これから届く9月の給与明細を見て「いつもと手取りが違う?」と違和感を感じる方もいるかもしれません。実は毎年9月は、厚生年金保険や健康保険などの「社会保険料」の金額が見直される重要なタイミングなのです。厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」という最新データでも、日々の働き方や報酬が将来の年金などにどのように影響するのか、改めて注目が集まっています。

今回は、金融知識があまりない初心者の方にも分かりやすく、社会保険料が決まる仕組みと、それが私たちの将来にどう影響するのかを詳しく解説します。

1. 【定時決定】なぜ秋に手取りが変わる?社会保険料が決まる「4月から6月のルール」とは

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の金額は、毎月の総支給額ではなく「標準報酬月額」という区分によって計算されています。この金額は、毎年4月・5月・6月に支給された給与の平均額をベースに決定され、その年の9月から翌年8月まで1年間適用されます。

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標準報酬月額の決定方法

出所:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」

ここで押さえておきたい1つ目のポイントは、基本給だけでなく「残業代」や「通勤手当」などの各種手当も計算に含まれるという点です。そのため、3月決算の実務を担う経理部門や、新年度準備のある人事・総務部門など、春先に繁忙期を迎える働き方の場合、この時期の一時的な残業代が計算のベースとなり、1年間の社会保険料の等級が上がりやすくなります。

年間の総収入が同じでも、繁忙期が春かそれ以外の季節かによって社会保険料の金額に差が出ることがあるため、「春に残業すると負担感が大きい」「手取りが減って少し損をしたような気分になる」と感じる声があがる背景には、こうした算定の仕組みがあります。

2. 【随時改定】昇給や異動で給与が変わったら? 年の途中で見直される標準報酬月額の仕組み

定時決定で決まった社会保険料は原則として1年間固定ですが、「年の途中で大きく昇給した」「異動で役職手当が新たについた」「引っ越しで通勤手当が大きく変わった」といった場合には、特例として年の途中で社会保険料が見直されます。これを「随時改定(年の途中で行われる見直し)」と呼びます。

2つ目のポイントとして、随時改定が行われるのは、主に以下の3つの条件がすべて揃った時です。

  • 基本給や固定手当(毎月決まって支払われる固定的賃金)が変動した
  • 変動した月以後の継続した3ヶ月間の給与平均が、それまでの基準(標準報酬月額)と比べて「2等級以上」の差が生じた
  • その3ヶ月間とも、給与計算の対象となる日数が一定以上(原則として17日以上)ある

たとえば、7月に基本給が大きく上がり、7月と8月と9月の給与平均がそれまでより大幅に増えた場合、4ヶ月目にあたる10月から社会保険料が新しく改定されます。ただし、「残業代だけが一時的に大きく増えた」という場合は、基本給などの固定部分が変わっていなければ随時改定の対象にはなりません。あくまで固定給の変動が引き金になる点が重要です。

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1等級差でも随時改定の対象となる場合

出所:日本年金機構「随時決定随時改定(月額変更届)」

また、随時改定は原則として「2等級以上の差」が必要ですが、標準報酬月額の上限や下限にわたる場合は特例があり、「1等級差」でも改定の対象となります。

たとえば厚生年金保険で昇給があった場合、これまで最高等級の1つ下(31等級・62万円)だった人の平均給与が66万5000円以上になれば、1等級差であっても最高等級(32等級・65万円)に改定されます。また、一番下の1等級(8万8000円)だった人の平均給与が9万3000円以上に上がった場合も、2等級(9万8000円)へと見直されます。

一方、健康保険の昇給でも同様に、最高等級の1つ下(49等級・133万円)だった人の平均給与が141万5000円以上になると、最高等級(50等級・139万円)へと1等級だけ上がります。最低等級である1等級(5万8000円)から平均給与が6万3000円以上に上がった場合も、2等級(6万8000円)へと改定される仕組みです。