1. 株価がほぼ2倍になった1カ月に何が起きていたのか

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

2026年8月12日の終値は2,650円だった。それが2026年9月9日には5,290円になっている。21営業日でほぼ2倍だ。

水準が切り上がり始めたのは8月中旬である。8月13日に3,150円、翌14日に3,750円と段を上げ、8月19日には4,420円まで届いた。

その後も上値を追い、8月31日の5,360円がこの1カ月で最も高い終値となった。2027年3月期1Qの数字が市場に伝わった局面と重なる動きだ。

もっとも、9月に入ってからは一方通行ではない。9月3日には4,900円まで下押しし、9月8日も4,955円で引けている。

そこから9月9日は5,290円へ切り返した。ボラティリティ(株価の日々の値動きの激しさ)が高いまま、水準そのものは1カ月前の倍近い位置に残っている。

ではなぜ、ここまで速く動いたのか。相場全体の地合いや需給も絡むため単一の要因では説明できないが、1Qで示された増収率の変化が意識された可能性は高い。

2. 増収率が27%へ再加速した2027年3月期1Q

2027年3月期1Qの売上高は48億円で、前年同期比+27.2%となった。営業利益は6億円で+36.9%、経常利益は+35.9%、純利益は4億円で+36.8%である。EPS(1株当たり利益)は19.24円だった。

注目したいのは増収率の動きだ。2026年3月期通期の増収率は15.7%、その前の2025年3月期は24.3%だった。いったん減速した増収率が、1Qで27.2%へ戻っている。

しかも利益率が落ちていない。1Qの営業利益率は14.4%で、前年同期の13.4%から1.0ポイント切り上がった。

会社は2027年3月期の通期見通しについて、プロフェッショナル支援事業とクラウドサイン事業の強化を前提に置いている。売上高205億円、営業利益30億円、純利益20億円という数字だ。前期比では増収25.9%、営業利益+36.1%、純利益+32.4%にあたる。

事業の柱は2つある。ひとつは、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」や税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」、企業法務ポータルサイト「ビジネスロイヤーズ」などを束ねるプロフェッショナル支援事業である。

もうひとつが、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を提供するクラウドサイン事業だ。

加えて2025年5月には、法務領域に特化したAIエージェント「リーガルブレインエージェント」を投入したという。専門家の業務効率化を支援するサービスだ。

増収率の再加速をどう読むか。既存2本柱の伸びに、投入から1年余りが経った新サービスの寄与が乗り始めた局面と読み取れる。

3. PER60倍台という水準と、通期進捗率23%台の落差

2026年9月9日時点のPER(株価収益率)は60.46倍、PBR(株価純資産倍率)は16.46倍である。PERはそもそも投資回収に何年かかるかを示す指標だから、会社予想EPS87.78円を前提にしても、かなり先の利益までを先払いする水準だ。

一方で、1Qの通期進捗率は控えめに見える。売上高は通期予想に対して23.6%、営業利益は23.3%、純利益は22.0%にとどまる。単純に4で割れば25%だから、直線ペースには届いていない。

ここで前期の並びを見ておきたい。2026年3月期の1Qは、通期実績に対して売上高で23.3%、営業利益で23.1%だった。

つまり今回の進捗率は、直線ペースには足りないが、この会社の季節性としてはむしろ前期をわずかに上回る。1Qが軽く、後半に寄る収益の形をそのままなぞっている。

新興のテック銘柄というと、成長のために利益を削るイメージが先に立つ。しかし営業利益率は業種であるサービス業の中央値6.5%の2倍を超え、ROE(自己資本利益率)も中央値9.0%を大きく上回る。

成長と利益率のどちらかを選ぶ、という構図には収まっていない。PERの高さは、この同時成立が続くという前提を置いた水準と受け止められる。進捗率の数字だけを取り出して遅れと決めつけないよう注意したい。

4. 筆者コメント

株価が倍になるあいだ、この会社の中身はどれだけ変わったのだろうか。見方を変えれば、1Qの数字そのものは劇的ではない。通期予想に対する進み方は前期をほぼなぞっただけで、季節性の範囲に収まっている。

変わったのは水準ではなく、伸び方の形だ。減速していた増収率が、利益率を落とさずに再び上を向いた。この2つが同時に立ったことのほうが、利益の絶対額よりも市場に効いたのではないだろうか。

私はここに、会社の見え方が切り替わった瞬間を見る。増収率が落ちていた期は「伸びは鈍るが利益は出る会社」に近づいていた。1Qの数字は、その解釈をいったん取り消したことになる。

株価はしばしば、今の利益ではなく利益の伸び方の変化に反応する。今回の1カ月は、その教科書のような例にみえる。

だからこそ次の四半期で見るべきは、利益の絶対額ではない。増収率が2桁後半を保てるか、そしてそのとき利益率が落ちないか。この2点を並べて追う姿勢をおすすめしたい。