2. 現金のまま置いておく場合と、何が違うのか

新窓販国債は満期まで持てば元本が戻る商品ですが、預金と比べてわざわざ手続きをする意味があるのかは別の問題です。現金で持ち続けた場合に何が起きるのかを見ておくと、比べる土台ができます。

現金で持ち続けた場合の実質価値の変化は、LIMOの記事「老後資金は現金のままで大丈夫か?「運用しない」現金主義がインフレで受ける影響を試算で検証する」から要点を借りて確認します。

2.1 家計の金融資産は半分近くが現金・預金

LIMOの記事「老後資金は現金のままで大丈夫か?「運用しない」現金主義がインフレで受ける影響を試算で検証する」によると、日本銀行の資金循環統計にもとづき、2025年9月末時点で家計の金融資産残高は2286兆円と過去最高を更新し、このうち現金・預金が占める割合は49.1%で18年ぶりに5割を下回ったと整理されています。

裏を返せば、これまで20年近くにわたって家計の金融資産の半分以上が現金・預金だったということだと同記事は述べています。運用しないという選択は、日本では少数派ではなかったという指摘です。

同記事によると、国際比較では米国の家計金融資産は株式・投資信託が約5割を占め、現預金は1割程度にとどまります。欧州は株式・投資信託が3割、現預金も3割という構成です。日本の水準は他国と比べても際立って高いとされています。

2.2 現金500万円を30年持つと実質価値は半分以下になる計算

では、その現金は何もしなければどうなるのでしょうか。

同記事は、総務省の消費者物価指数で2025年平均の総合指数が前年比3.2%の上昇だったことをもとに、この上昇率が続くと仮定して試算しています。500万円を現金で持ち続けた場合、10年後に約365万円、20年後に約266万円、30年後に約194万円まで目減りする計算です。

名目額は500万円のまま変わらなくても、30年後にはその実質的な価値が半分以下になる計算です。「減っていない」という安心感の裏で、購買力は静かに失われていきます。

出所:LIMO「老後資金は現金のままで大丈夫か?「運用しない」現金主義がインフレで受ける影響を試算で検証する」

この試算は前提を置いた計算であり、実際の物価上昇率がこの水準で続くとは限りません。ただ、名目額が動かないことと購買力が落ちないことは別だという整理は、満期まで持てば元本が戻るという商品を評価するうえでも効いてきます。

2.3 金額が大きくても目減りの割合は変わらない

手元の金額が大きい場合はどうなるのかも示されています。

同記事によると、金額が変わっても目減りする割合は同じで、1000万円を同じ前提で30年間持ち続けた場合、実質価値は約389万円相当まで目減りする計算になります。

資産額が大きいほど名目額の変化のなさに安心してしまいがちだが、実質的な目減りの割合は資産額にかかわらず同じだと同記事は述べています。3億円まで買えるという新窓販国債の上限は、この点では別の意味を持ってきます。

2.4 値動きが小さい選択肢として国債が挙げられている

同記事は、株式や投資信託に抵抗がある場合の選択肢にも触れています。

財務省が発行する個人向け国債のうち変動10年は、半年ごとに適用利率が見直され、実勢金利の動きに連動する仕組みだと同記事は説明しています。最低金利保証が設けられており、元本割れのリスクがない点も特徴だとしています。

ただし、預金と同様に物価上昇率そのものに連動するわけではなく、あくまで金利の動きに応じた商品である点には注意が必要だとも書かれています。国債を持てばインフレを打ち返せるという話ではありません。

新窓販国債は固定金利で、国の買い取りによる中途換金制度がありません。同記事が挙げている変動10年とは、利率の決め方も換金の仕組みも別物だという点は分けて押さえる必要があります。

2.5 現金か投資かの二択で考えないという整理

同記事が置いている結論は、どちらかを選ぶという形ではありません。

たとえば、当面の生活費にあたる部分は現金・預金で確保しつつ、中期的に使う予定のない部分から少しずつ、個人向け国債やNISAのつみたて投資枠に振り向けていくといった方法です。一度にすべてを切り替えるのではなく、時間をかけて資産構成を変えていくことで、値動きへの不安を抑えながら進めやすくなります。

出所:LIMO「老後資金は現金のままで大丈夫か?「運用しない」現金主義がインフレで受ける影響を試算で検証する」

資産の性質別の置き場所として、当面1〜2年で使う予定の生活費は現金・預金で確保し、中期的に使う可能性がある資金は個人向け国債など、当面使う予定のない資金はNISAのつみたて投資枠などという一例が示されています。

この振り分け方に絶対的な正解はなく、自分がどれくらいの値動きなら受け止められるかという心理的な許容度も踏まえて少しずつ調整していくことが現実的だと同記事は述べています。

新窓販国債を当てはめるなら、満期が2年・5年・10年と分かれていることが手がかりになります。使う時期が見えている資金は短い満期に、当面動かさない資金は長い満期にという分け方ができるためです。

3. 換金の仕組みと満期の長さを先に確かめる

ここまで、新窓販国債の発行条件と、現金で持ち続けた場合の実質価値の変化を見てきました。

商品の側は、10年・5年・2年の固定利付3種類、金利と販売価格は発行毎に財務省が決定し、金利は募集開始日の2営業日前に公表、最低5万円から5万円単位で1申込みあたり3億円まで、利払いは半年毎に年2回、発行は毎月で年12回、発行方式はペーパーレス、そして国の買い取りによる中途換金制度はなく換金は市場売却という形でした。

現金の側は、家計金融資産の現預金比率が49.1%、物価上昇率3.2%が続く前提で500万円が30年後に約194万円という試算で、金額が変わっても目減りの割合は同じという整理でした。

実際に買えるかどうかは金融機関ごとの取扱いによって変わります。募集期間や販売価格、口座の手数料、そして途中で売る場合の扱いについては、取引しようとする証券会社や銀行などの金融機関、制度そのものについては財務省の新窓販国債のページでご確認ください。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班