公的年金は偶数月の15日に振り込まれます。来月10月15日もその支給日にあたり、通帳の数字を見ながら自分の年金の水準が気になる時期です。

厚生年金の平均月額としてよく引かれるのは15万289円という数字ですが、これは全国をならした値です。都道府県別に見ると、いちばん高いところといちばん低いところで月4万円以上の開きがあります。

この記事では、厚生年金の平均月額と受給額の分布を確認したうえで、都道府県別のランキングを47都道府県すべて並べます。国民年金の都道府県別平均と、なぜ地域差が生まれるのかもあわせて見ていきましょう。

中島 卓哉
都道府県の差と聞くと、住む場所で年金額が変わるように受け取られがちですが、そうではありません。差が出る理由は計算式のほうにあります。まずは全国の平均と、そこからどれだけ幅があるのかを順に見ていきます。

なお、厚生年金の平均年金月額と受給額の分布については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント

1. 厚生年金の平均は月15万289円|男女で5万8554円の開き

会社員や公務員、またパートで特定適用事業所(※1)に働き一定要件を満たす人は、老齢厚生年金と老齢基礎年金(国民年金)の併給となります。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の全受給権者(※2)の平均年金月額は15万289円でした。

ただし、男女差・個人差があり、実際に受け取る金額は一人ひとり違います。

※1 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介

厚生年金の平均年金月額と月額階級別の受給権者数1/3

厚生年金の平均年金月額と月額階級別の受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

男女別の内訳は次のとおりです。

【平均年金月額】

  • 全体 15万289円
  • 男性 16万9967円
  • 女性 11万1413円

※国民年金部分を含む

出所:【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!

男性16万9967円に対して女性11万1413円で、差は5万8554円です。全体の平均15万289円は、この2つの間にある一点ということになります。

1.1 受給額は1万円未満から30万円以上まで分かれている

階級ごとの人数を見ると、幅の広さがさらにはっきりします。

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

このように、厚生年金は幅広い受給額層に分布しています。そして、平均年金月額には「都道府県差」もあります。

中島 卓哉
ご相談の場では、平均額を聞いて安心される方と、不安になる方に分かれます。ただ、階級ごとの人数まで見ていただくと、どちらの受け止め方も一つの数字に引きずられていたと気づかれることが多いところです。自分がどのあたりに入るのかは、ねんきん定期便の見込み額で確かめられます。

2. 平均年金月額が高い都道府県・低い都道府県|1位と47位で月4万2328円の差

厚生年金の平均受給額は、都道府県によって差があります。平均年金月額が「多い都道府県」と「少ない都道府県」はどこなのでしょうか。

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、ランキング形式で見ていきましょう。

2.1 平均年金月額が高い都道府県【上位5都県】

  • 神奈川県:17万457円
  • 千葉県:16万5103円
  • 東京都:16万3892円
  • 奈良県:16万2292円
  • 埼玉県:16万1752円

2.2 平均年金月額が低い都道府県【下位5県】

  • 青森県:12万8129円
  • 沖縄県:12万8819円
  • 宮崎県:12万9224円
  • 秋田県:12万9503円
  • 山形県:13万1169円

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額2/3

都道府県別の老齢年金受給者数と平均年金月額の一覧

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

2.3 47都道府県の平均年金月額

  • 北海道:14万1069円
  • 青森県:12万8129円
  • 岩手県:13万2943円
  • 宮城県:14万4920円
  • 秋田県:12万9503円
  • 山形県:13万1169円
  • 福島県:13万6880円
  • 茨城県:15万2963円
  • 栃木県:14万9631円
  • 群馬県:14万8666円
  • 埼玉県:16万1752円
  • 千葉県:16万5103円
  • 東京都:16万3892円
  • 神奈川県:17万457円
  • 新潟県:13万8683円
  • 富山県:14万4644円
  • 石川県:14万1792円
  • 福井県:14万787円
  • 山梨県:14万4665円
  • 長野県:14万4668円
  • 岐阜県:14万9910円
  • 静岡県:15万1960円
  • 愛知県:16万766円
  • 三重県:15万1949円
  • 滋賀県:15万4456円
  • 京都府:15万1483円
  • 大阪府:15万6272円
  • 兵庫県:15万9086円
  • 奈良県:16万2292円
  • 和歌山県:14万5933円
  • 鳥取県:13万3459円
  • 島根県:13万3918円
  • 岡山県:14万6429円
  • 広島県:15万745円
  • 山口県:14万8166円
  • 徳島県:13万4131円
  • 香川県:14万4026円
  • 愛媛県:14万301円
  • 高知県:13万2202円
  • 福岡県:14万5822円
  • 佐賀県:13万4191円
  • 長崎県:13万6825円
  • 熊本県:13万2740円
  • 大分県:13万6507円
  • 宮崎県:12万9224円
  • 鹿児島県:13万3343円
  • 沖縄県:12万8819円
  • その他:13万3788円

1位の神奈川県17万457円と47位の青森県12万8129円では、月額の差は4万2328円です。年間に直すと50万7936円になりますので、地域ごとの開きは小さいとはいえません。

もちろん、厚生年金の受給額は住んでいる場所で決まるわけではありません。この差は、厚生年金の受給額がどう決まるかに理由があります。

3. 厚生年金の受給額は報酬と加入期間で決まる

厚生年金の受給額の計算には、現役時代の報酬(給与や賞与)と年金加入期間が使われるため、個人差が出やすいしくみです。

厚生年金の報酬比例部分は、次の計算式の合計で決まります。

報酬比例部分の計算方法3/3

厚生年金の報酬比例部分の計算式

出所:日本年金機構 年金用語集「は行 報酬比例部分」

  • A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
  • B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数

計算に入るのは報酬と加入期間だけで、住所は含まれていません。それでも都道府県別の平均に差が出るのは、その地域で働いてきた人たちの報酬水準と働き方の傾向が、結果として反映されるためです。

都市部では賃金水準が高い傾向があり、地域によって自営業や共働き世帯の比率も異なります。こうした現役時代の働き方の違いが、平均年金月額の差として表れているのです。

4. 国民年金の都道府県別平均|5万円台から6万円台に収まる

国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、保険料を納付した月数で決まります。そのため、厚生年金に比べて個人差や男女差、地域による格差は大きくありません。

参考として、国民年金の都道府県別平均年金月額を見てみましょう。

4.1 都道府県別「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額

  • 北海道:5万8435円
  • 青森県:5万7137円
  • 岩手県:6万720円
  • 宮城県:5万9532円
  • 秋田県:5万9147円
  • 山形県:6万827円
  • 福島県:5万9922円
  • 茨城県:5万9395円
  • 栃木県:5万9544円
  • 群馬県:6万564円
  • 埼玉県:5万9007円
  • 千葉県:5万9354円
  • 東京都:5万8313円
  • 神奈川県:5万9342円
  • 新潟県:6万1957円
  • 富山県:6万2989円
  • 石川県:6万1923円
  • 福井県:6万2290円
  • 山梨県:5万9275円
  • 長野県:6万2030円
  • 岐阜県:6万1248円
  • 静岡県:6万1150円
  • 愛知県:6万34円
  • 三重県:6万1403円
  • 滋賀県:6万1172円
  • 京都府:5万8206円
  • 大阪府:5万7122円
  • 兵庫県:5万9138円
  • 奈良県:5万8961円
  • 和歌山県:5万7784円
  • 鳥取県:6万1502円
  • 島根県:6万2287円
  • 岡山県:6万1564円
  • 広島県:6万991円
  • 山口県:6万1120円
  • 徳島県:5万8797円
  • 香川県:6万1718円
  • 愛媛県:5万9792円
  • 高知県:5万7926円
  • 福岡県:5万8300円
  • 佐賀県:6万1084円
  • 長崎県:5万8617円
  • 熊本県:5万9907円
  • 大分県:5万8397円
  • 宮崎県:5万9234円
  • 鹿児島県:5万9659円
  • 沖縄県:5万4217円
  • その他:3万785円

国民年金の受給額は5万円から6万円台が中心で、全国平均は5万9431円です。厚生年金で4万円を超えていた都道府県の差が、国民年金では1万円に届きません。保険料が定額で、納付した月数だけが額を決めるためです。

この金額だけで老後の生活費をまかなうのは、現実的に厳しいと感じる人も多いでしょう。厚生年金の上乗せがない自営業者やフリーランスの方などは特に、現役時代から計画的な資産形成を始めることが大切です。

5. 【独自試算】神奈川と青森の月4万2328円の差は、受給期間でいくらになるか

都道府県別の差を、受け取り続ける期間に置き換えてみます。前提は次のとおりです。

  • 1位の神奈川県17万457円と47位の青森県12万8129円の差、月4万2328円を使う
  • 年金額の改定や税・社会保険料は考えない
  • これは都道府県ごとの平均どうしの差であり、個人の受給額の差ではない

5.1 受給期間別にみた累計の差

  • 1年:50万7936円
  • 15年:761万9040円
  • 20年:1015万8720円
  • 25年:1269万8400円

65歳から20年受け取ると、累計で1000万円を超える差になります。月4万2328円という金額は、ひと月だけを見れば大きく感じないかもしれませんが、受け取る期間の長さが効いてきます。

ただし、これは平均どうしを比べたものです。同じ都道府県のなかにも1万円未満から30万円以上までの幅がありますので、住んでいる場所から自分の額を推し量ることはできません。使い方としては、地域の平均に自分を当てはめるのではなく、ねんきん定期便の見込み額を確かめる材料と考えていただくのが確実です。

中島 卓哉
月あたりの差は小さく見えても、受給期間をかけると桁が変わります。逆にいえば、上乗せを用意するときも同じで、毎月いくら足せるかが積み上がって効いてきます。次のページでは、その上乗せをどう考えるかについてお伝えします。