親のキャッシュカードと通帳を持って窓口へ行ったのに、「ご本人の意思が確認できないと手続きできません」と言われてしまった。そんなとき、選択肢のひとつになるのが成年後見制度です。
一般社団法人日本認知症資産相談士協会が2026年9月に公表したWebアンケート(回答403人)では、認知症で口座手続きが難しくなることを「知っていた」「聞いたことがある」人は86.6%でした。一方、現在の対策は「特に何もしていない」が46.7%で最多です。
最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」では、令和7年の申立て動機の93.4%が預貯金等の管理・解約で、後見人等に選ばれた親族は16.4%にとどまります。
この記事では、最新の統計から利用の実態を整理し、2026年6月に公布された改正民法のポイントと、元気なうちにできる備えを確認していきます。
1. 成年後見の申立て、動機の9割超が「預貯金の管理・解約」?
最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」によると、終局した4万2674件の主な申立ての動機は次のとおりでした。1件に複数の動機が含まれる場合があるため、割合の合計は100%を超えます。
- 預貯金等の管理・解約:3万9871件(93.4%)
- 身上保護:3万1655件(74.2%)
- 介護保険契約:1万9502件(45.7%)
- 不動産の処分:1万5502件(36.3%)
- 相続手続:1万909件(25.6%)
預貯金の管理・解約が9割を超えて最も多く、次いで身上保護が7割を超えました。身上保護とは、厚生労働省の説明では、介護・福祉サービスの利用契約や、施設入所・入院の契約などを指します。
2. 利用者は約26万人。後見人に家族が選ばれるのは約16%?
同じ資料で、令和7年12月末時点の利用者は25万9901人でした。前年から約2.3%増えています。内訳は次のとおりです。
- 成年後見:18万828人
- 保佐:5万8162人
- 補助:1万8078人
- 任意後見:2833人
成年後見・保佐・補助を合わせた法定後見は25万7068人で、任意後見は全体の約1.1%です。
2.1 成年後見人等に親族が選ばれたのは16.4%
令和7年に成年後見人等が選ばれた事件のうち、親族は7014件(16.4%)、親族以外は3万5718件(83.6%)でした。親族以外の内訳は、司法書士が1万1966件、弁護士が8903件、社会福祉士が7280件です。
後見人等は家庭裁判所が選任するため、家族が希望しても、その通りになるとは限りません。
3. 法定後見と任意後見、分かれ目は「判断能力があるかどうか」?
厚生労働省によると、制度の入口は2つあります。法定後見は、判断能力が低下したあとに家庭裁判所へ申し立て、成年後見人等が選ばれる仕組みです。任意後見は、判断能力があるうちに、支援してほしい人と契約を結んでおく仕組みで、誰に任せるかを自分で決められます。
3.1 法定後見の申立てにかかる費用は?
東京家庭裁判所の「後見・保佐・補助開始申立ての手引」では、申立てには収入印紙や郵便切手が必要とされています。たとえば後見開始の申立てなら、申立手数料800円と登記手数料2600円を合わせた3400円に、郵便切手代が加わります。
3.2 改正民法で何が変わる?
法務省によると、「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)は令和8年6月24日に公布されました。後見・保佐の制度を廃止して補助に一元化し、本人に必要な範囲で利用できるようにするとされています。
成年後見制度に関する改正部分は、公布から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日に施行されます。具体的な施行日は、現時点で公表を確認できていません。施行されるまでは、現在の制度が前提になります。
4. 相続の準備は進んでも、「管理の備え」は1割未満?
相続は本人が亡くなったあとの話ですが、判断能力の低下はその前に起こり得ます。内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、60歳以上の人が老後に必要だと考える備えのうち、「終活関係の準備」は約4割だった一方、「財産管理に関する備え」は1割未満で、最も低い割合でした。
「財産を誰に残すか」と「自分で管理できなくなったとき、誰に管理してもらうか」は、別々に考える必要があります。前者は相続の話、後者は本人が生きている間の話だからです。