%にあたります。
生活保護を受けている世帯の世帯類型別の割合(2026年6月・概数、保護停止中を除く)1/2
出所:厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和8年6月分概数)の結果を公表します」を参考にLIMO編集部作成
【世帯類型別の世帯数と割合(総数163万4108世帯)】
- 高齢者世帯(単身):84万4730世帯(51.7%)
- 高齢者世帯(2人以上):5万8802世帯(3.6%)
- 障害者・傷病者世帯:41万6933世帯(25.5%)
- その他の世帯:25万8690世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4953世帯(3.4%)
2. 生活保護の保護費は、最低生活費と収入の差額で決まる
生活保護の保護費は、世帯の収入と、厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費を比べて決まります。収入が最低生活費に届かないときに、その差額が支給される仕組みです。
2.1 生活保護の扶助は生活扶助や住宅扶助など8種類
最低生活費は、日常の生活費にあたる生活扶助、家賃にあたる住宅扶助のほか、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類の扶助で構成されています。医療扶助と介護扶助は、費用が医療機関や介護事業者に直接支払われます。
2.2 生活扶助基準額の例、東京都区部等の高齢者単身世帯(68歳)は月7万7980円
厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」には、令和8年10月1日現在の生活扶助基準額の例が載っています。
【生活扶助基準額の例(令和8年10月1日現在・月額)】
- 3人世帯(33歳・29歳・4歳):東京都区部等16万8020円、地方郡部等15万370円
- 高齢者単身世帯(68歳):東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万9950円
- 高齢者夫婦世帯(68歳・65歳):東京都区部等12万5460円、地方郡部等11万1720円
- 母子世帯(30歳・4歳・2歳):東京都区部等20万50円、地方郡部等17万9300円(児童養育加算等を含む)
同じ世帯構成でも、住んでいる地域によって基準額が違います。家賃にあたる住宅扶助などは、この額とは別に計算されます。
3. 生活保護の扶養照会は、援助が期待できる親族にだけ行われる
生活保護の申請があると、福祉事務所は親族などの扶養義務者が援助できるかどうかを調べます。扶養義務者に直接問い合わせるのが「扶養照会」です。厚生労働省社会・援護局保護課が2021年(令和3年)2月26日に出した事務連絡「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」で、その位置づけを確認します。
3.1 扶養は保護に「優先」するが、保護を受けられるかどうかの判定は左右しない
生活保護法第4条第2項は、扶養義務者の扶養は保護に優先して行われると定めています。事務連絡は、この規定が「保護の要件」とは異なる位置づけだとしたうえで、次のように説明しています。
扶養義務者による扶養の可否等が、保護の要否の判定に影響を及ぼすものではなく、「扶養義務の履行が期待できない」と判断される扶養義務者には、基本的には扶養義務者への直接の照会(以下、「扶養照会」という。)を行わない取扱いとしている。
出所:厚生労働省社会・援護局保護課「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」(令和3年2月26日事務連絡)
親族から実際に仕送りなどを受けた場合は、それが収入として扱われます。援助を受けられる親族がいるかどうかで、生活保護を受けられるかどうかが決まるわけではありません。
3.2 扶養照会の前に、扶養義務者の確認と聞き取りが行われる
事務連絡は、扶養に関する調査を3つの段階で進めるとしています。まず扶養義務者がいるかを確認し、次に本人からの聞き取りなどで扶養の可能性を調べます。扶養照会は、その結果「扶養義務の履行が期待できる」と判断された人に対して行うものとされています。
扶養照会は、扶養義務者の確認と聞き取りを経て、援助が期待できると判断された人に行われる2/2
出所:厚生労働省社会・援護局保護課「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」を参考にLIMO編集部作成
扶養義務者がいるかの確認は、本人の申告を基本として、必要に応じて戸籍謄本などで行われます。扶養の可能性の調査では、仕送りなどの金銭的な援助だけでなく、精神的な支援ができるかどうかも確認されます。
生活保護を受けている世帯の55.3%は高齢者世帯で、保護費は最低生活費と収入の差額として支給されます。親族による扶養は保護に優先しますが、扶養照会が行われるのは、援助が期待できると判断された扶養義務者に限られます。
親族との関係で事情がある場合は、住んでいる地域を担当する福祉事務所に相談するときに、その事情もあわせて伝えておくことができます。
ここからは、扶養照会をしなくてよい扶養義務者の3つの類型と、夫婦や親子のように照会を控える場合でも調査が行われるケースを見ていきます。
親族に知られたくないという気持ちも、頼れる親族がいるならまず相談したいという気持ちも、どちらも間違いではないと思います。照会を避けたい事情があるなら、申請の相談の段階でその事情を具体的に伝えておく、という進め方がひとつです。
