一人暮らしで年金を受け取る世帯の家計は、月々どのくらいの収支になっているのでしょうか。
不足分を補うのは手元の貯蓄ですが、その貯蓄を預けている金融機関が破綻したとき、いくらまでが守られるのかは口座の数では決まりません。
預金保険の限度額は口座ごとではなく預金者ごとに合算して判定されます。同じ金融機関で口座を分けても、保護される枠は増えないということです。
この記事では、預金保険の名寄せの仕組みと、65歳以上・単身無職世帯の家計収支、2026年度の年金額例について解説します。
1. 同じ金融機関で口座を分けても、保護される枠は増えない
預金保険には「名寄せ」という作業があります。
預金保険機構によると、金融機関が破綻した場合、機構は破綻金融機関から預金者データの提出を受け、同一預金者の複数の口座を集約・合算して預金等の総額を算定し、保護される預金等の額を確定します。この作業が名寄せです。
一般預金等の限度額は1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1000万円までと破綻日までの利息等です。口座ごとではなく預金者ごとの枠なので、同じ金融機関のなかで口座を3つに分けても、守られる額が3倍になることはありません。
1.1 夫婦や親子は別々の預金者になる
では、誰を1人として数えるのでしょうか。
原則は1個人を1預金者とし、夫婦や親子もそれぞれ別の預金者として扱われます。ただし、家族の名義を借用している預金、いわゆる借名預金は保護の対象外です。
個人事業主の場合は、事業用の預金等と事業用以外の預金等が同一人の預金等として合算されます。
1.2 1000万円を超えたときは、どの預金が守られるのか
合算した元本が1000万円を超える場合、どの預金が保護されるのかにも順番があります。
預金保険機構は、①担保権の目的となっていないもの、②弁済期(満期)の早いもの、③弁済期が同じ預金等が複数ある場合は金利の低いもの、という順位で保護される預金を特定するとしています。金利が同じ預金等が複数ある場合などは、機構が指定するものになります。
なお、当座預金や利息のつかない普通預金などの決済用預金は全額保護されるため、この限度額の枠とは別の扱いです。
そしてもうひとつ。名寄せは金融機関が持つ預金者データをもとに行われます。結婚や引越しで氏名や住所が変わったときは、速やかに取引金融機関で手続きをしてほしいと案内されています。
2. 65歳以上・単身無職世帯のひと月の家計収支
まずは一人暮らしの家計です。総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯のひと月の収支を確認します。
2.1 収入と支出の内訳を確認する
実収入は月13万1456円
■うち社会保障給付(主に年金):12万212円
支出は月16万1435円
■うち消費支出:14万8445円
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
- うち諸雑費:1万4052円
- うち交際費:1万6956円
- うち仕送り金:591円
■うち非消費支出:1万2990円
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
差し引きは月2万9980円の赤字
- ひと月の赤字:2万9980円
- エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合):28.6%
- 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合):125.3%
年金を受け取りながら一人で暮らす世帯の家計は、どのような形になっているのでしょうか。
支出の合計は月16万1435円です。うち食費や住居費などの「消費支出」が14万8445円、税金や社会保険料などの「非消費支出」が1万2990円という内訳になっています。
収入は月13万1456円で、そのうち12万212円が主に公的年金である社会保障給付です。
エンゲル係数は28.6%、平均消費性向は125.3%です。差し引きすると、この世帯は月2万9980円の赤字となっています。
ただし、この数字はそのまま自分に当てはまるとは限りません。支出に「介護費用」は含まれておらず、住居費も1万円台です。持ち家か賃貸か、健康状態がどうかによって、上乗せが出ることがあります。
また「非消費支出」があることからわかるように、年金生活に入っても税金や社会保険料の負担は続きます。
これらを年金から天引きで納めている人も少なくありません。日々の生活費だけでなく、こうした固定的な負担も入れて見通しを立てておきたいところです。
