2026年8月頃から、年金を受け取っている方のもとへ「公金受取口座登録の意向確認書」が順次発送されています。年金にまつわる郵便物が続けて届くこの時期は、自分の年金がいまどのあたりの水準にあるのかを確かめておく機会でもあります。その目安としてよく使われているのが、年代別の平均受給額を並べた一覧表です。ただ、一覧表に並んでいるのは各年齢の平均で、どの行が自分に近いのかは、加入してきた制度と受け取り始めた時期によって変わります。この記事では、1歳刻みの平均年金月額を60歳から89歳まで並べたうえで、60歳代の前半と後半で平均がどこまで開くのかを確かめます。
なお、年代別の平均年金月額と住民税の課税状況に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 2026年度に決まった改定率は、どの月の支給分から反映されるのか
公的年金は、賃金や物価の動きを踏まえて毎年度改定される仕組みです。2026年度の改定率は、基礎年金にあたる国民年金が前年度比1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%の増額と決まりました。
反映されるのは2026年6月に支給される4月分・5月分からです。改定後の年金額を記した通知書も、6月の支給に合わせて日本年金機構から届きます。
年代別の一覧表と天引きの仕組みをひとつながりで追いたい方は、【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?で確認できます。
1.1 国民年金の満額と厚生年金のモデル世帯、2026年度に示された額はどの位置にある数字なのか
国民年金と厚生年金、2026年度の支給額として示された例
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分)(※1):月額7万608円
- 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)(※2):月額23万7279円
※1:昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額)は月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※2:厚生年金のモデルケースは、平均的な収入(平均標準報酬45万5000円)を得ていた夫が40年間就業し、その配偶者が国民年金を満額受給する場合の世帯の給付水準(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金)です。
ここに並ぶ2つの額は、条件をそろえたうえで示された例です。国民年金のほうは保険料を40年間納め切った場合の満額、厚生年金のほうは夫婦2人分の基礎年金まで含めた世帯の水準を指しています。自分ひとりが受け取る額の目安として並べて比べる数字ではない、という点だけ先に押さえておきたいところです。
1.2 6月に届く2つの通知書は、どちらを見れば自分の目安が分かるのか
年金を受給している方のもとへは、6月になると日本年金機構から通知書が2通届きます。「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」の2つです。
「年金額改定通知書」に載っているのは、その年度(4月分以降)の改定後の年金額です。今年度の自分の額を確かめられるのはこちらです。
「年金振込通知書」のほうには、特別徴収される税や社会保険料の内訳と、差し引いたあとに口座へ入る額が並びます。一覧表の数字と自分の額を突き合わせるときは、この2通をそろえて手元に置いてください。
1.3 年金から差し引かれるものは、どの項目として並んでいるのか
老齢年金から特別徴収される税・社会保険料の内訳
- 介護保険料
- 公的医療保険料(国民健康保険または後期高齢者医療制度)
- 個人住民税・森林環境税
- 所得税・復興特別所得税
受け取る年金が一定の額を超えると、現役のころと同じように、介護保険料・医療保険料・住民税・所得税が年金から特別徴収されます(※)。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」に示されるのは、こうしたものが引かれる前の額面です。この先に並べる一覧表の数字も同じ額面ですので、口座に入るのはそれより少ない額になる前提でご覧ください。
※年間の受給額が18万円未満である場合など、条件によっては年金からの天引きが行われないケースもあります。
1.4 仮徴収と本徴収では、差し引かれる額がなぜそろわないのか
年金から天引きされるもののうち、住民税や介護保険料などは、6月にその年度の額が決まります。
決まる前の4月・6月・8月は、前年度の情報をもとにした仮の額で引かれます。これが仮徴収です。決まったあとの10月・12月・2月は、年間の保険料から仮徴収分を差し引いて調整した額になり、こちらが本徴収にあたります。時期によって天引き額や振込額が変わるケースがあるのは、この切り替わりがあるためです。
2. 60歳代の一覧表は、前半と後半でどこに線が引かれているのか
ここからは、実際に受け取られている老齢年金の平均額を年齢ごとに追っていきます。厚生年金と国民年金に分けて、1歳ずつ平均月額をたどります。
この記事の厚生年金の月額は、基礎年金である国民年金を含んだ額です。上乗せ部分だけを取り出した数字ではありませんので、国民年金の欄と足し合わせないよう気をつけてご覧ください。
2.1 厚生年金の平均月額:60歳代では、どの年齢を境に水準が変わるのか
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
2.2 国民年金の平均月額:60歳代では、どの幅のなかで動いているのか
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
65歳から69歳までの5つの欄を横に見ると、厚生年金は14万9862円から15万2709円のあいだ、国民年金は6万978円から6万1369円のあいだに並びます。上下の振れが小さく、目安として使いやすいのはこの範囲です。
一方、64歳までの欄は水準が低いうえに、上下の振れも大きくなっています。繰上げ受給(※1)を選んだ方と、特別支給の老齢厚生年金(※2)の報酬比例部分のみを受給している方とが、同じ欄に入っているためです。60歳代の一覧表は、65歳のところで性格の違う2つの表がつながっている、と考えて読むほうが実態に近くなります。
※1 繰上げ受給:老齢年金を60歳から64歳の間に前倒しで受給する制度です。繰上げた月数に応じて年金額が1カ月あたり0.4%減額され、その減額率は生涯適用されます。
※2 特別支給の老齢厚生年金:厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳へ引き上げられたことに伴う経過措置です。生年月日などの一定条件を満たす場合に、65歳になる前から受給できます。
3. 70歳代の一覧表では、どの数字を自分の目安に置けばよいのか
続いて70歳代です。60歳代の後半とつながる水準がどこまで続くのかを、1歳ずつ確かめます。
3.1 厚生年金の平均月額:70歳代は、どのあたりで上下しているのか
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
3.2 国民年金の平均月額:70歳代は、どちらの向きに動いているのか
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
70歳代の10個の欄は、厚生年金が14万5583円から15万3115円、国民年金が5万8676円から6万1011円のあいだに並びます。厚生年金は60歳代の後半とほぼ重なる範囲にとどまり、国民年金は70歳の6万1011円を頭に、79歳の5万8676円まで1歳ごとに少しずつ下がります。
どの欄を取っても振れ幅は小さく収まっています。70歳代の方がご自身の目安を置くときは、同じ年齢の欄ひとつを見て終わりにするより、この範囲のどのあたりにいるかで捉えるほうが実感に近くなります。
4. 80歳代の一覧表では、厚生年金と国民年金の向きがどう分かれるのか
最後に80歳代です。ここでは2つの制度で動く向きが逆になります。
4.1 厚生年金の平均月額:80歳代で最も高くなるのはどの年齢か
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
4.2 国民年金の平均月額:80歳代はどこまで下がっていくのか
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
厚生年金は80歳の15万3729円から89歳の16万6767円まで、年齢とともに上がっていきます。10個の欄でいちばん高いのは89歳です。対して国民年金は5万7857円から5万9675円のあいだで動くにとどまり、80歳代を通してほぼ横ばいの形になっています。
ここまで並べてきたのは、いずれも各年齢の平均値です。実際に届く額は、厚生年金に何年入っていたか、その間の報酬がどれくらいだったか、国民年金の保険料をどこまで納めたかで一人ひとり変わります。表の数字は自分の額そのものではなく、位置を測るための物差しだと考えてください。
5. 住民税が課されている世帯は、年代ごとにどれくらいの割合なのか
年金の額を確かめたあと、暮らしの負担側で効いてくるのが住民税です。ここでは厚生労働省の『令和6年国民生活基礎調査』をもとに、年代ごとの住民税課税世帯の割合を並べます。
- 30〜39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯が含まれます。
※総数には、年齢不詳の世帯が含まれます。
※住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯が含まれます。
表を縦にたどると、30歳代から50歳代までは87%台から88%台で横並びです。ところが60歳代に入ると79.8%、65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%と、年代が進むにつれて課税されている世帯のほうが減っていきます。
年金の一覧表で自分に近い行を探したら、この割合の表でも同じ年代の行を見てみてください。受け取る額の目安と、住民税がかかっているかどうかの目安は、セットで見ておきたい2つです。
5.1 住民税が課されない世帯になると、どんな軽減が用意されているのか
住民税が課されない世帯にあたると、次のような支援を受けられる場合があります。
- 高額療養費制度で決まる医療費の月あたりの上限が、低い区分に置かれる
- 年金から特別徴収される介護保険料の段階が下がる
- 高額介護サービス費の上限も低く抑えられ、介護を使ったときの負担が軽くなる
- 物価高騰への対応などで実施される臨時の給付金の対象になりやすい
住民税がかかるかどうかという1本の線の内側と外側で、保険料や医療・介護の負担にこれだけの差が置かれているということです。
もっとも、どの軽減がどこまで効くかは、世帯の人数やほかの収入、そのときの制度の見直しによって細かく分かれます。ご自身の年金額と世帯の状況を持って、お住まいの市区町村の窓口で当てはまる区分を確かめていただくのが確実です。
6. 2026年の夏に届き始めた「公金受取口座登録の意向確認書」は、何を尋ねている書類なのか
年金の額と課税の状況を押さえたら、次は行政から届く書類への対応です。2026年の夏以降、口座の登録をめぐる新しい郵便物が加わりました。
6.1 返送しないままにすると、「みなし同意」で何が起きるのか
政府は給付金などを速やかに支給するため、マイナンバーと結びつけた「公金受取口座」の登録を進めてきました。その一環として、登録がまだ済んでいない年金受給者へ、2026年8月頃から順次、いま年金が振り込まれている口座を公金受取口座として登録してよいかを尋ねる書類が送られています。
気をつけたいのは、「登録しないでください」という回答を期限内に出さなかったときに、同意があったものとして扱われ、口座が登録される特例が置かれている点です。返事を出さないことが、そのまま登録の意思表示になります。
6.2 年金の口座を紐づけたくないときは、どの期限までに何をするのか
給付金は受け取りたいものの、日ごろ使っている年金の口座までマイナンバーと結びつけるのは避けたい。登録するなら別の口座にしたい。そう考えている方には、届いた書類を置いておくという選択肢がありません。
登録しない意思を示す手立ては、同封の案内に沿って「不同意申出書」を書き、届いてから45日以内に返送することです。
別の口座にしたい場合は、自動登録が動く前に、マイナポータルなどから自分で口座を登録しておくことになります。どちらの手続きも取らないまま期限を過ぎると、年金の振込口座がそのまま公金受取口座になります。
6.3 口座登録に便乗する詐欺では、どんな声のかけ方が想定されるのか
これだけ大規模な行政手続きが始まると、そこに便乗する詐欺も出てきます。「口座登録が済んでいないため年金が止まります」「手続きを代行するのでキャッシュカードを預かります」といった電話や訪問が起こりえます。
意向確認書をめぐる手続きで、ATMの操作を頼まれたり暗証番号を聞かれたりすることはありません。少しでもおかしいと感じたら、その場で応じず、警察や自治体の窓口へ相談してください。
7. 9月に届く「扶養親族等申告書」は、翌年の目安をどう変える書類なのか
年金を受け取っている方にとって、秋は来年の目安を左右する時期にあたります。なかでも「扶養親族等申告書」は、天引きされる所得税の額を決める書類です。
正式な名称は「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」です。翌年の所得税を計算する際に各種の控除を反映させるために使われ、対象となる方へは日本年金機構などから送付されます。
扶養している配偶者や親族がいる方は、記載して提出することで控除が適用され、源泉徴収される税額が抑えられます。
提出が遅れたり忘れたりしても、あとの支払いで再計算されたり、確定申告で精算できたりする道は残っています。それでも、封筒が届いた時点で返しておけば済む手続きです。
7.1 提出を忘れると、翌年2月の手取りはどうなるのか
提出しないままにすると、配偶者控除や扶養控除といった人的控除が反映されず、源泉徴収される所得税額が増えることがあります。それが表に出るのは、翌年2月の年金の支払いです。
払い過ぎた分は、確定申告(還付申告)を行えば取り戻せます。ただ、慣れない作業が1つ増えるのも確かですので、封筒を開けたその日に中身を確かめ、早めに返す形にしておきたいところです。
8. 年金の受取口座が止まったとき、家族はどこまで動けなくなるのか
年金の手続きや税金の管理をご本人だけで抱え込んでいると、いざというときに動けるのがご本人ひとりという状態になります。
最後に、口座が止まったときと、亡くなったあとの年金の扱いをみておきます。
8.1 認知症のときと亡くなったときで、口座の扱いはどう違うのか
口座の名義人が亡くなったことを金融機関が知ると、遺産分割のトラブルを防ぐために、その口座はただちに凍結されます。年金が振り込まれている口座も例外ではありません。凍結されれば入出金が止まり、水道光熱費などの自動引き落としも通らなくなります。
存命であっても、認知症などで意思の確認ができないと金融機関が判断すれば、不正利用の防止と財産保護の観点から、事実上の凍結状態に置かれます。ご家族であっても、生活費や介護の費用を引き出せなくなるリスクがあります。
もっとも、認知症を理由とする場合は、亡くなったときと扱いが同じではありません。年金の振込や公共料金の引き落としそのものは続くのが一般的です。ただ、現金の引き出しや窓口での手続き、口座の変更はできなくなりますので、判断ができるうちに手を打っておく必要があります。
8.2 「未支給年金」は、誰がどの窓口へ請求することになるのか
年金は、亡くなった月の分まで受け取る権利が認められています。支払いは偶数月(2・4・6・8・10・12月)の15日で、前月と前々月の2カ月分をまとめて後払いする形です。この仕組みのため、亡くなった時期とそれまでの受給の状況によっては、まだ支払われていない分が残ります。
残ったこの分が「未支給年金」です。凍結の前に故人の口座へ振り込まれてしまうこともあれば、未払いのまま残ることもあります。生計を同じくしていた3親等内の親族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹など)であれば、定められた優先順位に沿って、自分の名義で請求することができます。
窓口は年金事務所または街角の年金相談センターです。「受給権者死亡届(報告書)」とあわせて「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出、もしくは郵送することになります。
8.3 未支給年金を受け取った遺族には、税の面でどんな扱いが待つのか
受け取った未支給年金の扱いは、故人の遺産として相続税がかかるものではありません。受け取ったご遺族自身の一時所得として、所得税の対象になります。
一時所得には50万円の特別控除が置かれているため、未支給年金だけで税金が出るケースはまれです。ただし、生命保険の満期保険金など別の一時所得が同じ年にあれば合算され、課税される水準に届くことがあります。ご遺族自身の所得が増えたことで、住民税の課されない世帯という区分から外れてしまう場合もあります。相続の手続きには税の面から見た影響も伴う、という点をご家族で共有しておきたいところです。
9. 一覧表の見方と非課税の判定について、よくある質問を確かめる
9.1 Q1. 遺族年金は、住民税非課税世帯の判定に入るのか
A. 含まれません。遺族年金と障害年金は、法律によって非課税の所得と定められています。受け取っている額がいくらであっても、住民税の計算にも「住民税非課税世帯」の判定にも算入されません。判定に使われるのは、老齢年金など課税の対象になる所得だけです。
9.2 Q2. 非課税世帯に配られる給付金は、毎年続くものなのか
A. 続くとは限りません。非課税世帯へ向けた臨時の給付金は、物価高騰への対応など、その時々の経済対策として決められる一時的な措置だからです。これに対して、「年金生活者支援給付金」のように制度化されている支援であれば、要件を満たすかぎり継続して受け取れます。
9.3 Q3. 60歳代で自己破産をした場合、公的年金は差し押さえの対象になるのか
A. 公的年金(国民年金・厚生年金)を受給する権利については、国民年金法と厚生年金保険法が差し押さえを禁じています。自己破産をしたからといって、年金そのものが受け取れなくなることはありません。ただし、銀行の口座へ振り込まれたあとの現金は、差し押さえの対象になる可能性があります。
毎月の収支まで含めて確かめたい方に向けて、「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?60歳代以上の平均額と、無職世帯のリアルな家計収支を公開では、年金で暮らす無職世帯の家計の内訳を取り上げています。
10. 【独自試算】60歳代の前半と後半で、平均年金月額はどれだけ跳ねるのか
ここまで並べてきた一覧表のなかで、いちばん段差が大きいのが60歳代です。同じ「60歳代」というひとくくりの言葉のなかに、水準の違う2つのかたまりが入っています。前半(60歳から64歳)と後半(65歳から69歳)に分けて平均を出し、その差がどれくらいになるのかを確かめます。
前提は次のとおりです。
- 使う数字は、本文で並べた「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の1歳刻みの平均年金月額です。厚生年金の額には国民年金の分が含まれています
- 前半は60歳・61歳・62歳・63歳・64歳の5つ、後半は65歳・66歳・67歳・68歳・69歳の5つとし、それぞれ5つの平均月額を足して5で割った単純平均を出します
- 受給者数による重みづけはしていません。年齢ごとの人数が違えば結果も変わるため、ここでの数字は表の段差の大きさをつかむための目安です
- いずれも税や社会保険料が引かれる前の額面で、年額は月額を12倍して出します
- 金額はいずれも約・目安であり、将来受け取る額を保証するものではありません
まず厚生年金です。前半5つの平均は約9万3220円、後半5つの平均は約15万1718円になりました。その差は約5万8498円で、後半は前半の約1.63倍です。年額にすると、前半が約111万8642円、後半が約182万613円で、差は約70万1971円になります。
次に国民年金です。前半5つの平均は4万6899円、後半5つの平均は6万1245円で、差は1万4346円。後半は前半の約1.31倍です。年額では前半が約56万2788円、後半が約73万4940円で、差は約17万2152円になります。
同じ「60歳代」でも、前半と後半では平均がこれだけ動きます。そして跳ね方は制度によって違い、厚生年金の差(約5万8498円)は国民年金の差(1万4346円)の約4.1倍です。厚生年金は現役時代の報酬に応じた上乗せがあるぶん、65歳で本来の受け取りが始まったときの段差も大きくなります。
段差がどこにあるのかを、1歳の切れ目でも見ておきます。厚生年金は64歳の8万3901円から65歳の14万9862円へ、1年で約6万5961円、約1.79倍に跳ねています。国民年金は64歳の4万7896円から65歳の6万1240円へ、1万3344円、約1.28倍の動きです。60歳代の一覧表は、64歳と65歳のあいだで別の表につながっている、と考えて読むほうが目安として使いやすくなります。
ここで見ていただきたいのは平均額そのものより、「60歳代の平均」と言われたときにどちらのかたまりの話なのかで、5万円以上ずれることがあるという点です。前半の欄には繰上げ受給を選んだ方や特別支給の報酬比例部分だけを受け取っている方が含まれるため、65歳以降に本来の受け取りを始める予定であれば、目安として見るのは後半の欄になります。ここでの計算は単純平均で、受給者数の重みも実際の税や社会保険料も反映していません。ご自身の見込み額は、ねんきんネットや年金事務所で加入記録に基づいて確かめていただくのが確実です。なお、年金以外の資産で不足分を補うことを考える場合、投資信託などは値動きによって元本割れが起こることもあります。
11. 【監修者コメント・村岸理美】64歳と65歳の段差は、年齢ではなく制度の切り替わりを映している
今回の1歳刻みデータで注目していただきたいのは、62歳の厚生年金10万9323円から63歳の6万8758円へ、いったん4万円以上下がっている点です。年齢が上がると年金が減る、という意味ではありません。特別支給の老齢厚生年金は生年月日によって受給が始まる年齢が違うため、その年齢に達している方が多い欄ほど平均が高く出ます。厚生年金は報酬比例で決まりますので、欄ごとの上下は、制度の切り替わりと受け取りを始めた時期の違いが表に出たものとしてご覧ください。
数字の適用条件も補っておきます。この1歳刻みの平均月額が示しているのは令和6年度の実績で、冒頭に出てくる国民年金1.9%・厚生年金2.0%という改定率のほうは2026年度のものです。もとになっている時点が違いますので、平均月額に改定率を掛けてご自身の額を求める、という使い方には向きません。もう1つ、この記事の厚生年金の欄は基礎年金を含んだ額です。国民年金の欄と足すと二重に数えることになりますので、ご注意ください。
記事中の試算のように、60歳代を前半と後半に分けると、厚生年金の平均は約1.63倍、国民年金の平均は約1.31倍という違いが出ます。ここで補っておきたいのは、この計算が受給者数の重みを置かない単純平均だということです。年齢ごとの受給者数は同じではありませんし、繰上げ受給を選んだ方の割合も年齢によって違います。ご自身が前半の欄と後半の欄のどちら側に近いのかは、年齢ではなく、いつから受け取り始める予定かで決まります。
ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、一覧表は自分の額を当てはめる表ではなく、自分の位置を探すための表だということです。CFPとして家計相談を受けるなかでも、同じ年齢の欄の数字をそのまま前提に置いたまま老後の家計を組み立ててしまう例に出会います。ご自身の見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで加入記録から確かめられます。そこで出た額を持って、一覧表のどの幅に自分がいるのかを見ていただくとよいと思います。


