5. 申請の前に押さえておきたい注意点が3つある

出産手当金は、退職の予定や他の給付との関係によって扱いが変わります。押さえておきたい点を整理します。

5.1 申請には事業主と医師の証明が必要になる

出産手当金の支給申請書には、事業主が記入する欄と、医師または助産師が記入する欄があります。

出産後にまとめて申請するのが一般的で、申請から振込までにさらに時間がかかります。産休に入ってから最初の入金まで2か月以上空くことも珍しくないため、その間の生活費は手元に用意しておく必要があります。

5.2 傷病手当金との調整がある

出産手当金を受けられる期間に傷病手当金も受けられる場合は、出産手当金が優先されます。

つわりや切迫早産で産前休業に入る前から休んでいた場合、傷病手当金から出産手当金へ切り替わることになります。どちらの申請になるかは時期によって変わるため、健康保険の窓口で確認しておきましょう。

5.3 出産育児一時金は別の制度になる

出産手当金は休んだ期間の収入を補う給付で、出産費用そのものを補助する出産育児一時金とは別の制度です。

両方を受け取ることができます。出産育児一時金は医療機関へ直接支払われる仕組みを選べる場合が多いので、窓口での支払いがどうなるかを事前に医療機関へ確認しておくと、準備する現金の額が見通せます。

6. 産休・育休の期間は、収入の谷をどう埋めるかで考えたい

家計の相談では、産休・育休中の収入減を「なんとかなる」と考えていて、あとから苦しくなるケースを見かけます。

出産手当金は標準報酬月額の3分の2です。産休中は健康保険料と厚生年金保険料が免除されるため、手取りで比べた目減りは3分の1ほどではありませんが、賞与がある人は賞与分の減少も重なります。

妊娠が分かった段階で、産休・育休の期間にいくら入っていくら出ていくのかを月ごとに書き出しておくと、どこに谷ができるかが見えます。その谷の分だけ、事前に預貯金を厚くしておくのが現実的な備えになります。

7. まとめにかえて

出産手当金は、出産のため会社を休み、給与の支払いを受けなかったときに健康保険から支給される給付金です。

対象になるのは、出産の日以前42日(多胎妊娠は出産予定日以前98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で休んだ期間です。1日あたりの額は、標準報酬月額の平均を30で割り3分の2を掛けた額となります。

制度に頼りきりにするのではなく、支給までの時間差を埋める預貯金を用意しておくことが欠かせません。そのうえで、産休中に受け取れる額を把握しておくと、復帰の時期を含めた計画が立てやすくなります。

参考資料

和田 直子