スイスが調査開始以来初の第1位を獲得

HSBCが毎年実施している海外駐在員調査(今年で第12回目)では、4年連続1位を維持してきたシンガポールに代わり、スイスが住みたい国・働きたい国の第1位に選ばれました。昨年の第8位から大きく順位を上げ、調査開始以来初となる第1位を獲得した要因として、生活の質、給与水準が高いことに加え、魅力的な環境も挙げられています。

スイスに暮らす駐在員の82%が、自国と比べて生活の質が向上したと回答しました。同じく70%が自国より環境が清潔で快適であると答え、世界平均の33%を上回る42%の駐在員が、より身体的に健康的な生活を送ることができていると述べています。

また金融、経済面での強みもランキングに寄与しました。10人中7人(71%)で可処分所得が増加し、スイス駐在時の平均給与は世界平均の7万5,966米ドル(約800万円※)を上回る11万1,587米ドル(約1200万円※)と、高い水準を維持しています。主要都市であるチューリッヒは世界有数の金融の中心地として知られており、若い駐在員の5人に1人(19%)が金融サービス業に従事しています。

※2019年9月末時点

スイスの政治経済を取り巻く環境が安定していることもプラス要因として注目されました。駐在員のおよそ半数が自国の経済、政治の情勢に懸念がある、または見通しが不透明であると回答している一方、スイスの国家としての中立性に安心感を抱く人は多数に上りました。

また、スイスの経済的安定性に満足している人は80%、政治的安定性に満足している人は86%と非常に高い満足度を示していることがわかりました。

HSBC海外駐在員調査 統括責任者のジョン・ゴダードは、スイスの結果について次のように述べています。

「今年、スイスは優れたスコアを収め、初めて1位にランキングされました。海外駐在先を選ぶ決め手となる要因が一様でないことは、国際的に事業を展開している大手金融機関としての経験からよく認識していますが、その中でスイスは高所得を狙うキャリア志向の層にも、そして生活の質を向上させたい層にも非常に魅力的な駐在先であることが分かりました。最高の自然環境と安全な社会とともにキャリアアップの機会にも恵まれた駐在先といえるでしょう」。

2位から5位までの国々とその特徴、そして日本は?

第2位 シンガポール

シンガポールは子育て世帯の駐在先として最も人気があります。バイリンガル教育として、すべての子どもが英語による教育を受けられるほか、中国語の標準語、マレー語、タミル語などそれぞれの子どもの母語も個別に指導されています。駐在員の62%がシンガポールの教育システムを自国より高く評価し、69%が子女の学校での言語教育に非常に満足しています。

第3位 カナダ

常に上位に選出されるカナダは、トルコに次いで海外からの訪問者の受け入れに最も前向きな国とされています。自国より生活の質が良くなったと回答した駐在員は、世界平均の65%に対し、カナダでは80%でした。このため長期的な計画で滞在する外国人が増加し、駐在員の75%がカナダ国内で資産の大部分を保有していると回答しました。これはランキングの対象となったすべての地域の中で最も高い割合でした。

第4位 スペイン

スペインのランキングは前回から10位上昇しました。地中海的なリラックスしたライフスタイルにより、生活の質が世界で最も高いと評価されました。強いキャリア志向の層は多くないものの、駐在員の67%がワーク・ライフ・バランスが向上したと回答しています。質の高いライフスタイルと、それを楽しむ十分な時間が取れることから、メンタルヘルスの向上に最も適した国とされました。

第5位 ニュージーランド

ニュージーランドは仕事以外の新しい体験を求める層に人気があります。駐在員の57%が生活の質の向上を求めて移住したと回答し、60%は生活の質が向上した結果、当初の計画より滞在期間が延びたと回答しています。ニュージーランドの駐在員は他国と比べると20年を超えて留まる率が最も高くなっています。

第32位 日本

日本は政治的安定性、生活の安全性と安心感の面で、それぞれ82%、89%の駐在員が懸念が少ないと評価しましたが、半数以上(51%)はワーク・ライフ・バランスが崩れたと回答し、総合では下位となる32位にランクされました。社会への馴染みやすさは32位、子育てのしやすさは33位といずれも低水準でした。

まとめ

HSBC海外駐在員調査 統括責任者のジョン・ゴダードは、次のように総括しています。

「今年のトップ10にランクインした国を見ると、各国が違った面で高い評価を得た多様な顔ぶれであることが分かります。調査では、人々が海外に移住する際、優先順位や目標、目的に合った国が選ばれることが明らかになりましたが、この顔ぶれを見ると、移住を考えるすべての人にそれぞれふさわしい国が必ず見つかるはずだと言って差し支えないでしょう」。

出典:「2019年 HSBC海外駐在員調査ランキング(HSBC Expat Explorer Survey League Table)