9月から10月にかけては、大学の総合型選抜や学校推薦型選抜の出願が動き出す時期で、進学にかかるお金を具体的な数字にして見積もりはじめるご家庭が増えます。私がお客様との相談の中で感じるのは、教育資金は「いくら貯めておくか」という話として持ち込まれることが多い一方で、進学のときに使える公的な支援のほうは、貯めた額ではなく前年の所得で対象が決まっているということです。ここでは兵庫県神戸市の基準で線がどこに引かれているのかを確かめたうえで、授業料の免除と給付型奨学金が4年間でどれだけの規模になるのかをみていきます。

徳田 椋
教育資金は貯めた額だけで足りるかどうかを判断するもの、と決めつける前に、進学のときに使える支援がどの条件で開くのかを先に見ておきましょう。物差しが2本あることが分かると、準備の順番が変わってきます。

なお、住民税非課税世帯を対象とした優遇措置と、年収いくらまでが対象になるのかという境界線に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説
【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説

1. 教育資金を用意する世帯にも効いてくる8つの優遇措置は、どこの負担を軽くするのか

世帯の全員の所得が一定の額に届かないとき、その世帯は住民税が課されない世帯として扱われ、公的な支援を受けられる立場になります。物価が上がった局面で配られた現金の印象が強く残っていますが、軽くなるのは一度きりの給付にとどまりません。毎月の保険料や、進学の費用のように年単位でまとまって出ていくお金の側にも、効いてくる仕組みが置かれています。

8つの優遇措置それぞれの中身と、年収いくらまでが対象になるのかという境界線については、【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説でくわしく解説しています。

教育費にも効いてくる住民税非課税世帯への優遇措置8つ1/4

住民税非課税世帯への優遇措置8つを一覧にした表

LIMO編集部作成

1.1 国民健康保険料の軽減は、保険料のどこに効いてくるのか

国民健康保険料のうち、所得の大小によらず世帯の人数や世帯の数に応じてかかる部分が応益割です。ここに次の軽減が置かれています。

  • 所得状況に応じて、応益分保険料(均等割・平等割)が「7割・5割・2割」のいずれかの割合で軽減されます

7割になるのか2割になるのかは、世帯の所得の水準で分かれます。この軽減は自治体が自動的に適用するため申請の必要がなく、年間で数万円の負担減につながる場合もあります。

1.2 介護保険料の減額は、どの世代に向けたものなのか

  • 65歳以上の第1号被保険者が対象となり、保険料が減額されます

対象になる年齢は全国で同じですが、軽減される割合は自治体ごとに異なります。子どもの進学と親世代の介護保険料が同じ時期に重なるご家庭では、家計全体としてここも見ておきたい項目になります。

1.3 国民年金保険料については、納めない期間をどう扱うことになるのか

  • 全額免除、一部免除、または納付猶予といった措置を受けることが可能です

こちらは申請してはじめて動く仕組みです。手続きを踏んでおけば、将来の年金額に一部が反映されるという点で、未納のまま置いておく場合と差が出てきます。

1.4 高額療養費の自己負担上限額は、どこまで低く設定されるのか

1カ月にかかった医療費のうち、自分で負担する上限の額が、低いほうの区分で設定されます。課税されている世帯と同じ治療を受けても、医療費がかさんだ月に手元から出ていく額は、その分だけ小さくとどまります。

1.5 NHK受信料が免除されるのは、全額と半額のどちらなのか

免除には全額と半額の2種類が用意されています。主な対象になるのは、世帯に障害のある方がいるケースや、生活保護を受けているケースなどです。

1.6 0歳から2歳の保育料は、3歳からの無償化とどうつながるのか

0歳から2歳のクラスに通う子どもの保育料が無料になります。3歳からの無償化とつなげると、小学校に上がるまでの子育てにかかる費用を大きく抑えられる形です。教育にかかるお金は、入り口の側にもこうした仕組みが置かれているわけです。

1.7 大学など高等教育の修学支援では、授業料と奨学金がどう扱われるのか

大学や専門学校に納める授業料と入学金が免除され、あわせて返す必要のない給付型の奨学金が支給されます。お金の事情で進学の道を閉ざしてしまうことがないように置かれた仕組みで、この記事が軸にするのもここです。免除と給付が同時に働くため、年単位でみたときの規模は小さくありません。

1.8 自治体が独自に行う支援には、どんな種類があるのか

支援の中身は市区町村ごとに決められていて、水道の基本料金を免除するところ、指定のごみ袋を無料で配るところ、公共交通機関の無料乗車券を交付するところなどがあります。どの支援がどれだけの規模で用意されているのかは、住んでいる地域によって差があります。

ここまでを読んで高齢の世帯に向けた仕組みだと受け取られたかもしれませんが、そうとは限りません。勤め先を離れている方、育児休業に入って一時的に所得が下がった世帯、収入が一定以下のフリーランスの方も当てはまることがあります。子育て世代にとって見落としやすいのが、遺族年金と障害年金の数え方です。これらは非課税所得という区分に入るため、金額の多い少ないにかかわらず、住民税の判定では所得として数えられません。受け取っているという理由だけで対象から外れると考え、確かめないままにしている方もいらっしゃいます。

徳田 椋
8つのうち、手続きの要らないものと、申請してはじめて届くものが混ざっています。教育資金の準備を始めるときに、自分の世帯がどれに当たるのかを一覧で押さえておくと、あとで慌てずに済みます。

2. 教育費の支援の入り口になる「住民税非課税世帯」とは、どういう状態を指すのか

ここからは、判定そのものの中身に入ります。住民税がどう組み立てられているのかを先に押さえてから、どの状態を非課税と呼んでいるのかを確かめていきます。

2.1 「均等割」と「所得割」は、それぞれ何を対象にかかるのか

個人住民税を組み立てる均等割と所得割の2層2/4

個人住民税が均等割と所得割の2つで構成されていることを示した図

出所:総務省「個人住民税」

住民税は、住まいのある都道府県と市区町村に納める地方税にあたり、地域の公共サービスを維持する財源として使われています。個人にかかる住民税は、次の2つの要素で組み立てられています。

  • 均等割:所得の金額にかかわらず、一定以上の所得がある方に一律で課される税金
  • 所得割:前年の所得金額に応じて課される税金

この2つがそろって課されていない状態を住民税非課税と呼び、世帯の構成員がひとり残らずその状態にあるとき、その世帯が住民税非課税世帯にあたります。判定の単位が世帯である以上、働いている人が1人でも線を越えれば、世帯としては外れることになります。進学の支援が世帯単位で判断されるのは、この組み立てがそのまま使われているためです。

なお、所得割だけが非課税になるという中間の状態もあります。この場合に給付金などの対象へ含めるかどうかは自治体の判断に任されているため、お住まいの市区町村で確かめておきたいところです。

3. 住民税が非課税になる条件は3つ、進学を控えた世帯はどこを見ることになるのか

では、どんなときに住民税が課されなくなるのでしょうか。次に挙げる3つのうち、いずれかに当てはまる場合です。

  1. 生活保護法による生活扶助を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親のいずれかに該当し、前年の合計所得金額が135万円以下である
  3. 前年の合計所得金額が、居住する市区町村の定める基準額以下である

このうち1と2の内容は全国どこでも同じですが、3の基準額だけは市区町村が個別に定めています。子どもの進学を控えた世帯が見ることになるのは、多くの場合この3番目です。前年の合計所得金額がいくらで、住んでいる市区町村の基準額がいくらなのか。この2つの数字の関係だけで決まります。

4. 神戸市の例で見る「年収の境界線」

3番目の基準額は自治体ごとに設定されています。ここでは兵庫県神戸市のケースをもとに説明します。

神戸市で市県民税がかからない人の所得基準3/4

神戸市で住民税が課税されない所得額の基準を示した表

出所:神戸市「住民税(市県民税)がかからない人」

基準額を出す式は次のとおりです。

35万円 ×(本人 + 同一生計配偶者(※)+ 扶養親族の数)+ 10万円 + 21万円

式の末尾にある21万円が加算されるのは、同一生計配偶者か扶養親族がいる世帯に限られます。同一生計配偶者とは、生計を一つにしている配偶者のうち、前年の合計所得金額が58万円以下の方のことです。

教育資金の話としてこの式を読むと、扶養している子どもの人数が増えるほど基準額が上に動く、という関係が見えてきます。本人だけなら35万円と10万円で45万円ですが、扶養する子どもが1人いれば35万円が2人分になり、21万円も加わって101万円になります。式に並んでいるのは人数と所得だけで、貯めてきた学資の残高はどこにも出てきません。

5. 【神戸市の例】給与収入だけの世帯では、非課税になる年収の線はどこに引かれるのか

基準額は所得の形で示されているため、手取りを計算する前の年収に置き換えておきます。収入から差し引かれる額は給与と年金で違うので、同じ所得でも、線が引かれる年収の位置は収入の種類によって変わります。

収入の種類別にみる神戸市の住民税非課税世帯の目安4/4

神戸市で住民税非課税世帯に該当する世帯を収入の種類別に示した表

出所:神戸市「いくらまでの収入なら住民税(市県民税)が課税されませんか?」

扶養する家族がいない世帯では、給与と年金でどこが境目になるのか

合計所得金額が45万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみの場合:年収110万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年収155万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年収105万円以下

子どもや配偶者を扶養している世帯では、境目はどこまで動くのか

合計所得金額が101万円以下の方が対象となります。

  • 給与収入のみの場合:年収166万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年収211万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年収171万3334円以下

子どもを扶養して給与収入だけで暮らしている世帯なら、年収166万円以下が神戸市での目安です。扶養する人がいない場合の110万円と比べると、線は56万円分だけ上に動きます。あとで出てくる試算では、この166万円を起点にして、線の内側にいる世帯が進学のときにどれだけの支援を受けられるのかをみていきます。

徳田 椋
線の位置は住んでいる市区町村で変わります。神戸市の数字は一例ですので、まずはご自身の市区町村の基準額を調べたうえで、手元の課税証明書と見比べてみましょう。

6. 【1つ目の見落とし】収入が少ない年こそ、住民税の申告が支援の入り口になっている

ここからは、受けられるはずの支援を取りこぼしてしまう場面を5つみていきます。1つ目に挙げるのは、手続きを踏んでいないために生まれる空白です。

給付金のニュースを見て、去年は収入がなかったのだから黙っていても振り込まれるだろう、と受け止める方がいらっしゃいます。自治体が住民の所得を把握する経路は、勤め先が出す給与支払報告書と、年金機構から届く情報です。この経路にまったく乗っていない状態が続くと、収入があったのかなかったのかを行政の側で確かめられず、非課税世帯としての認定や処理が滞るおそれがあります。所得と課税の状況が固まっていなければ、支給の判定もその場では進まず、手続きが遅れたり、あらためて確認の連絡が入ったりすることになります。

6.1 【備え】0円の申告を済ませて、証明書を出せる状態にしておく

収入がゼロだった年でも、どなたかの扶養に入っているのでなければ、お住まいの自治体へ住民税の申告をしておくことが勧められています。所得が無いという事実を公的な形で残せるので、国民健康保険料や介護保険料が実態に合った額に整うほか、非課税世帯を対象とした給付の案内や、その他の手続きも滞りにくくなります。進学の支援を申し込むときには課税・非課税証明書の提出を求められる場面があり、申告がないとその証明書自体を出してもらえないことがあります。

7. 【2つ目の見落とし】祖父母を扶養に入れたことで、その世帯の給付が止まることがある

年金だけで暮らす親がひとり世帯で、その年金収入が一定の基準に収まっていれば、住民税非課税世帯として10万円などの臨時給付金を受け取れる位置にいます。基準は自治体ごとに置かれていて、東京23区などの場合は155万円以下です。ところが、その手前に見落とされやすい条件があります。

働いている世代の子どもが、仕送りをしているからという理由で親を税法上の扶養親族として届け出ていると、親の世帯に給付金は支給されません。給付金の制度では、たとえ世帯の全員が非課税であっても、その世帯にいるのが住民税を課されている別の親族の扶養に入っている人だけであれば、一律で支給の対象から外すと決められているためです。子どもの側では手取りを増やすつもりで進めた手続きが、親の側の受給を止める結果につながります。

【備え】節税で軽くなる税額と、止まってしまう給付を家族全体で足し引きする

親を扶養に入れて子どもの所得税や住民税を軽くするのか、扶養から外して親自身が給付を受け取る側に回るのか。この2つを、家族を一つの単位として見たときにどちらの手取りが大きいかで比べておくことが大切です。教育資金の準備で扶養控除を意識している時期は、この比較そのものが抜けやすい場面でもあります。

8. 【3つ目の見落とし】学資の準備でiDeCoや控除を積み増しても、判定に使う所得は動かない

税金を軽くする方法としてよく知られているのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金や医療費控除、生命保険料控除です。ここから一歩進めて、控除を積み上げれば非課税世帯の側に入れるのではないか、と考える方がいらっしゃいます。ただ、この2つは別の仕組みの上に乗っています。

境界線の判定に使われるのは、前年の「合計所得金額」や「総所得金額等」と呼ばれる数字です。この数字が出てくるのは、iDeCoの掛金や医療費控除、生命保険料控除といった所得控除を差し引くよりも手前の段階になります。つまり控除をどれだけ積み上げても、判定で見られる数字そのものには届きません。教育資金の準備と並行して税を軽くする工夫を進めていても、進学の支援の対象になるかどうかという判定は、その工夫とは別の場所で決まっているわけです。

【備え】所得を計算する段階で引かれる控除と、そのあとで引かれる控除を分けて見る

引かれる場所には、前と後ろの2種類があります。前で引かれるのが給与所得控除や公的年金等控除、青色申告特別控除などで、収入から所得を計算する段階のものです。後ろで引かれるのが医療費控除や生命保険料控除、iDeCoの掛金といった所得控除で、これは合計所得金額を出したあとに登場します。判定に届くのは前者だけですから、非課税世帯に入ることを目的に出費や掛金を無理に増やすという判断にはつながりません。

9. 【4つ目の見落とし】学資として積み立てたお金を受け取った年に、判定が動くことがある

ふだんは非課税の線の内側にいた世帯が、一度きりのまとまった入金をきっかけに基準の外へ出てしまうことがあります。たとえば、生命保険を解約して解約返戻金を受け取った年や、長く払い込んできた養老保険の満期保険金が入ってきた年です。これらは受け取った年の一時所得として扱われます。

一時所得は、受け取った総額からこれまでの払込保険料と最高50万円の特別控除を差し引き、その残額をさらに1/2にした金額が所得としてカウントされます

この計算後の所得と公的年金などの他の所得を合わせた合計額が線を超えてしまうと、翌年度の住民税などが課税され、課税世帯に変わります。進学の費用にあてるつもりで積み立ててきたお金が、受け取った年の所得として数えられ、その翌年度の判定を動かすという順序です。受け取りの前に「(受取額 - 払込保険料 - 50万円) × 1/2」を計算し、ほかの所得を足したときに線をまたがないかを見ておきます。額が大きいときは、一時金でまとめて受け取る形と年金の形で分けて受け取る形とで、税の負担や保険料がどう変わるのかを、保険会社と自治体の窓口それぞれに事前に確かめておきたいところです。

徳田 椋
お金を用意する話と、その年の所得がどう数えられるかという話は、別々の窓口で決まっています。受け取りの手続きに入る前に、この2つを分けて確かめる時間を取っておきましょう。

10. 【5つ目の見落とし】進学に合わせて住まいを移した年は、申請先と基準日がずれる

年の途中で住まいを移すと、非課税世帯向けの給付金では、どこへ申し込むのかと、いつの状態で判断されるのかが分かれます。課税か非課税かという判定そのものは、原則としてその年の1月1日に住民票を置いていた自治体が行います。一方、給付金を実施して申請を受け付けるのは、その給付金ごとに定められた基準日の時点で住んでいる市区町村です。

基準日より前に移っていれば、申し込む先は移った先の自治体です。ただ、その自治体は前に住んでいた自治体へ課税の状況を問い合わせることになるため、ずっと同じ場所に住み続けている方と比べて、手元に届くまでに時間がかかるケースがあります。子どもの通学に合わせて住まいを移した年は、この形に当たりやすくなります。

【備え】住まいを移す前後で、抜けやすい3つの手続きを押さえる

自治体からのお知らせや確認書を取りこぼさないために、次の3つは早めに済ませておきます。

  • 郵便局での転居・転送サービスの継続
  • 転居に伴う住民票異動手続きの完了
  • 引越し前後の自治体における独自給付施策の確認

11. 進学の手続きを進める前に、自分の世帯が非課税かどうかをどう確かめるのか

インターネット上に置かれている判定ツールが返すのは、あくまで目安の数字です。自分の世帯がどちら側にいるのかをはっきりさせるには、公的に発行された書類にあたることになります。

11.1 決定通知書の税額欄と、窓口で取れる課税証明書のどちらで確かめられるのか

  • 住民税の決定通知書を見る: 毎年6月頃に届く通知書で、住民税額(所得割・均等割)の欄が「0円」またはアスタリスク等で記載されていれば非課税です
  • 課税証明書(非課税証明書)を取得する: お住まいの市区町村の窓口や、マイナンバーカードを使ったコンビニ交付で最新年度の証明書を取得し、税額が0円であることを確認します

進学の支援を申し込む場面では、この課税証明書の提出を求められることがあります。6月ごろに届く通知書を捨てずに残しておくと、あらためて窓口へ足を運ぶ手間が減ります。

12. 教育資金の準備と支援の判定は、それぞれ何を見て進めていくことになるのか

住民税非課税世帯向けの制度は、医療や介護、日々の生活費の負担を大きく軽くしてくれる支えです。進学の場面では、授業料の免除と返済の要らない給付型奨学金という形で、年単位でまとまった金額として効いてきます。

ただし、収入が低ければ無条件で自動的にすべての恩恵が受けられるわけではありません。適切に申告を行って受給資格を得ること、家族の扶養控除の適用状況を確認すること、そして判定の基準となる所得の変動に注意すること。この3つが、教育資金の準備とは別にやっておく作業になります。

貯めた額を数える物差しと、前年の所得で判定される物差し。教育資金の準備では、この2本を並べて持っておくことが大切です。

13. 教育資金と非課税の判定について、よく寄せられる4つの質問を確認

制度を使おうとする段階になると、将来への影響や手元の資産の扱いについて疑問が出てきます。ここでは、寄せられることの多い4つを取り上げます。

13.1 Q1. 国民年金保険料を免除にした期間は、将来の年金にどう効いてくるのか

免除の制度を使った期間は、全額を納めた期間と比べると、将来受け取る年金額は少なくなります。ただし、手続きをせずに未納のまま置いておく場合と比べれば、条件はよくなります。全額免除が承認された期間については、保険料を1円も払わなくても、税金でまかなわれる分として2分の1が将来の年金額に反映されるためです。未納のままにした期間には、この反映がありません。加えて、万が一のときに障害年金や遺族年金を受け取れなくなるという別のリスクも生じます。なお、家計に余裕ができたときには、10年以内であればさかのぼって納めることができ、受給額を満額に近づけられます。

13.2 Q2. 学資として貯めた預貯金が多くても、非課税世帯に当たることはあるのか

当たります。住民税が課されるかどうかは前年の所得で決まるので、いま手元にいくら置いてあるかは、そのままでは判定に響きません。住民税はその年にどれだけ稼いだかというフローにかかる税で、どれだけ持っているかというストックを測る税ではないためです。学資として数千万円を預貯金や不動産の形で持っていても、前年の所得が自治体の基準を下回っていれば、住民税非課税世帯として扱われます。気をつけたい点は2つあります。1つは、預貯金の利子や株式の配当金、売った際の利益などが一定額を超え、確定申告に含めた場合です。これらは所得として数えられ、基準をまたいでしまうことがあります。もう1つは、自治体が独自に行う給付で、所得の制限に加えて預貯金の額を条件に置くケースがまれにあることです。

13.3 Q3. インターネットの判定ツールだけで、支援の対象かどうかを決められるのか

ツールが返すのは簡易的な目安にとどまります。自治体ごとの基準の違いや、特殊な控除がどう効いているかまでは反映しきれませんので、最後の判断は、市区町村が発行する課税証明書などにあたって確かめることになります。

13.4 Q4. 年度の途中で世帯の状況が変わったとき、非課税の判定はいつ見直されるのか

判断のもとになるのは、毎年1月1日時点の世帯の状況と前年の所得です。年度の途中で世帯主が亡くなり、世帯の構成が変わったとしても、その年度の課税の状況はそのまま据え置かれます。切り替わるのは翌年度からで、新しい世帯主の前年所得をもとにあらためて判定されます。ただし臨時給付金などは、これとは別に基準日が決められているため、自治体の窓口で確かめておく必要があります。

徳田 椋
貯めた額は判定に入らない一方で、貯め方によっては受け取った年の所得として数えられることがあります。教育資金の置き場所を決めるときは、使う時期と受け取り方まで含めて考えておきましょう。

医療費の自己負担が世帯単位でどこまで抑えられるのかを、暮らしの支出と並べて見ておきたいときは、【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法が参考になります。

14. 【独自試算】給付型奨学金を年91万円、4年間受けたときの総額と授業料の免除分はどこまで積み上がるのか

高等教育の修学支援は、授業料などの免除と給付型奨学金の2本立てで効いてきます。では、線の内側にいる世帯が大学の4年間で受け取る支援は、合わせてどれだけの規模になるのでしょうか。数字にして並べてみます。

前提は次のとおりです。

  • 神戸市の基準を使います。子ども1人を扶養し、給与収入だけで暮らす世帯で、前年の年収は166万円(合計所得金額101万円)とし、非課税の線である101万円以下の内側にいるものとします
  • その子どもが大学に4年間通うものとします
  • 給付型奨学金は、割り当てられた条件に合わせて年91万円が支給される場合を仮定します
  • 授業料の免除額は、私立大学を想定して年70万円と仮定します。あわせて、国公立大学を想定した年54万円の場合も並べます
  • 入学金の免除、通学のための交通費、住まいにかかる費用は含めません
  • ここに置いた支援額・免除額はいずれも仮定の数字で、実際に支給される額は進学先の種類や通学の形、世帯の区分によって変わります。約・目安として示すもので、保証ではありません

まず、給付型奨学金だけを積み上げます。年91万円を4年間受け取ると、91万円 × 4 = 364万円です。返済が要らないお金として、この364万円がそのまま手元に入る計算になります。

次に、授業料の免除分を足します。免除額を年70万円と置くと、70万円 × 4 = 280万円です。給付型奨学金の364万円と合わせると、364万円 + 280万円 = 644万円になります。1年あたりに直すと91万円 + 70万円 = 161万円で、月に均すと644万円 ÷ 48カ月 = 約13万4000円という規模です。

免除額の置き方を変えて、もう1本並べておきます。国公立大学を想定して年54万円とすると、54万円 × 4 = 216万円で、給付型奨学金と合わせて364万円 + 216万円 = 580万円になります。進学先の種類によって、支援の合計は580万円から644万円のあいだで動くという形です。

この金額を、預金で用意する場合と並べてみます。子どもが0歳のときから18歳まで、利回りを見込まずに毎月同じ額を積み立てるとすると、期間は18年 × 12カ月 = 216カ月です。644万円を用意するには644万円 ÷ 216カ月 = 約2万9800円、580万円なら580万円 ÷ 216カ月 = 約2万6900円を毎月続ける計算になります。18年かけて積み上げる額と同じ規模のものが、判定の線の内側にいるかどうかで動いているわけです。

ここで見ていただきたいのは、644万円という数字の大きさそのものではありません。この支援を開く鍵が、貯めた額ではなく前年の合計所得金額の側に置かれている、という点です。神戸市の例では、子ども1人を扶養して給与収入だけの世帯なら年収166万円が境目でした。学資として積み上げた預貯金がいくらあっても、この166万円という線は動きません。逆に、線の外に出れば、この試算で置いた満額の支援がそのまま続くとは限らなくなります。制度には所得に応じた段階が設けられているため、実際にいくら支援されるのかは世帯の状況によって変わります。

教育資金を運用で用意するか預金で置くかという問いも、この2本の物差しの上で考えることになります。運用で用意する場合は値動きによって元本割れが起こることもありますし、預金で置く場合は物価が上がった局面で目減りする面があります。どちらを選ぶにしても、支援の対象になるかどうかは前年の所得で決まりますので、まずはお住まいの市区町村の基準額と、進学先の制度の区分を、税の窓口と学校の窓口でそれぞれ確かめていただくのが確実です。

15. 【監修者コメント・村岸理美】年収166万円と合計所得金額101万円が指しているのは、同じ状態

村岸 理美

今回の数字のなかで注目していただきたいのは、年収166万円と合計所得金額101万円が同じ状態を指しているという対応関係です。記憶に残りやすいのは166万円という年収のほうですが、制度が見ているのは101万円という所得の側です。給与収入から給与所得控除が差し引かれたあとの数字ですので、副業や一時的な収入が加わると、年収の見た目以上に所得が動くことがあります。

記事中の試算のように、支援の規模は4年で数百万円になります。ここで補っておきたいのは、166万円という目安が神戸市の基準を使い、しかも子ども1人を扶養して給与収入だけの世帯に限った数字だということです。扶養する人がいない世帯なら年収110万円以下、65歳以上で年金収入だけなら211万円以下と、条件によって位置が動きます。基準額そのものも市区町村ごとに定められていますので、この166万円をそのままご自身の世帯に当てはめることはできません。

あわせて確かめておきたいのが、試算で置いた年91万円という給付型奨学金の額です。高等教育の修学支援は、進学先が国公立か私立か、自宅から通うか自宅の外から通うか、そして世帯の所得がどの区分に入るかで支給される額が変わる仕組みになっています。授業料の免除額も同じで、記事の70万円や54万円は目安として置いた数字です。CFPとして家計相談を受けるなかでも、支援の額を1つの数字で覚えてしまい、実際に届いた通知との差に戸惑われる方にお会いしてきました。ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、支援の額を1つに決めつけてしまう前に、いまの合計所得金額が線に対してどの位置にあるのかを確かめておくことが大切だということです。6月ごろに届く決定通知書か課税証明書を手元に置いたうえで、進学先の窓口と市区町村の税の窓口で、それぞれの条件を確かめてみましょう。