4. 【公的介護保険】「1割→2割」の対象拡大は?議論される3つのポイント
現在、見直しの議論で最も注目されているのが、2割負担の対象範囲の拡大です。議論のポイントを3つに分けて整理します。
4.1 《所得基準を280万円から引き下げる案》
現在、2割負担に該当する方は利用者全体の約4.3パーセント、3割負担は約3.9パーセントです。検討されているのは、単身世帯の基準である「年金収入とその他の合計所得金額280万円以上」を、260万円や230万円まで引き下げる案です。これが実現すると、65歳以上の方のうち所得の上位25パーセントから30パーセントが2割負担の対象になるとされています。
4.2 《急な負担増を抑える配慮措置》
負担割合が1割から2割に変更されると、単純計算で自己負担額は2倍になりますが、高額介護サービス費などの負担上限額を設ける制度があるため、実際の支払いが必ずしも全額2倍になるわけではありません。さらに生活への影響を和らげるため、当面の間は負担増を最大で月7000円までに抑える案や、手元資金に余裕がない方は申請によって1割負担に戻せるようにする案などが議論されています。
4.3 《金融資産をどう反映させるか》
公平性の観点から、株式などの金融所得や預貯金などの金融資産を負担能力の判定に反映させる仕組みも検討されています。財務省の財政制度等審議会でも、負担能力に応じてより公平に支え合う観点から、2割負担の対象拡大を早急に実施すべきだと求めています。
一方で、物価高のなかで負担が増えると介護サービスの利用を控えてしまい、かえって状態が悪化してしまうのではないかという慎重な意見も根強く残っています。
5. 【公的介護保険】2040年度までに介護職員「約57万人」確保が必要?介護DXも課題に
今回は、介護保険の基本的な仕組みと、現在議論されている2割負担の対象拡大について解説しました。介護保険制度は創設から25年が経ち、利用者が大幅に増加するなかで、誰がどれだけ費用を負担するかという見直しが避けられない状況にあります。2026年度中に結論が出される予定であり、今後の動向から目が離せません。
制度の見直しはお金の面だけではありません。2040年度までに新たに約57万人の介護職員を確保する必要があるといわれており、人手不足への対応も急務です。
2026年度からは「介護情報基盤」の運用が順次スタートします。これまで紙で行われていた要介護認定の情報やケアプラン(介護サービスの利用計画)などを電子的に共有する仕組みで、業務効率化と多職種連携への期待が高まっています。
参考資料
村岸 理美