5. 2027年3月期1Qに現れた、構造の続き

直近の決算でも、利益が先に伸びる形は続いている。

2027年3月期1Qの売上収益は1兆4,971億円で前年同期比+14.0%、営業利益は1,395億円で+24.6%、当期利益は1,098億円で+20.8%となった。売上の伸びを利益の伸びが上回る、増収増益の構図である。

通期の計画も動いた。会社は2027年3月期の売上収益を6兆2,700億円、営業利益を6,200億円、当期利益を4,950億円と見込む。期初に示した売上収益6兆2,000億円・当期利益4,750億円からの引き上げだ。計画どおりなら当期利益は前期比+21.4%となる。

営業利益6,200億円に対する1Q時点の進捗は22%台で、単純な4分の1ペースにはわずかに届かない。もっとも、四半期ごとの偏りがある事業を抱える会社で、1Qの進捗だけを取り出して評価するのは早計だろう。見るべきは、会社が期初から計画を引き上げるだけの手応えを持っているという事実のほうだ。

5期のトレンドに戻すと、位置づけがはっきりする。2022年3月期の売上収益4兆4,767億円・営業利益2,520億円から、2026年3月期には5兆8,947億円・4,330億円へ。営業利益率は5.6%から7.3%へ切り上がった。売上の伸びより利益の伸びが速い期間が、すでに数年続いていることになる。

その間にROE(自己資本利益率)は7.1%から9.7%へ上がった。電気機器の中央値7.7%を上回る位置にいる。

6. 政策保有株式の圧縮が映す、資本の使い方の変化

利益率の改善だけが資本効率を押し上げたわけではない。分母側の整理も同時に進んでいる。

政策保有株式の貸借対照表計上額は、2022年3月期の1,815億円から2026年3月期には448億円まで縮んだ。保有株式数でも9,832万株から2,713万株へ減っている。4期で4分の1近い水準まで落とした計算だ。

手放した資金がどこへ向かったかは、資産側に痕跡がある。のれんは前期の1,046億円から3,008億円へ膨らみ、投資キャッシュフローは▲3,444億円となった。営業キャッシュフロー5,759億円で稼いだ資金を、設備投資3,107億円と外部からの取り込みに振り向けている姿だ。

還元はどうか。2026年3月期の1株当たり配当は55円で前期の50円から増えたが、配当性向は27.7%と電気機器の中央値35.4%を下回る。自己資本比率60.9%も中央値62.2%とほぼ同じ水準で、財務の余裕を大きく崩してはいない。

配当を厚くするより、保有株を現金化して事業側へ回す。この数年の資本配分は、そう整理できる。ただし、のれんが3倍近くに膨らんだ以上、買った事業が計画どおりの利益を生むかどうかは、これから数期かけて検証されることになる。

7. 筆者コメント

利益率の並びと資本配分の変化を重ねると、この会社の見え方がもう一段変わってくる。

売上4.4%の事業が営業利益率18.4%を出せる。政策保有株式を4分の1近くまで落とせる。どちらも単独では小さな話だが、並べると「規模より効率を取りにいく」という一貫した向きが浮き上がる。

ただ、その向きが株価に素直に反映されてきたかというと、そう単純でもない。この1年弱の月末終値の振れ幅は、5期かけて積み上げた利益の変化よりはるかに大きかった。市場は構造の改善を年単位で織り込むが、日々の値付けはもっと別の要因で動く。

だからこそ、決算のたびに構成比だけを追うのではなく、利益率と投資額の組み合わせがどう変わったかを見にいきたい。重い投資を続けながら利益率を保てているのか、それとも投資が先行して率が落ちているのか。次の発表では、そこに目を向けることをおすすめしたい。

参考資料

8.1 免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。

石津 大希