4. 離婚後の賃貸探しで知っておきたい「セーフティネット住宅」
高齢の単身者や収入の少ない人は、賃貸住宅の入居審査で不安を感じることもあります。こうした人の住まい探しを支える公的な仕組みが、国土交通省の「住宅セーフティネット制度」です。
4.1 入居を拒まない賃貸住宅を登録する制度がある
住宅セーフティネット制度では、高齢者や低額所得者、子育て世帯などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅を、「セーフティネット登録住宅」として登録しています。
登録された住宅は、「セーフティネット住宅情報提供システム」で地域や家賃から探すことができます。
4.2 令和7年10月からは見守り付きの「居住サポート住宅」も
令和7年10月1日からは、改正住宅セーフティネット法にもとづく「居住サポート住宅」の認定制度が始まりました。居住支援法人などが大家と連携し、日常の安否確認や見守り、必要に応じた福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。
離婚後に一人暮らしを始め、年齢を重ねていくことを考えると、こうした見守りのある住まいも選択肢の一つになります。
4.3 家賃の補助や公営住宅は自治体によって異なる
セーフティネット専用住宅や居住サポート住宅の入居者に対しては、家賃や家賃債務保証料を下げるための補助を、国と地方公共団体が協力して行う仕組みがあります。ただし、実施しているかどうかは自治体によって異なります。
公営住宅も、単身で申し込める条件や収入基準は自治体ごとに決められています。お住まいの市区町村や都道府県の住宅担当窓口で、利用できる制度を確認しておきましょう。
5. 離婚前から住まいが決まるまでに確認しておきたいこと
年金分割と住まい探しは、別々に考えると後回しになりがちです。次の順番で確認しておくと、新生活の家計を組み立てやすくなります。
5.1 「年金分割のための情報通知書」で分割の目安を知る
年金分割の対象となる期間や標準報酬の総額は、年金事務所に請求できる「年金分割のための情報通知書」で確認できます。分割後の年金の見込みが分かれば、払える家賃の目安も立てやすくなります。
5.2 分割の請求は離婚後に年金事務所で行う
3号分割のみの場合は、第3号被保険者だった人が1人で年金事務所に請求します。合意分割の場合は、按分割合を定めた書類などが必要です。
請求期限は、令和8年4月1日以後に離婚等をした場合は翌日から5年以内です。それより前に離婚等をした場合は2年以内のままなので、注意が必要です。
5.3 家賃は年金生活に入った後の収入で考える
新居の家賃は、働いているうちの収入だけでなく、年金生活に入った後の収入でも無理なく払えるかを確かめておきたいです。住み替えを繰り返すと引っ越し費用や初期費用がかさむため、最初の住まい選びが老後の家計を大きく左右します。
6. まとめ
3号分割を使えば、婚姻期間中に扶養に入っていた人は、相手の合意がなくても厚生年金の記録を分けてもらえます。配偶者の標準報酬月額が40万円、第3号被保険者だった期間が15年なら、年金は月約1万6000円増える計算です。
ただ、分割後の年金だけで平均的な家賃を払い続けるのは簡単ではありません。セーフティネット住宅や自治体の住宅支援も含めて、住まいと年金をあわせて考えることが大切です。
まずは年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取り寄せ、分割後の年金額をもとに、無理なく払える家賃の上限を書き出してみてはいかがでしょうか。
7. 筆者コメント
離婚という大きな決断のなかで、年金や住まいのことまで考える余裕がないと感じるのは、ごく自然なことだと思います。
元銀行員として付け加えるなら、住宅ローンが残る家を財産分与で引き継ぐ場合、ローンの名義を変えるには金融機関の審査が必要になり、思うように進まないこともあります。「持ち家に住み続けるか、賃貸に移るか」は、ローンの残りと分割後の年金額を並べてから判断する。それが、新しい生活を長く安定させるためのファーストステップになります。
参考資料
- 日本年金機構「離婚時の年金分割」
- 日本年金機構「離婚時の年金分割の請求期限が改正されました」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 国土交通省「住宅セーフティネット制度」
- 国土交通省「居住サポート住宅の認定制度等がスタートします」
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」
和田 直子
