厚生年金には、加入期間が長い人に年金を上乗せする「長期加入者特例」という仕組みがあります。
日本年金機構が2026年8月12日に更新した案内によると、厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある人は、退職していることを条件に、報酬比例部分に定額部分を合わせた年金を受け取れます。
この記事では、2026年4月分から上乗せされる定額部分がいくらになるのかと、いま対象になるのはどんな人なのかを確認していきます。
1. 【厚生年金】44年加入で年金が上乗せされる「長期加入者特例」とは
長期加入者特例は、65歳より前に受け取る「特別支給の老齢厚生年金」のなかにある仕組みです。まずは何が上乗せされるのかを見ていきます。
1.1 報酬比例部分に定額部分が加わる
特別支給の老齢厚生年金には、報酬比例部分と定額部分の2つがあります。生年月日によっては報酬比例部分しか受け取れず、定額部分は65歳からの老齢基礎年金を待つことになります。
長期加入者特例に当てはまると、報酬比例部分の受給開始年齢から、定額部分も合わせて受け取れます。65歳より前に、年金の2階部分と1階部分に相当する額がそろう形です。
なお、日本年金機構は同じ案内のなかで、受給開始年齢の特例として次の3つを挙げています。
- 厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある
- 障害の状態にあることを申し出た
- 厚生年金保険の被保険者期間のうち、坑内員または船員であった期間が15年以上ある
1.2 退職していることが条件になる
44年以上という期間を満たしていても、それだけでは足りません。日本年金機構は「被保険者資格を喪失(退職)しているときに限る」と明記しています。
働き続けて厚生年金に加入したままの場合は、この特例は使えません。さらに在職中は、報酬によって年金額が支給停止となる場合もあります。
2. 長期加入者特例で上乗せされる定額部分は月7万640円
では、定額部分はいくらになるのでしょうか。金額は加入期間に応じて決まります。
2.1 2026年4月分からの計算式
日本年金機構によると、定額部分の計算式は2026年4月分から次のとおりです。
- 昭和31年4月2日以後生まれ:1766円 × 生年月日に応じた率 × 被保険者期間の月数
- 昭和31年4月1日以前生まれ:1761円 × 生年月日に応じた率 × 被保険者期間の月数
生年月日に応じた率は、昭和21年4月2日以後生まれの場合は1.000です。単価1766円に1.000を掛け、加入していた月数を掛けた金額が定額部分になります。
2.2 44年加入でも480月で頭打ちになる
被保険者期間の月数には上限があります。昭和21年4月2日以後生まれの場合、上限は480月です。
44年は528月にあたりますが、定額部分の計算に使えるのは480月までです。単価1766円に1.000と480月を掛けると、年額84万7680円になります。月額に直すと7万640円です。
2026年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円なので、定額部分はそれとほぼ同じ水準です。一方の報酬比例部分に上限の定めはないため、480月を超えた分は報酬比例部分の側に反映されます。
3. 2026年度に長期加入者特例が使えるのはどんな人か
ここが分かりにくいところです。長期加入者特例は特別支給の老齢厚生年金のなかの仕組みなので、その受給要件を満たしていないと使えません。
3.1 男性は昭和36年4月1日以前生まれが対象
日本年金機構によると、特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは、男性が昭和36年4月1日以前に生まれた人です。
昭和36年4月1日生まれの人は、2026年4月1日に65歳になります。65歳からは本来の老齢厚生年金に切り替わるため、2026年度に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている男性はいません。
3.2 女性は昭和41年4月1日以前生まれが対象
女性は昭和41年4月1日以前に生まれた人が対象で、受給開始年齢の引き上げが男性より5年遅れています。報酬比例部分の受給開始年齢は生年月日によって次のように分かれます。
- 昭和37年4月2日から昭和39年4月1日生まれ:63歳
- 昭和39年4月2日から昭和41年4月1日生まれ:64歳
- 昭和41年4月2日以後生まれ:対象外(65歳から)
ここに挙げたのは63歳以降に受給が始まる区分です。これより前の世代には、61歳や62歳から報酬比例部分を受け取る区分もあります。
63歳から受け取る昭和37年4月2日から昭和39年4月1日生まれの区分のうち、昭和38年4月2日以降に生まれた女性は、2026年度から2027年度の初めにかけて63歳を迎えます。この年代で44年以上の加入期間があり、すでに退職していれば、63歳から定額部分も受け取れます。
ただし同じ案内には「共済組合等から支給される老齢厚生年金の受給開始年齢は男性と同じになります」という注記があります。共済組合等の期間で年金を受け取る女性は、男性と同じ扱いになります。
厚生年金に44年以上入っていても、会社で働き続けて厚生年金に加入したままだと、この特例の「定額部分」は受け取れません。
「退職して年金の定額部分(月約7万円)を受け取るか」「このまま働き続けて給与を得るか」は、将来の手取りに直結する大きな選択です。まずは「ねんきん定期便」で正確な加入月数を確かめ、年金事務所で双方のシミュレーションをしてみることをおすすめします。
