3月期決算の企業を中心に、9月30日を基準日とする配当・株主優待の権利確定が近づき、個人投資家の関心はこうした「9月末銘柄」に向かいつつあります。

井村屋グループ<2209>もそのひとつです。

同社は5月12日に発表した2026年3月期通期決算で、売上高・営業利益・経常利益・純利益の4項目すべてが過去最高となる増収増益を達成しました。

その後、8月7日に発表した2027年3月期第1四半期決算では、増収を維持した一方で営業利益は減益となっています。

ここでは最新の決算から、井村屋グループの"稼ぎ頭"となっている事業を読み解くとともに、9月末の権利確定に向けて株主優待の内容も確認していきます。

なお、先に結論に述べると、9月30日の権利確定で受け取れるのは株主優待のみで、配当(年1回・3月末基準)はもらえません。この点は後半で詳しく解説します。

1. 最新決算からひも解く企業の稼ぎ頭

まず、5月12日発表の2026年3月期通期決算(連結)は以下の通りでした。

  • 売上高:537億2,300万円(前期比+5.1%)
  • 営業利益:32億円(同+6.5%)
  • 経常利益:35億3,300万円(同+11.5%)
  • 純利益:23億8,900万円(同+8.7%)

前期は全項目で最高益を更新。損益面では原材料価格やエネルギーコストの高騰が続き売上原価率は65.4%(前期比+0.2ポイント)に上昇したものの、一部商品の価格改定と生産性向上の取り組みでコストを吸収し、営業利益の増加につなげました。

その後、8月7日に発表した2027年3月期第1四半期決算では、売上高115億6,900万円(前年同期比+6.6%)と増収を維持した一方、原材料価格・資材費・減価償却費の増加によるコスト増から営業利益は2億5,700万円(同▲25.4%)と減益になりました。

もっとも、為替差益の計上などにより経常利益は3億6,600万円(同+7.1%)、純利益は2億2,700万円(同+25.5%)とそれぞれ増加しており、通期の会社予想(売上高560億円・営業利益33億円・経常利益34億円・純利益24億円)に向けたペースを保っています。

こうした業績を支えている事業構造を見ていきます。2026年3月期の事業別内訳は次の通りです。

  • 流通事業:売上高488億8,100万円(構成比91.0%、前期比+5.2%)、セグメント利益44億1,700万円(同+4.8%、営業利益率9.0%)
  • 調味料事業:売上高46億500万円(構成比8.6%、同+4.3%)、セグメント利益6億6,200万円(同+4.3%、営業利益率14.4%)
  • その他事業:売上高2億3,600万円(構成比0.4%、同+1.4%)、セグメント利益7,100万円(同+15.6%)

ここでいう"稼ぎ頭"には、利益の絶対額でみた場合と、利益率(収益性)でみた場合の2つの見方があります。

連結売上高の9割超、セグメント利益の大部分を占めるのは流通事業で、規模・絶対額の面では同事業が実質的な稼ぎ頭です。

一方、利益率でみると調味料事業(14.4%)の方が流通事業(9.0%)より高く、家庭用調味料に加えOEMによる機能性素材商品や中国事業の伸長が、小規模ながら高収益な構造を支えています。

つまり「稼ぐ規模」の流通事業と「稼ぐ効率」の調味料事業、という役割分担になっています。

1.1 主力は「あずきバー」、点心・デリは伸び悩み

規模で見た稼ぎ頭である流通事業を、さらにカテゴリー別に見ると明暗が分かれています。

  • 冷菓:178億9,700万円(前期比+6.7%)── 主力の「あずきバー」シリーズが好調で、販売本数は過去最高の3億3,500万本を記録
  • 菓子:97億1,500万円(同+7.6%)── 「片手で食べられる小さなようかん」シリーズなどが伸長
  • 食品:90億7,500万円(同+6.3%)── 「ぜんざい」「おしるこ」などの冬物商品が伸長
  • デイリーチルド:24億3,900万円(同+8.0%)── 豆腐類やチルドパックまんが伸長
  • 点心・デリ:91億6,200万円(同▲1.5%)── 冬場の気温が高かったこともあり、「肉まん・あんまん」の売上は前年並みにとどまった
  • スイーツ:4億7,500万円(同+8.8%)
  • VISON:1億1,600万円(同▲11.4%)

以上をまとめると、井村屋グループは2026年3月期に売上高・各利益ともに過去最高を達成し、規模で見た稼ぎ頭である流通事業(なかでも「あずきバー」の冷菓カテゴリー)がその原動力となりました。

ただし直近の2027年3月期第1四半期はコスト増から営業利益が減益に転じており、通期の好決算がそのまま今期も続くとは限らない点には留意が必要です。