4. 賃貸で暮らし続けると、いくら上乗せになるか

統計の数字をそのまま自分に当てはめる前に、確かめておく点があります。

いちばん大きいのが住まいです。

4.1 住居費が月1万7739円で計算されている

金額の低さは、世帯の構成から来ています。

家計調査の65歳以上の夫婦のみ無職世帯の消費支出26万3979円のうち、住居費は1万7739円(構成比6.7%)です。単身無職世帯でも1万1416円にとどまります。

出所:LIMO「老後資金はいくら必要か。最新データで計算した必要額の目安。不足額×平均余命でシミュレーション」

持家率が9割を超えるという数字と合わせて読むと、この1万7739円が何を表しているかがわかります。家計調査の住居は家賃地代と設備修繕・維持で構成される費目で、持ち家の世帯では設備修繕・維持が中心になり、家賃はほとんど含まれていません。

4.2 家賃8万円なら、月6万2261円の差になる

賃貸の場合にどれだけ変わるかを、同じ記事が具体的な金額で置いています。年数は厚生労働省の令和7年簡易生命表による65歳女性の平均余命24.52年です。

仮に家賃を月8万円とすると、統計の住居費との差は月6万2261円です。24.52年で計算すると約1832万円の上乗せになります。

出所:LIMO「老後資金はいくら必要か。最新データで計算した必要額の目安。不足額×平均余命でシミュレーション」

上乗せ分だけで、同じ世帯のひと月の不足を上回る2/2

統計の住居費と家賃8万円との差、平均余命24.52年ぶんの上乗せ額、同世帯のひと月の不足を並べた表

出所:総務省統計局「家計調査(家計収支編)2025年平均結果」、厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」をもとにLIMO編集部作成

この6万2261円は、同じ夫婦のみ無職世帯のひと月の不足4万2434円を上回ります。持ち家か賃貸かで、家計の形そのものが変わるということです。

4.3 額面の年金と手取りの生活費を並べない

もうひとつ、比べ方にも注意点があります。

令和8年度の標準的な年金額として示されている月23万7279円は、額面の金額です。一方で家計調査の可処分所得22万1544円は、税と社会保険料を差し引いた後の手取りです。

出所:LIMO「老後資金はいくら必要か。最新データで計算した必要額の目安。不足額×平均余命でシミュレーション」

この記事で見た75歳以上の世帯でも、実収入25万2798円と可処分所得22万1235円の間に3万1563円の差があります。

額面の年金額と、手取りベースで積み上がった生活費を同じ表に並べると、必要額を小さく見積もることになります。

5. まとめ

家賃を月8万円とした場合、統計の住居費1万7739円との差は月6万2261円です。65歳女性の平均余命24.52年で計算すると、約1832万円の上乗せになります。

この月6万2261円は、65歳以上の夫婦のみ無職世帯のひと月の不足4万2434円を上回る金額です。

年金を生活費と比べるときは、額面と手取りをそろえます。標準的な年金額23万7279円は額面、家計調査の可処分所得22万1544円は手取りです。

持ち家か賃貸か、年金を額面で見るか手取りで見るか。この2つが決まらないうちは、必要額の数字は動き続けます。

参考資料

中本 智恵