政府は2025年12月、介護保険サービスを利用した際の自己負担を2割とする対象者の拡大について、年内の決定を見送りました。その後、「骨太の方針2026(国の経済財政運営の基本方針)」において、2026年度中に判断基準の見直しに関する結論を得る方針が示されました。これを受け、2026年9月18日に開かれた社会保障審議会・介護保険部会(社会保障制度を議論する国の会議)でも議論が行われましたが、委員の意見は分かれています。
FPとして家計相談にこれまで数多く携わってきましたが、介護費用の見通しに不安を感じる方は決して少なくありません。介護はいつ始まり、いつまで続くか予測が難しいためです。
介護保険は40歳以上のすべての方が保険料を納める仕組みであり、ご自身の老後や親の介護を考える現役世代にとって非常に身近な制度です。本記事では、介護保険の基本的な仕組みをおさらいしつつ、制度創設からの25年での変化や、現在議論されている2割負担拡大のポイント、そして今からできる備えについてFPの視点で詳しく解説します。
1. 【公的介護保険】40歳から加入、《65歳以上・40~64歳》で異なる2つの仕組み
介護保険は1997年に成立し、2000年4月に施行された制度です。制度ができる前は、高齢者の介護は同居する家族が担うことが一般的でした。しかし高齢化に伴い介護が必要な方が増え、介護期間も長くなる一方で、核家族化や介護するご家族自身の高齢化も進みました。そこで、社会全体で高齢者の介護を支え合う仕組みとして創設されたのが介護保険です。
単に身の回りのお世話をするだけでなく、高齢者の「自立支援」を理念としている点が大きな特徴です。加入者(被保険者)は、年齢によって以下の2つに分かれます。
1.1 第1号被保険者(65歳以上の方)
対象人数は3585万人です。原因を問わず要介護や要支援の状態になったときにサービスを利用できます。保険料は原則として年金から天引きされます。
1.2 第2号被保険者(40歳から64歳までの方)
対象人数は4188万人です。末期がんや関節リウマチなど、特定疾病(加齢に伴う特定の病気)が原因で介護が必要になったときに限りサービスを利用できます。保険料は健康保険料などと一緒に納めます。
会社員の方であれば、40歳になった月から給与明細に「介護保険料」の項目が加わるため、ここで初めて制度を意識する方も多いのではないでしょうか。
2. 【公的介護保険】介護サービスの自己負担は原則1割!所得により「2割・3割」になる基準
介護サービスを利用したときの自己負担は原則1割で、残りの9割は介護保険から給付されます。ただし、一定以上の所得がある65歳以上の方は、負担割合が2割または3割となります。現在の判定基準は以下のとおりです。
2.1 2割負担の基準
合計所得金額160万円以上、かつ「年金収入とその他の合計所得金額の合計」が280万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯は346万円以上)
2.2 3割負担の基準
合計所得金額220万円以上、かつ「年金収入とその他の合計所得金額の合計」が340万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯は463万円以上)
2割負担は2015年8月、3割負担は2018年8月から導入されました。なお、施設に入所した場合の居住費や食費、理美容代などの日常生活費は、原則として介護保険の対象外となり全額自己負担となります。
介護保険の総費用は、令和7年度予算ベースで14兆3000億円にのぼります。この財源は、皆様が納める保険料が50パーセント、公費(国や自治体の税金)が50パーセントという構成で成り立っています。
3. 【公的介護保険】25年で利用者3.6倍に!月額保険料も「2911円→6225円」へ
介護保険は、高齢者の生活になくてはならない制度としてすっかり定着しました。一方で、利用者の増加に伴って費用と保険料は増え続けています。
2000年4月末と2024年4月末を比べると、65歳以上の加入者数が2165万人から3591万人(約1.7倍)になったのに対し、介護サービスの利用者数は149万人から529万人(約3.6倍)へと大きく増加しました。高齢になるほど介護が必要になる方の割合は高まり、85歳以上では約58パーセントの方が要介護認定を受けています。
これに伴い、65歳以上の方が納める月額保険料(全国平均)も、制度が始まった2000年度の2911円から、2024年度には6225円へと2倍以上に上昇しました。40歳から64歳の方の保険料も増加傾向にあり、制度を長く維持するための見直しが急務となっています。