3. 退職金制度がない会社はどれくらいあるのか
そもそも、この制度が必要とされる背景はどこにあるのでしょうか。LIMOの記事「退職金がない会社は?派遣・役員で異なる支給ルールと「時給前払い」の落とし穴」から引用します。
厚生労働省が公表した「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度(退職一時金または退職年金)がある企業の割合は74.9%となっています。
裏を返せば、全体の25.1%(約4社に1社)の企業には退職金制度が存在しないというのが日本の労働市場の実態です。特に従業員数30〜99人の小規模企業では、制度がない企業の割合が約3割に達しています。
出所:LIMO「退職金がない会社は?派遣・役員で異なる支給ルールと「時給前払い」の落とし穴」
制度がない企業の割合は、規模が小さいほど高くなります。iDeCo+が従業員300人以下に限られているのは、この層を対象にしているためです。
4. 従業員の側からできること
iDeCo+は事業主が実施を決める制度なので、従業員が単独で始めることはできません。ただし、前提としてiDeCoに加入していなければ対象になりません。
勤め先に企業年金がなく、従業員が300人以下なら、制度としては使える会社です。導入されているかどうかは、総務や人事に聞けば分かります。
導入されていない場合でも、自分でiDeCoに加入していれば、あとから会社が実施したときにそのまま対象になれます。
5. 会社の側の負担
事業主にとっては、掛金の負担が増える一方で、全額を損金に算入できます。運営管理機関と個別に契約を結ぶ必要もありません。
従業員がそれぞれ加入しているiDeCoの運営管理機関は、同じである必要はありません。従業員ごとに違う金融機関を使っていても実施できます。
実施する際は、あらかじめ事業主払込用の登録事業所番号を取得しておく必要があります。掛金は加入者掛金とあわせて、事業主がとりまとめて納付します。
6. 元DC講師が思う「会社の上乗せを活かすために」できること
iDeCo+は、企業年金を実施していない従業員300人以下の中小企業が、従業員のiDeCoの掛金に上乗せして拠出できる制度です。最後に、元DC講師として、この制度を活かすためにお伝えしたいことが3つあります。
6.1 「上乗せ」でも枠は増えないことを知っておく
会社が掛金を出してくれるのはありがたい話ですが、会社の掛金は自分の上限枠の中に入ります。すでに上限まで拠出している人は、会社の掛金の分だけ自分の掛金を減らすことになります。それでも自己負担が減る分のほうが大きく、損になることはまずありません。「上乗せ」の意味を正しく理解したうえで活用しましょう。
6.2 2026年12月からは枠が大きく広がる
2026年12月からは、企業年金のない会社員のiDeCoの拠出限度額が月2万3000円から月6万2000円に引き上げられ、iDeCo+も事業主掛金と合わせて月6万2000円が上限になります。会社と枠を分け合っても、これまでよりずっと余裕を持って積み立てられるようになります。また、一定の要件を満たせば、厚生年金に加入して働いているかぎり70歳になるまでiDeCo+の対象になれます。
6.3 まずは自分でiDeCoを始め、金額は家計全体で決める
iDeCo+は、本人がiDeCoに加入していることが前提です。勤め先に企業年金がない方は、会社の導入を待つより、まず自分でiDeCoを始めておくことが、結果的に会社の上乗せを受ける近道になります。そのうえで、掛金は節税額だけで決めず、家計全体で見て無理なく続けられる金額にすることが大切です。勤め先の規模と企業年金の有無を確かめるところから始めてみてください。
参考資料
三石 由佳