還暦を過ぎ、定年退職を迎えた後も働き続けるシニア世代が増加し、60歳代・70歳代の就労が当たり前の時代になりつつあります。
物価高の波が押し寄せるなか、定年後の再雇用などで給与が低下しがちなシニア期の働き手を支えるため、雇用保険には手厚い給付金制度が用意されています。
しかし、これらの給付金はすべて「自らハローワークで申請する」必要がある「申請主義」が採用されており、知らないまま放置していると受け取ることができません。
本記事では、知らないと損をする60歳・65歳以上が対象の「雇用保険の給付3種類」を分かりやすく解説します。
あわせて、退職時期による「失業給付と年金」の併用ルール、令和8年度(2026年度)最新の「在職老齢年金の緩和措置」など、賢く老後資金を守るための就労・年金受給戦略についても紹介します。
さらに、2026年8月28日マイナビが公表した、最新のシニア就労意識や「年下上司」との付き合い方に関するリアルな調査結果も紹介します。
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60歳代の家計を支える柱は年金に次いで「就業収入」だが、雇用保険の給付金は自分で申請しないと受け取れない
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在職老齢年金の年金カット基準額は2026年4月から51万円→65万円に緩和され、働くほど損する状況が改善
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ミドルシニアの26.9%(4人に1人以上)が「年下上司」を持ち、53.5%がジェネレーションギャップを実感している
1. 60歳代・70歳代の生活資金源をデータで比較!年金だけで生活は可能か?
老後の生活費を年金だけでまかなうのは、多くの方にとって難しいのが実情です。
それでは、実際のシニア世代はどのような資金で老後の生活を成り立たせているのでしょうか。公的データを交えてその実態を見ていきましょう。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、世帯構成にかかわらず、60歳代では公的年金に次いで「就業による収入(二人以上世帯:42.5%、単身世帯:29.2%)」が家計を支える重要な柱となっていることがわかります。
しかし70歳代になると、就労収入を生活の頼りにする人の割合は大きく減少し(二人以上世帯:18.7%、単身世帯:12.1%)、公的年金への依存度が一段と高まります。
同時に、長引くインフレの中で、年金だけでは不足する生活費を貯蓄の取り崩しで補う傾向も顕著になっています。同世論調査で、金融資産が減少した世帯にその理由を尋ねたところ、「定期的な収入が減ったので金融資産を取り崩した」と回答した割合は次の通りです。
- 二人以上世帯:40.5%
- 単身世帯:37.7%
さらに、総務省の2025年家計調査(貯蓄・負債編)によると、世帯主が65歳以上の高齢無職世帯における平均貯蓄現在高は2494万円となっており、生活費補填にともなう預貯金取り崩しなどの影響から、実質6年ぶりの前年比減少に転じています。
「少しでも長く元気に働いて収入をキープすること」は、貯蓄の減少スピードを抑え、資産寿命を延ばすための極めて有効な「生活防衛」の手段なのです。
2. 【知らないと損】60歳以上が対象!雇用保険から受け取れる3つの給付金とは
働く意欲のあるシニア世代を経済的にサポートするため、雇用保険から支給される3つの給付金について、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
2.1 1. 再就職手当:65歳未満の早期再就職を支援する制度
再就職手当は、基本手当(いわゆる失業保険)の受給資格を持つ人が、一日でも早く安定した職業に再就職することを支援するための制度です。再就職までの期間が短い(支給残日数が多い)ほど、給付内容が手厚くなるように設計されています。
受給の主な条件
- 基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っている状態で、原則として雇用保険の被保険者となる再就職(1年を超えて引き続き雇用されると認められるものなど)をした場合。
再就職のタイミングで変わる給付率
基本手当の支給残日数に応じて、以下の通り給付率が決定されます(計算結果の1円未満は切り捨て)。
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある場合:「支給残日数の60%」
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上ある場合:「支給残日数の70%」
早期の再就職を果たすことで、新しい職場での給与に加え、まとまった手当を一括で受け取ることができるため、経済的な移行期間を非常にスムーズに支えてくれます。
2.2 2. 高年齢雇用継続給付:60歳から65歳未満で給与が下がった際の支援
高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金)は、60歳以上65歳未満で再雇用などを選び、同じ会社または再就職先で働き続ける方を支援する制度です。定年後に給与が大きく下がってしまった場合に、その低下分の一部を国が補ってくれます。
受給の主な条件
- 雇用保険の被保険者期間が通算して5年以上ある60歳以上65歳未満の方で、60歳時点の賃金と比較して、現在の賃金が75%未満に低下していること。
支給額と支給率(2025年4月1日施行の雇用保険法改正に対応)
各月に支払われる賃金の最高10%に相当する額が支給されます(賃金低下率に応じてスライド支給)。
- ※法改正にともなう経過措置として、2025年(令和7年)3月31日以前にすでに支給要件(60歳到達かつ被保険者期間5年以上)を満たしていた対象者は、旧制度の最高15%の支給率が維持されます。
注意点として、老齢厚生年金を受け取りながら本給付金を受給する場合、在職老齢年金制度の計算とは別に、年金の一部(標準報酬月額の最大4%相当。経過措置対象者は最大6%相当)が支給停止される「併給調整」が発生します。
2.3 3. 高年齢求職者給付金:65歳以上で失業した際に受け取れる一時金
65歳に達した日以降に退職(離職)し、次の職場を探す場合は、通常の基本手当に代わって「高年齢求職者給付金」が支給されます。
受給の主な条件
65歳以上の雇用保険加入者(高年齢被保険者)であり、以下の2条件を満たす必要があります。
- 離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あること。
- 働く意欲と能力を持ち、ハローワークで求職活動を行っているにもかかわらず、仕事が見つからない「失業の状態」にあること。
支給される金額(一時金)
離職前の賃金をもとに算出した基本手当日額に基づき、一括で支給されます。
- 雇用保険の加入期間が1年未満:基本手当の30日分
- 雇用保険の加入期間が1年以上:基本手当の50日分
最大のメリットは、年金(老齢厚生年金・老齢基礎年金)との併給調整が一切行われない(全額をダブル受給できる)点にあります。
65歳未満のハローワークの基本手当とは異なり、受給手続きをしても年金がストップすることはありません。また、一時金として一括支給されるため、再就職に向けた準備資金として有効に活用できます。
3. 筆者からのコメント
高年齢雇用継続給付と年金の「併給調整」には、見落としやすい落とし穴があります。
この給付金を受け取ると、在職老齢年金によるカットとは別に、老齢厚生年金の一部が標準報酬月額の最大4%(経過措置対象者は6%)分、追加で支給停止されてしまうのです。
給与の低下を補うはずの雇用保険給付が、かえって年金収入を目減りさせる一因にもなり得るため、「給付金は満額もらえるはずが、思ったより手取りが増えなかった」という声も少なくありません。
ハローワークと年金事務所は窓口が分かれているため、受給前にそれぞれの窓口で「手取りベース」でのシミュレーションを依頼しておくと安心です。窓口をまたぐ事前確認こそが、老後資金の最適化につながる第一歩といえるでしょう。
