4. 要件を満たしていても、自動的にはもらえない
ここまで確認してきた要件に当てはまっていても、それだけでは児童扶養手当は支給されません。児童扶養手当法上、手当を受け取るには、お住まいの自治体(都道府県知事等)に申請し、認定を受ける必要があると定められています。いわば「申請主義」の制度であり、対象になり得る事情が生じても、自分から動かなければ手続きは始まらない点に注意が必要です。
4.1 離婚届・死亡届を出すタイミングで、窓口案内を受けられることがある
児童扶養手当法には、申請や届出をした人に対して、自治体が相談や情報提供、助言を行う旨の規定もあります。実際に、離婚届を提出する窓口でひとり親家庭向けの支援制度をまとめた案内を渡していたり、死亡届の手続きにあわせて児童扶養手当の相談窓口を紹介していたりする自治体もあります。
もっとも、案内の有無や手厚さは自治体によって差があるため、「窓口で声をかけてもらえるはず」と受け身で待つのではなく、離婚や死別の手続きで役所を訪れた際には、児童扶養手当について自分からたずねてみることをおすすめします。
こども家庭庁も、ひとり親家庭向けのポータルサイトでリーフレットや制度案内を公開しており、事前に目を通しておくと、窓口での相談もスムーズになります。
離婚や死別の直後は、役所での手続きだけでも気持ちの余裕がなくなりがちです。窓口で案内をしてもらえる場合もありますが、担当窓口や混雑状況によっては、児童扶養手当の話まで手が回らないこともあります。戸籍や住民異動の手続きに行く際は、「児童扶養手当について教えてほしい」とご自身からひと言添えてみることをおすすめします。
5. 支給額はいくら?子どもの人数で加算される
対象要件を満たした場合に、実際いくら受け取れるのかも確認しておきましょう。
児童が2人目以降になると、1人につき加算額が上乗せされます。一部支給となる場合の金額は、前年の所得に応じて上記の範囲内で段階的に決まる仕組みです。
6. 遺族年金を受け取っている場合、児童扶養手当との併給は可能か
ひとり親になった経緯によっては、遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)を受け取っているケースもあります。この場合に児童扶養手当が併給できるのかは、多くの人が気になるポイントです。
平成26年12月の制度改正より前は、公的年金を受け取れる場合、児童扶養手当は全部支給停止とされていました。しかし現在は、受け取っている公的年金額が児童扶養手当の額より低い場合、その差額分を児童扶養手当として受け取れる「差額支給」の仕組みに変わっています。年金を受け取っているからといって、児童扶養手当をまったく受け取れなくなるわけではありません。
6.1 差額支給のパターン例を見てみる
母と児童1人の世帯で、児童扶養手当の全部支給基準額(4万8050円)をもとに、受け取っている遺族年金の月額別に、実際いくら児童扶養手当が上乗せされるのかを試算すると、次のようになります。
遺族年金の月額が児童扶養手当の全部支給額を下回っている間は、その差額が児童扶養手当として支給され、遺族年金の月額が児童扶養手当の全部支給額以上になると、児童扶養手当は支給停止となります。なお、令和3年3月からは障害基礎年金についても、子の加算部分のみを児童扶養手当の額と比較する見直しが行われており、年金の種類によって計算の考え方が異なる点にも注意が必要です。
「年金を受け取っているから」と申請自体をあきらめてしまうと、本来受け取れるはずの差額を取りこぼしてしまいます。正確な判定には、年金の種類や加算の有無、世帯の所得なども関わってくるため、遺族年金を受給している人ほど、自己判断で終わらせずに自治体の窓口で試算してもらうことが欠かせません。
7. まとめ
児童扶養手当は、父母の離婚や死別などにより児童を監護している場合に支給される手当で、年6回、奇数月の11日にそれぞれ前の2か月分がまとめて振り込まれます。ただし、要件に当てはまっていても自動的に支給が始まるわけではなく、自治体への申請と認定が必要です。離婚届や死亡届の手続きで役所を訪れた際は、窓口からの案内を待つだけでなく、自分から児童扶養手当について確認しておくと安心です。
遺族年金を受け取っている場合も、その額が児童扶養手当の全部支給額を下回っていれば、差額分を児童扶養手当として受け取れる可能性があります。「年金をもらっているから対象外」と思い込んで申請をあきらめる前に、まずは自治体の窓口で試算してもらうことをおすすめします。
参考資料
和田 直子
