2019年から一部量産工程で導入が始まったEUVリソグラフィー技術は、20年から本格的な普及期を迎える。5nm世代の先端ロジックでは適用レイヤー数が一気に拡大するほか、ここにきてDRAM分野での適用に向けた検討も本格的に始まった。今後、露光装置をはじめとする装置・材料関連の市場規模は22年をめどに1兆円を超えるとみられ、新たな事業機会が続々と生まれている。
7nm世代での導入はトライアル
EUVの量産工程への導入で先陣を切ったのは台湾TSMCだ。19年から量産を開始した「7nm+」で数レイヤーにEUVを採用し、半導体業界としても大きな一歩となった。ただ、7nm+での導入はあくまでもトライアル的な要素が強く、次の5nm世代での本格導入を見据えたものと位置づけられていた。
この5nm世代においては、米アップルが20年のiPhone新機種に搭載されるアプリケーションプロセッサーでの採用を決定。アップル向けの需要がピークを迎える19年4~6月期までに月産5万~6万枚規模の量産ラインを構築する予定であり、7月末からの5nm用装置のラッシュオーダーにつながっている。
ファンドリー業界でTSMCと競合する韓国サムスン電子は、7nm世代の量産が19年末~20年初頭にかけてスタートする見通しであり、TSMCに追随する。ただ、サムスンの場合はファンドリー/ロジック分野での採用以上に業界に大きなインパクトを与えそうなのが、DRAMでの適用だ。
ASMLは7~9月期に23台受注
具体的には、1Znm以降の一部工程にEUVを採用する計画で、足元では開発のピッチを上げている印象だ。従来、クリティカル工程で液浸技術を活用して複数レイヤーでプロセス処理を行っていたものをEUV1レイヤーで置き換えることができるため、コストパフォーマンス、さらにはデバイス性能の面でもメリットが出てくるといわれている。サムスンの動きについて、国内の材料メーカーは「先端デバイスにEUVを採用したというシンボリックな動きではなく、しっかりとEUV採用による価値を見出しているようだ」(国内材料メーカー)と指摘する。
ASMLのEUV受注台数を見ても、DRAM分野への適用に向けたサムスンの姿勢がうかがえる。19年以降、EUVの受注ペースが一気に加速しており、4~6月期は10台、7~9月期に至っては23台と極めて高い水準となった。7~9月期の受注台数のうち、相応の割合がDRAM向けだったとしており、4~6月期もDRAMが過半を占めたと見られている。
ASMLは19年にEUV出荷台数として26台を計画しており、20年についても35台を見込んでいる。19年から高生産性タイプの「NXE:3400C」の出荷が始まっており、20年の出荷分すべてが「3400C」に切り替わる見通しだ。3400Cは時間あたり170枚以上のスループットを達成しており、メモリー量産では1日あたり2000枚以上の処理を達成している。ASMLによれば、「この処理能力はメモリー分野への量産適用によって、重要なマイルストーンだ」としており、メモリーで最も重要視されるスループットの壁も徐々にではあるが、乗り越えつつある。
ただ、DRAMでの本格的な適用は1B世代となる見通しで、当初期待されていた1Znm世代からの適用は見送られたもようだ。
マスク・ブランクス分野も恩恵
露光装置だけでなく、関連する装置・材料分野にはとっては新たな事業機会が訪れている。マスクおよびブランクス分野はEUV量産導入で最も恩恵を受けている分野の1つ。ブランクスメーカーはもとより、マスク/ブランクス向けの欠陥検査装置の需要も活況している。今後、量産フェーズに本格的に移行すれば、フォトレジストの需要も拡大する見通しで、供給各社はEUVレジストの開発にリソース投下を強めている印象だ。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳