ゲーム会社という肩書きと、売上の6割弱が示すズレ

DeNAという社名を聞いて、多くの人が最初に思い出すのはスマートフォンのゲームではないだろうか。私もそうだった。

ところが同社が2026年3月期の短信で自らの姿を説明するくだりは、少し違う。会社は自社グループを、エンターテインメント領域や社会課題領域で各種事業を展開していると記している。ゲームという語は、その自己紹介の中心には置かれていない。

数字を開くと、その言い方の理由が見えてくる。2026年3月期の売上収益(IFRS)は1,477億円で、うちゲーム事業は641億円。構成比は43.5%にとどまる。

つまり売上の6割弱は、ゲーム以外の事業が稼いでいる。内訳はライブストリーミング事業が397億円、Sports Smart City Businessが326億円、ヘルスケア・メディカル事業が87億円、新規事業・その他が23億円だ。

しかもゲーム事業の売上は前期比▲17.7%と、5つの区分でもっとも大きく縮んだ。ゲームが主役という前提のまま眺めていると、この期に起きた変化は読み違えることになる。

球団と球場、そしてバスケットボール。売上の2割強を占めるスポーツの実体

ゲーム以外で最も目を引くのは、Sports Smart City Businessという区分だ。2026年3月期の売上収益は326億円、構成比は22.1%。前期比+4.8%で、5区分のうち増収はここだけだった。

この区分の実体は、有価証券報告書の関係会社の状況を開くとはっきりする。プロ野球の横浜DeNAベイスターズは、DeNAが議決権の97.7%を握る連結子会社である。

球団だけではない。本拠地の球場を運営する横浜スタジアムも、議決権76.9%の連結子会社だ。資本金は34億円で、DeNAの子会社としては大きい部類だ。バスケットボールのDeNA川崎ブレイブサンダースも75.0%を保有する。

興味深いのは、売上と利益で見え方が反転することである。スポーツ区分の営業利益は17億円、営業利益率は5.5%にとどまる。一方でゲーム事業は営業利益296億円、営業利益率46.2%。売上では4割強のゲームが、利益ではほぼ独占に近い。

減価償却費の並びも、この構造をよく映している。スポーツ区分の減価償却費は25億円で5区分の最大。ゲーム事業は8億円にすぎない。球場という装置を抱える事業と、ソフトウェアで稼ぐ事業が、同じ連結決算の中に同居している。

ライブストリーミング事業は売上397億円で構成比26.9%、営業利益39億円、営業利益率10.0%。配信プラットフォームを運営するIRIAMは100%子会社だ。ヘルスケア・メディカル事業は売上87億円に対して営業利益▲23億円で、まだ育てる段階にある。

一つの会社の中に、利益率46%の事業と、5%の事業と、赤字の事業が並ぶ。この落差こそが、いまのDeNAの骨格だと考えられる。

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出所:株式会社ディー・エヌ・エー 2026年3月期有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社ディー・エヌ・エー 2026年3月期有価証券報告書をもとに筆者作成

1カ月の株価は狭いレンジ。9月9日の下落とPBR1.07倍

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

では市場はこの構造をどう評価しているのか。直近1カ月の株価から見ていこう。

2026年8月12日の終値2,512円から、2026年9月9日の終値2,489円へ。21営業日を通しての変化はごくわずかで、方向感の乏しい推移だった。

期間のレンジも狭い。最も低かったのは2026年8月19日の2,438円、最も高かったのは2026年9月4日の2,620円。上下の幅は200円たらずに収まっている。

ただし直近の1日だけは違う。2026年9月8日の終値2,611円から翌9日は2,489円へと、1日で4.7%下げた。1カ月を通しては横ばい圏でも、最後の1日で期間の下限近くまで押し戻された形だ。

何が意識されたのかは断定できない。決算発表からは時間が経っており、個別の材料よりも相場全体の地合いや、バリュエーションの調整が効いた可能性がある。

そのバリュエーションを見ると、2026年9月9日時点のPBR(株価純資産倍率)は1.07倍だ。月内では1.12倍から緩やかに切り下がってきた。純資産に対して1倍を少し超える程度の評価にとどまる。

営業利益率46%のゲーム事業を抱えながら、株価純資産倍率は1倍近辺にある。この水準をどう受け止めるかは、ゲーム以外の6割弱をどう見るかにかかっているのではないだろうか。

筆者コメント

印象的なのは、減価償却費の並びだ。売上では4割強を占めるゲーム事業より、2割強のスポーツ区分のほうが大きい。

これは会計上の偶然ではなく、事業の性質そのものを映している。ソフトウェアで稼ぐ事業は資産を軽く保てるが、球場を抱える事業はそうはいかない。

軽い事業と重い事業を同じ屋根の下に置けば、連結の利益率は薄まる。それでも重い側を持ち続けるなら、利益率では測れない何かをそこに見ているということだろう。

会社の言葉を借りれば、社会課題領域という言い方がそれに近い。地域に根づいた資産は、四半期の利益では評価しにくい性質を持つ。

決算を読むときは、セグメントの売上構成比だけでなく、減価償却費がどこに乗っているかにも目を向けることをおすすめしたい。事業の重さは、そこに素直に出る。