皆さんがパートナーと結婚するにあたって、重要視したこと、もしくはこれから結婚するにあたって重要視したいポイントは何でしょうか。

多くの人は価値観や金銭感覚が同じであることや趣味が合うことと答えるでしょう。しかし、この「趣味が合う」というポイントは実は出会いや仲良くなるきっかけに過ぎず、過信してしまうと結婚生活がうまくいかなくなるパターンが少なくありません。筆者の周囲にあった実際のケースを紹介します。

「趣味が合う=ファッション」で結婚して失敗したパターン

筆者の友人Aは、恋愛に奥手で積極的ではないものの、とてもモテるのでこれまで彼氏が途絶えたことがない女性です。Aと出会ってからの数年間で、紹介された彼氏は5人以上。

Aは洋服や音楽、映画など特定のサブカルチャーが大好きで、これまでの彼氏もそういった“同じ文化圏”の中で出会ってきました。歴代の彼氏は、「こんなに自分なりの世界観を持った女の子は出会ったことがない!」としてAを好きになるパターン。そして趣味を通じたデートを重ねるものの、実際にお泊りしたりケンカをしたりすると一瞬で別れてしまうという流れを繰り返してきました。

数年前にAから結婚相手として紹介された元夫もこれまでの彼氏と全く同じようなタイプ。「どうしてAを好きになったの?」と聞くと、Aの人間性や考え方などには触れず、「趣味がとても合って…。僕は服が大好きなのですが、彼女の着る服がすごく好みなんです」といったことを言うばかりでした。筆者はいささか不安を覚えながらも、もうすぐ入籍するという幸せそうな2人を前に「お幸せに!」とエールを送ることしかできませんでした。

入籍をしてから1年後、Aは離婚します。この2人は趣味が合うのではなく、趣味しか合わなかったのです。金銭感覚や物事の考え方、ケンカをした時の解決方法、子どもはいつ欲しいか、仕事で忙しくてすれ違った時に相手をどうフォローするかといった結婚生活において絶対に必要なあれこれが全く噛み合わなかったそう。

そしてAは今では、「一緒に生活をしていく覚悟がお互いに全くなかった。結婚前はもちろん覚悟してたつもりだったけど、実際は『一生連れて歩きたい』『趣味の場所にデートしたい』というただのファッションの感情だった」と後悔交じりに振り返ります。

単に「最も身近にいるお手軽な相手」だった!?

筆者の大学の先輩Bさんは、大学時代に文学サークルで出会い付き合っていた彼氏と大学卒業後すぐに結婚。Bさんは文芸に関する仕事に就き、元夫は文芸に関する研究を深めるために大学院へ。子どもはいないながらも、お互いに好きな本や映画を楽しみながら質素で楽しい結婚生活を送っていたそうです。

ところが次第にBさんの中で、元夫を「恋人」や「夫」と捉える以上に「友達」という感覚が強くなっていきました。その後、職場で恋愛感情を抱く同僚に出会ったことから、Bさんは離婚を決意。離婚したい意向を元夫に伝えると、あっけなくOK。話を聞くと、元夫もBさんへの結婚相手としての気持ちがどんどん薄れていったのだとか。

Bさんは「大学生の時に好きだと思っていた相手への感情は、身近にいる異性の中で一番趣味が合ってなんとなく話しやすいから『相手としてお手軽』なだけだったんだよね」と振り返ります。それは元夫にとっても全く同じだったそう。

Bさんは離婚した今でも、元夫と食事に行っては最近の好きな本の話やお互いが今好きになっている異性の話で盛り上がるのだとか。そしてお互いが今好きになっている異性は、趣味や好きなことは全く合わないものの、仕事の考え方や将来持ちたい家庭像などが一致しているので、お付き合いして結婚をしたいと考えているのだそう。

もちろん、Bさんと元夫は会っても食事に行く以上の関係はなし。お互いにたまに会って近況を話すくらいの距離感が一番楽しいと気付いたのは、結婚後だったようです。

こっちが勝手に楽しめるから意外とうまくやっていける「趣味のない夫」

これまで筆者の周囲の話をしてきましたが、当の筆者はと言うと、夫と趣味が合いません。というよりも仕事人間の夫は仕事以外に時間を割きたいと思う趣味がないので、筆者の好きな映画や旅行などの趣味に付き合いたい時は付き合うし、別に興味がない時には「1人でどうぞ」という感じ。

きっと恋人同士においての「趣味が合う」ことのメリットは、「楽しみや行動を共にできる」ことでしょう。しかし結婚相手とは、これから嫌でも何十年間も一緒に過ごしていきます。そうなると、2人で過ごす時間よりも1人で過ごす時間をいかに捻出して相手に迷惑をかけない程度で自分なりに楽しむかということの方が大事になってくるはず。

最近では、共通の趣味を通じて男女が出会う“趣味コン”が当たり前になってきました。しかし、趣味が合わなくても意外とうまくいくことを考えると、自分と同じ趣味を持つ人を探す趣味コンよりも、自分がまったく興味がない趣味コンに顔を出してみる方がその先の結婚生活がうまくいく相手が見つかるのかもしれません。

富士 みやこ