ニュースで見かける年金のモデル額は、多くの場合ひとりぶんの金額ではありません。2026年度の厚生年金モデル額23万7279円も、夫婦2人分を合算した数字です。
本記事では、2026年度の年金額の例を確認したうえで、平均年収約610万円で40年間働いた男性のケースがいくらになるのか、そして受給者全体の平均額はどの水準なのかを順に見ていきます。
1. 2026年度の年金額の例。国民年金は満額7万608円、厚生年金は夫婦2人分で23万7279円
厚生労働省が公表した2026年度の年金額モデルでは、国民年金と厚生年金の受給額が次のように示されています。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
注意したいのは、厚生年金のモデル年金額として示されている月額23万7279円が、夫婦2人分を合算した金額だという点です。
このモデルは、平均標準報酬月額45万5000円で40年間勤務した会社員の夫が受け取る厚生年金と国民年金に、第3号被保険者や自営業者などとして基礎年金を受け取る妻の分を足したものです。共働き世帯や単身世帯、自営業者など、実際の働き方はもっと多様ですから、この金額はあくまで一つの参考値と捉える必要があります。
なお、2025年度のモデル年金額は23万2784円で、2026年度はこれを上回りました。公的年金は4年連続の増額です。国民年金の満額も、2025年度の月額6万9308円から引き上げられています。
2. 年金額が増えても生活が楽になるとは限らない
2026年度の公的年金は、国民年金(老齢基礎年金)が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなりました。ただし、増額イコール生活の改善とはなりません。物価の上昇ペースが、年金額の伸びを上回っているためです。
年金額の改定には「マクロ経済スライド」というしくみが適用されています。少子高齢化のなかで現役世代の負担が膨らみすぎないよう調整しながら、制度を将来にわたって維持するための仕組みです。年金額は本来、物価や賃金の変動をもとに見直されますが、ここから一定の調整率が差し引かれます。
2026年度は物価変動率が3.2%だったのに対し、改定率は国民年金1.9%、厚生年金2.0%にとどまりました。
金額そのものは増えていても、物価の伸びには届いていません。同じ年金額で買えるものが減っているため、「増えたはずなのに苦しい」と感じる場面が出てきます。
実際の受給額は加入期間や収入によって変わりますので、まずはご自身の金額を把握しておくことが大切です。年金受給者には改定の時期に「年金振込通知書」が届きますので、一度目を通しておくとよいでしょう。
3. 平均年収約610万円で40年間働いた男性は月額17万6793円
厚生労働省は2026年度の年金額改定にあわせて、「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」も公表しています。公的年金への加入状況ごとに、65歳時点で受け取る年金額の水準と分布を推計したものです。
公表データを見ると、厚生年金への加入期間が長い人ほど受給額は高くなり、国民年金のみの場合は月額6万円程度にとどまるケースが多く見られます。同じ制度のなかでも、就業年数や働き方、男女の違いによって開きが大きいということです。
3.1 平均年収約610万円で働いた男性のモデルケース
厚生年金に約40年間加入し、平均年収がおよそ610万円だった男性の場合、2026年度の年金受給額は月額17万6793円と見込まれています。
この金額には老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が含まれます。基礎年金の約7万円に、現役時代の報酬に応じた厚生年金が上乗せされている形です。長期間にわたって厚生年金に加入してきたケースにあたり、公的年金の受給水準としては高いほうに入ります。
