5. 「もしものとき」に困りやすい財産管理を洗い出す
毎日の生活費をどうするか、医療費や介護費用をどこから支払うか、住まいに関する契約をどうするかなど、本人が生活を続けるためのお金の管理が必要になります。
だからこそ、成年後見制度を検討するときには、「後見人を誰にするか」だけでなく、「将来、どんな場面でお金の管理が必要になりそうか」まで考えておくことが大切です。
5.1 毎月の生活費をどこから支払うのか
年金などの収入から生活費を支払っている場合でも、本人が銀行の手続きや支払いをできなくなれば、家族が対応に困る可能性があります。
「親のお金なのだから、子どもが代わりに引き出せばいい」というわけにはいきません。本人の判断能力が低下した後は、金融機関での手続きにも制約が生じる場合があります。
5.2 医療費・介護費用が必要になったとき誰が対応するのか
医療や介護の支出が増えたとき、「どの口座から支払うのか」「誰が金融機関とのやり取りをするのか」を決めていなければ、家族が急いで対応することになります。
成年後見制度では、財産管理に加えて、介護・福祉サービスの利用契約なども支援の対象になります。こうした制度の役割を知っておけば、いざというときに「何をどこに相談すればいいのか」も考えやすくなります。
6. 成年後見制度だけに頼らず、元気なうちにできる財産整理
一方、すべての家庭が今すぐ成年後見制度を利用する必要があるわけでもありません。まずは財産を整理し、家族と情報を共有し、必要になったときに相談できる場所を知っておくことも大切です。
そのうえで、「自分で後見人を選びたい」という希望があるなら、判断能力があるうちに任意後見を検討するという選択肢があります。
6.1 財産一覧を作って「見える化」する
預貯金、証券、保険、不動産、貸金庫などについて、どこに何があるのかを簡単にまとめておきます。通帳や保険証券の保管場所も、あわせて家族に伝えておくと安心です。
詳細な金額まで家族に伝えることに抵抗がある場合でも、金融機関名や保険会社、証券会社などの情報だけをまとめておけば、必要になったときに探しやすくなります。
この一覧は、法定後見を利用する場合にも役立ちます。後見人等が選ばれると、まず本人の財産や生活の状況を調べ、財産目録と収支予定表にまとめて家庭裁判所へ提出します。提出は原則として選任後1か月以内とされています。
6.2 任意後見など「自分で選べる制度」も早めに検討する
そして、任意後見も、元気なうちだからこそ検討できる選択肢です。
任意後見は、判断能力があるうちに、将来支援してもらいたい人と契約を結んでおく制度です。誰に任せるのかを自分で決められる点が大きな特徴ですが、判断能力が低下した後に新たに契約することはできません。
一方、すでに判断能力が低下している場合は、家庭裁判所への申立てを入口とする法定後見を検討することになります。
法定後見を考えるときは、市区町村の中核機関や地域包括支援センター、社会福祉協議会などの窓口で相談できます。申立て後は、家庭裁判所の調査を経て、後見等の開始の審判と成年後見人等の選任に進みます。
選任されたあとも、本人の生活や財産の状況について、少なくとも年1回は家庭裁判所へ報告するのが原則です。家族が後見人になった場合も同じです。
だからこそ、成年後見制度は「必要になったらとりあえず使う」というより、本人や家族がどのような財産管理を望むのかを考えたうえで、早めに選択肢を知っておくことが重要です。
7. まとめにかえて|親の口座を「誰が動かせるか」を、元気なうちに確かめる
最新の統計では、成年後見の申立ての動機は預貯金等の管理・解約が93.4%で最多でした。利用者は25万9901人にのぼり、後見人等に親族が選ばれたのは16.4%です。家族が管理する前提で考えていると、想定とずれる場面があるかもしれません。
後見・保佐を補助に一元化する改正民法も公布され、制度は変わっていく見通しです。ただ、施行日は政令で定められるため、当面は現行制度を前提に準備を進めることになります。
まずは財産の一覧を作り、金融機関や書類の場所を家族に伝えておきましょう。そのうえで、地域包括支援センターや社会福祉協議会などの相談先を確認し、自分で後見人を選びたいなら任意後見も検討してみてはいかがでしょうか。