9月は、上半期の相場をひととおり振り返る記事が増える時期で、そこでは為替の水準もあわせて取り上げられます。積み立てを続けている方ほど、円で見た残高がその間にどう動いたのかが気になる時期でもあります。
全世界の株式に投じる投資信託を選んでいれば、世界中に分けて持っているのだから為替の影響も薄まるはずだ、と考えている方は少なくありません。ところが中身を開くと、組み入れの約6割は米国の企業です。円で見た残高に為替がどこまで効いてくるのかは、この比率でおおよそ決まってきます。
この記事では、2026年9月25日時点の運用実績を期間ごとに並べ、上位の銘柄がどこまで重なっているのか、そして何が結果を分けているのかを確かめます。記事後半では、為替が10円動いたときに円換算の資産額がどれだけ違ってくるのかを計算し、受け取り方まで見据えた考え方も取り上げます。
1. 円で表示された運用実績を、為替が重なっている前提で読み直す
両ファンドの実績をそろえて並べた比較は、LIMO「【2026年比較】オルカンとS&P500はどっちを選ぶべき?運用実績の違いとあなたに合う投資法」でくわしく解説しています。ここでは、運用会社が公表している最新の数字で見直します。
まず押さえておきたいのは、ここに並ぶ数字がいずれも円で表示されたものだという点です。海外の企業の株式を組み入れている以上、円で見た成績には、企業の値段の動きと、円と外貨の交換比率の動きが重なって表れます。2026年9月25日時点の実績を、期間ごとに見ていきます。
1.1 全世界株式(オルカン)の運用実績はどこまで来ているのか
三菱UFJアセットマネジメントのファンドページによると、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の騰落率(分配金再投資)は次のとおりです。※2026年9月25日時点
- 設定日:2018年10月31日
- 設定来:+283.25%
- 過去5年:+143.57%
- 過去3年:+93.06%
- 過去1年:+26.34%
- 過去6カ月:+16.71%
- 過去1カ月:−0.38%
設定時に1万円だった基準価額は3万8325円になり、設定から7年あまりで、円で見た価値は3倍を超えるところまで来ています。ただし、この間に円と外貨の交換比率も動いていますから、この数字のすべてが企業の値段の伸びだけで説明できるわけではありません。
1.2 米国株式(S&P500)の運用実績を同じ時点でそろえて見る
同じ2026年9月25日時点で、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の騰落率はこうなっています。
- 設定日:2018年7月3日
- 設定来:+350.49%
- 過去5年:+162.81%
- 過去3年:+96.91%
- 過去1年:+25.06%
- 過去6カ月:+18.13%
- 過去1カ月:+0.48%
設定日が4カ月ほど早く、期間の取り方が違うため単純には並べられませんが、設定来で見た数字は全世界株式より上に来ています。組み入れているのが米国企業だけですから、円で見た成績に交換比率の動きがそのまま乗ってくる形になります。
運用会社の月次レポートには、基準価額の動きを要因別に分けた概算も載っています。2026年8月31日までの設定来の値上がりのうち、為替要因は全世界株式で7183円、米国株式で8941円とされています。
設定来の値上がりには、株価の動きだけでなく為替の動きも含まれています。為替要因は米国株式のほうが大きく見積もられています1/4
出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート」、三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート」(いずれも2026年8月31日現在)をもとにLIMO編集部作成
1.3 1年と5年で上下が入れ替わるのは、何が効いた結果なのか
同じ2本を、期間を変えて並べ直してみます。上下が入れ替わる場面があることが分かります。なお、6カ月と1カ月では米国株式のほうが上に来ています。
過去1年では全世界株式、過去5年では米国株式が上に来ます。どこで区切るかで順番が変わります2/4
出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」をもとにLIMO編集部作成
直近1年で上に来るのは、米国の外を含めている側になる
過去1年の騰落率は、全世界株式が+26.34%、米国株式が+25.06%です。米国以外の地域を含めた側が、この期間では上に来ています。米国の比率が低いぶん、米国の外で起きたことが成績に反映される余地があった、という読み方ができます。
直近5年で比べ直すと、米国に集中している側が上に来る
過去5年の騰落率では、全世界株式が+143.57%、米国株式が+162.81%となり、順番が逆になります。この期間は、米国に集中している側が大きく伸びた形です。同じ2本でも、どこで区切るかによって見え方が変わることが分かります。
設定来の数字は、期間がそろっていない点を踏まえて読む
設定来では、全世界株式が+283.25%、米国株式が+350.49%です。ただし、両ファンドは設定日が約4カ月ずれているため、この数字をそのまま優劣として読むことはできません。どちらも運用期間が10年に届いていないため、ここでは設定来の約8年を長期として扱っています。
2. 同じ銘柄を持ちながら円で見た結果が分かれるのはなぜなのか「中身」から読み解く
「全世界株式」と「米国株式」という呼び名からは、まるで違うものを買っている印象を受けます。ところが実際に組み入れを開いてみると、上位に並ぶ顔ぶれは驚くほど重なっています。それでも成績に差が出るのは、どの銘柄を持っているかではなく、それぞれをどれだけの比率で持っているか、そして米国の外をどこまで含めているかが違うためです。
2.1 組入上位の銘柄はどこまで重なっているのか「上位10銘柄」で確かめる
2026年8月31日時点で、上位5銘柄は両ファンドで同じ顔ぶれになっています。上位10銘柄のうち9銘柄が共通で、全世界株式には台湾の企業が、米国株式にはTESLAが入っています。
上位5銘柄は同じ顔ぶれですが、同じ企業でも米国株式のほうが比率は高くなっています3/4
出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート」、三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート」(いずれも2026年8月31日現在)をもとにLIMO編集部作成
全世界株式の組入上位10銘柄は、どの企業がどれだけの比率を占めているのか
- NVIDIA CORP(アメリカ/情報技術):4.7%
- APPLE INC(アメリカ/情報技術):4.4%
- MICROSOFT CORP(アメリカ/情報技術):3.4%
- AMAZON.COM INC(アメリカ/一般消費財・サービス):2.4%
- ALPHABET INC-CL A(アメリカ/コミュニケーション・サービス):1.8%
- TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾/情報技術):1.8%
- ALPHABET INC-CL C(アメリカ/コミュニケーション・サービス):1.6%
- BROADCOM INC(アメリカ/情報技術):1.6%
- META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ/コミュニケーション・サービス):1.2%
- MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ/情報技術):1.0%
米国株式の組入上位10銘柄には同じ企業がどの比率で入っているのか
- NVIDIA CORP(アメリカ/半導体・半導体製造装置):7.9%
- APPLE INC(アメリカ/テクノロジ・ハードウェア・機器):7.0%
- MICROSOFT CORP(アメリカ/ソフトウェア・サービス):5.7%
- AMAZON.COM INC(アメリカ/一般消費財・サービス流通・小売り):3.9%
- ALPHABET INC-CL A(アメリカ/メディア・娯楽):2.9%
- BROADCOM INC(アメリカ/半導体・半導体製造装置):2.6%
- ALPHABET INC-CL C(アメリカ/メディア・娯楽):2.5%
- META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ/メディア・娯楽):1.9%
- MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ/半導体・半導体製造装置):1.6%
- TESLA INC(アメリカ/自動車・自動車部品):1.5%
並べてみると、名前はほとんど同じで、比率は米国株式のほうが高くなっています。首位の企業は全世界株式で4.7%、米国株式で7.9%です。
世界の値動きを引っ張っている巨大IT企業の成長は、どちらを選んでも受け取れる形になっています。違うのは、その企業が手元の残高のどれだけを占めているかという一点です。
2.2 比率の差が、値動きと為替の両方の効き方を決めている
同じ銘柄を組み入れながら成績に差が出る最大の理由は、それぞれが占める比率にあります。ここが、為替の効き方を考えるうえでも入口になります。
米国株式は上位の比率が高く、値動きも為替もそのまま効く
米国株式は、米国の主要企業約500社だけで組まれています。そのぶん上位企業の比率が高くなり、過去5年のように米国に集中している側が伸びた局面では、その集中の度合いが成績を押し上げる力になりました。
同時に、組み入れているものがすべて米ドル建てですから、円と米ドルの交換比率が動いたとき、円で見た残高はその動きをまるごと受け取ることになります。
全世界株式は米国を中核に置き、残りを他の地域へ振り分ける
一方の全世界株式も、2026年8月31日時点で国・地域別の比率はアメリカが62.8%です。残りの約4割に、日本(5.0%)や欧州、新興国などが含まれます。
そのため、首位の企業の比率は米国株式に比べて低く抑えられます。米ドル建ての部分が小さいということは、円と米ドルの交換比率が動いたときに揺さぶられる部分もそのぶん小さい、ということでもあります。
2.3 「米国以外の約4割」が効いてくるのはどんな局面なのか
直近1年の騰落率で全世界株式が上に来たのは、この約4割が働いた結果と考えられます。ただし、運用会社の資料には地域ごとの1年の騰落率は載っていないため、どの地域がどれだけ効いたのかまでは読み取れません。
一般に、米国のハイテク銘柄の伸びがゆるむ一方で、日本株や欧州株が相対的に堅調な局面では、広く分けて持っている側が上に来ることがあります。
ここで大事なのは、約4割の中身が「円建ての資産」ではないという点です。日本株の部分は円建てですが、欧州や新興国の部分はそれぞれの通貨建てです。ですから、米ドルとの交換比率が動いたときの効き方は米国株式より小さくなる一方、為替の影響がなくなるわけではありません。
今後も米国が伸びの中心だと考えるなら米国株式、米国を中核と見つつ他の地域が伸びたときの恩恵も取りこぼしたくないと考えるなら全世界株式、という見方ができます。
3. 長い時間で見るときに、為替をどこに位置づけて選ぶのか
どちらを選んだほうがよかったのかは、20年、30年という時間が経ってはじめて振り返れるものです。短い期間の上下や、為替が大きく動いたというニュースに合わせて持ち替えを繰り返すと、その都度の交換比率がそのまま結果になってしまいます。
為替は、行きも帰りもある動きです。円安に振れた年は円で見た残高が増えやすく、円高に振れた年はその逆に働きます。長く積み立てを続ける前提であれば、この上下の両方を通過することになりますし、円で見た値段が下がった局面では、同じ金額でより多くの口数を買うことにもなります。
ですから、為替が気になるから株式をやめるという話にするのではなく、米ドル建ての部分をどれだけ持つかという割合の話に置き換えて考えてみるのも、方法の1つです。
なお、投資信託には元本割れの可能性があり、この記事は特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。運用にあたっては手数料がかかるケースもあり、その水準は商品や販売する会社によって異なります。最終的な判断は、ご自身の責任において行っていただくものになります。
積み立てを預金に置いたままにした場合との差については、LIMO「【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?「利回り5%の積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金」シミュレーションで徹底比較」にまとめています。
なお、オルカンとS&P500の運用実績と中身の違いに関する詳しい解説は、下記の記事を参照しています。
4. 構成比率と為替リスクを運用報告書で確認
2026年9月25日時点の騰落率は、過去1年では全世界株式が+26.34%、米国株式が+25.06%、過去5年では全世界株式が+143.57%、米国株式が+162.81%でした。どこで区切るかによって、上に来る側は入れ替わります。
2026年8月31日時点の組入上位10銘柄は9銘柄が共通で、違いはそれぞれの比率にあります。全世界株式も国・地域別ではアメリカが62.8%を占めており、世界に分けて持っていても、円で見た残高から為替の影響がなくなるわけではありません。
まずは、いま積み立てている商品の米国の比率がいくつになっているかを、運用報告書や月次の資料で確かめてみてください。
記事後半では、為替が10円動いたときに円で見た残高がどれだけ違ってくるのかを試算し、受け取り方まで見据えた考え方をIFA・奥田朝が解説します。

