人事院は2026年9月4日、「令和8年国家公務員給与等実態調査報告書」を公表しました。
行政職俸給表(一)が適用される13万9564人について、職務の級ごとの平均俸給額が明らかになっています。
一方、民間企業の役職別の賃金は、厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」で部長級が平均で月63万5800円と公表されました。自分の会社の部長や課長がいくら受け取っているのかは、社内ではなかなか聞けない数字です。
この記事では、民間企業の部長級・課長級・係長級・非役職者の賃金と年収の目安を確認したうえで、国家公務員の級別平均俸給額と並べてみます。公務員の「俸給」と民間の「所定内給与額」で数えているものがどう違うのかも、あわせて見ていきましょう。
なお、管理職の年収に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 民間企業の部長級・課長級・係長級の賃金と年収はいくらか
まず、民間企業の役職別の賃金から確認します。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」は、一般労働者のうち雇用期間の定めのない者を、部長級・課長級・係長級・非役職者の4つに区分して賃金を集計しています。
1.1 役職別の所定内給与額と年収の目安
企業規模10人以上・男女計の数値は次のとおりです。
【所定内給与額(月額)】
- 部長級:63万5800円
- 課長級:52万9200円
- 係長級:39万9200円
- 非役職者:31万500円
【年間賞与その他特別給与額】
- 部長級:244万6600円
- 課長級:219万1900円
- 係長級:151万2100円
- 非役職者:86万6400円
【年収の目安(所定内給与額の12カ月分+年間賞与その他特別給与額)】
- 部長級:1007万6200円
- 課長級:854万2300円
- 係長級:630万2500円
- 非役職者:459万2400円
年収の目安は、残業代を含まない所定内給与額を12倍して賞与を足したものです。残業代を含む「きまって支給する現金給与額」で計算すると、部長級は1020万1000円になります。
1.2 部長級の賃金は非役職者の2倍を超える
同じ調査は、非役職者を100としたときの役職・非役職間賃金格差も公表しています。
部長級204.8、課長級170.4、係長級128.6です。部長級は非役職者の2倍を超えています。
年齢と勤続年数は、部長級が53.1歳・22.6年、課長級が49.5歳・20.9年、係長級が45.4歳・17.5年、非役職者が41.8歳・10.8年でした。
役職ごとの倍率については、LIMOの記事「中間管理職はいくらもらっている?【年収一覧表】部長と課長、係長の年収はいくらか。プレイングマネージャーは9割「マネジメントにさける時間」を民間企業等と行政・自治体別にみる」から要点を引用して確認しておきましょう。
月額でみると、部長の賃金は非役職者のおよそ2.05倍、課長は約1.7倍、係長は約1.29倍です。数字だけをみれば、役職に就くことは「割に合う」ようにも思えます。
出所:中間管理職はいくらもらっている?【年収一覧表】部長と課長、係長の年収はいくらか。プレイングマネージャーは9割「マネジメントにさける時間」を民間企業等と行政・自治体別にみる
2. 国家公務員の俸給は「職務の級」で決まる
民間企業が部長・課長といった役職名で賃金を区分するのに対し、国家公務員は俸給表の「職務の級」で俸給が決まります。
人事院「令和8年国家公務員給与等実態調査報告書」の第6表は、適用俸給表別・級別の平均俸給額を示したものです。
2.1 行政職俸給表(一)の級別平均俸給額
もっとも適用人員が多い行政職俸給表(一)は、1級から10級までの10段階に分かれています。令和8年4月1日現在の適用人員は13万9564人、平均年齢は41.7歳でした。
令和8年国家公務員給与等実態調査 第6表による行政職俸給表(一)の級別平均俸給額と、人事院規則九―八が定める本省での標準的な職務2/2
出所:人事院「令和8年国家公務員給与等実態調査報告書」および人事院規則九―八(初任給、昇格、昇給等の基準)をもとにLIMO編集部作成
【職務の級ごとの平均俸給額】
- 1級:23万6571円
- 2級:26万6421円
- 3級:31万4877円
- 4級:37万7503円
- 5級:40万269円
- 6級:41万8667円
- 7級:44万9430円
- 8級:49万247円
- 9級:54万7182円
- 10級:58万8675円
- 行政職俸給表(一)の計:34万2178円
2.2 職務の級と本省での職務の対応
どの級がどの職務にあたるかは、人事院規則九―八の別表第一「級別標準職務表」で定められています。
本省の職務でみると、1級が定型的な業務を行う職務、2級が主任の職務、3級が係長の職務です。
4級は困難な業務を分掌する係の長、5級が課長補佐、6級が困難な業務を処理する課長補佐、7級が室長と続きます。
8級は困難な業務を所掌する室の長、9級は重要な業務を所掌する課の長、10級は特に重要な業務を所掌する課の長の職務です。
民間企業の部長級にあたる層を9級・10級とみると、平均俸給額は54万7182円と58万8675円になります。
3. 公務員の「俸給」と民間の「所定内給与額」は数えているものが違う
ここまでの2つの数字は、そのまま並べて比べることができません。
どちらも月額ですが、何を含めた額なのかが違うためです。
3.1 所定内給与額に含まれるものと除かれるもの
賃金構造基本統計調査でいう所定内給与額は、6月分として支給された「きまって支給する現金給与額」から、超過労働給与額を差し引いた額です。
差し引かれる超過労働給与額は5種類あります。時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当、宿日直手当、交替手当です。
裏返せば、役職手当や家族手当、通勤手当といった毎月決まって支払われる手当は、所定内給与額に含まれています。所得税等を控除する前の額です。
3.2 俸給のほかに支給される手当
これに対して国家公務員の俸給は、給与のうち基本給にあたる部分だけを指します。
人事院の同じ報告書によると、行政職俸給表(一)の平均給与月額は42万8451円で、その内訳は6つに分かれています。
- 俸給:34万2178円
- 地域手当等:4万5912円
- 俸給の特別調整額:1万2583円
- 扶養手当:7841円
- 住居手当:8190円
- その他:1万1747円
俸給34万2178円は、平均給与月額42万8451円のおよそ8割です。級別平均俸給額だけを民間の所定内給与額と並べると、公務員側を低く見積もることになります。
統計の数字を自分の給与明細と比べるときは、まず「何が足されている額なのか」を確かめてください。所定内給与額には毎月決まって出る手当が入っていますので、基本給だけを見て「うちは低い」と判断すると、実態を見誤ることがあります。


