サラリーマンとして生きる人たちの中には、過酷な権力争いに巻き込まれたりその渦中で戦っていたりする人たちもいます。ドラマの世界のような抗争や左遷があったり、果ては会社を追い出されたりするケースもありますよね。今回は、過去に会社を追い出された経験があるという3人に話を聞いてみました。
社長が「無視」…大人げない雇われ社長
ある金融機関に勤めていたAさん。グループ会社がいくつかあるうち、収益の中核を担う会社で働いていました。さらにその会社でも収益の6~7割を稼ぎ出し、エースが集まると名高い部門のマネージャーとして活躍。収益の柱であるため、社長や役員からのプレッシャーは大きかったものの、Aさんはやる気のある部下や後輩を厳しくも愛情を持って育てる充実した日々を送っていたと言います。
そんなある日、ある人物が非収益部門にマネージャーとして入社してくることになりました。そのマネージャーは狡猾なタイプで、入社してすぐに社長と意気投合。ほかの役員からはやや煙たがられていましたが、とにもかくにも社長に付きっきりで何でもかんでも社長の言うことは聞く、いわゆるイエスマンでした。
最初は「こんなに露骨だったらさすがにバレて社長にも煙たがられるだろう」と思っていた役員やAさんも、社長がみるみるうちに気に入っていく様子を見て薄気味の悪さを感じたと言います。そして1年も経つと、社長はそのイエスマンの言うことしか聞かなくなってしまいました。そしてイエスマンはあっという間に昇進、役員の座を勝ち取ったのです。
その頃には一般の社員からもかなり嫌われていましたが、そんなときに社長の不倫疑惑が浮上。イエスマンは全力でもみ消し、その姿を見た社長は感激。さらに二人の絆は強くなりました。しかしそのイエスマンとは気が合わなかったAさん。イエスマンも同じで、Aさんに対する風当たりはどんどん強くなるばかり。そのうち会議でも社長はAさんの話を聞かなくなったと言います。
会社にとって一番の収益部門を率いているAさんの話を聞かないということほど、Aさんを失望させたことはありませんでした。収益がいいこともあってそのポジションを外されることはなかったものの、周囲が昇進してもAさんはマネージャーのまま。次期役員と期待されていたのにその扱いでは、Aさんも納得がいかず、「結局、居場所がなくなって追い出されたってこと」と後に語るように、自ら会社を去ったのだそうです。
グループ会社は親会社の意向にはかなわない
次も、とあるグループ会社の話です。Bさんはヘッドハンティングで入社し、セールス部門の部長としてその会社でのキャリアをスタートさせました。
社長は親会社の社長や役員らと親しく、親会社の意向には1ミリも背かない人物。あるとき親会社からの横暴な通達で、Bさんの会社の営業活動に欠かせない顧客リストにアプローチする方法を大幅に制限されたことがありました。それでも社長は何も抵抗せず、その通達を受け入れるのです。
Bさんはセールス部門の部長として、その通達に猛反対。営業が立ち行かなくなってもいいのかと社長に詰め寄ると、「本体(親会社)の言うことだから」と知らんぷり。「収益が確実に落ちますよ。お客のリストが使えないんだから」とさらに迫るも、「もっとほかの方法を考えてよ」と言って逃げるばかりの社長。
Bさんが「そもそも親会社とは業種も違うし、顧客だってBtoCとBtoBで違うのだからその通達はうちには意味のない通達だ。きちんとそのことを説明して例外扱いしてもらうべき」と言っても、「例外なんて言ったらグループの意味がない」と、何を言っても聞き入れてもらえませんでした。
それでも何とか策を講じて収益を大きく落とすことはなかったBさん。それについてもBさんのことは一切評価せず、Bさんは重要な会議に呼ばれなくなったのだそう。セールス部門の部長が呼ばれないなど普通は考えられないような会議でも、社長や社長と親しい役員の中だけで決められ、後から決定事項だけがメールで送られてくるようになったといいます。
そればかりか、社長派役員が従業員に対してBさんに関するあることないことを吹聴するように。Bさんを慕ってくれる部下も多かったものの「このままでは部下や後輩がダメになってしまう」と離職を決意したのだそうです。