遺族基礎年金を受けている人にとって、「年金生活者支援給付金」がもらえるかどうかは気になるところです。ただし、この制度名を検索すると「遺族厚生年金だけでは対象外」という情報を見かけることがあり、自分のケースがどちらに当てはまるのか、混乱してしまう人も少なくありません。
特に、配偶者を亡くしたばかりで、遺族年金の手続き自体に慣れていない時期は、複数ある遺族年金の種類を正確に区別するのが難しく感じられるものです。まずは自分がどの遺族年金を受けているのかを整理するところから始めましょう。
結論から言うと、遺族年金生活者支援給付金の対象になるのは、遺族基礎年金を受けている人です。遺族厚生年金だけを受けている人は、この給付金の対象にはなりません。この記事では、その理由と、給付額の仕組みを編集部で整理します。
あわせて、老齢・障害・遺族という3種類の年金生活者支援給付金を横並びで比較し、それぞれの所得基準や世帯要件がどう違うのかも確認します。制度全体の位置づけを理解しておくと、自分がどのケースに当てはまるのかを判断しやすくなります。
なお、年金生活者支援給付金の制度全体や2026年度の基準額については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 遺族年金生活者支援給付金は、遺族基礎年金を受けている人が対象で、遺族厚生年金だけを受けている人は対象になりません。
- 令和8年度の給付額は月5620円で、複数の子が受給する場合はこの金額を人数で按分します。
- 所得基準は前年所得479万4000円以下(扶養親族の数に応じて加算)で、老齢年金生活者支援給付金より大幅に緩やかです。
1. 「遺族厚生年金だけでは対象外」と言われる理由
まず、なぜ遺族厚生年金の受給者が対象外になるのか、その仕組みから確認します。
1.1 対象になるのは、遺族基礎年金を受けている人
日本年金機構の資料によると、遺族年金生活者支援給付金の対象は「遺族基礎年金を受けている」人です。遺族基礎年金は、原則として18歳到達年度末までの子がいる配偶者、または子自身が受け取る年金です。遺族厚生年金は、これとは別の制度であり、遺族厚生年金だけを受けていて遺族基礎年金の受給権がない場合は、この給付金の対象にはなりません。
遺族基礎年金は、そもそも子どもがいることを前提にした制度です。子どものいない配偶者は、原則として遺族基礎年金の受給権を持たないため、遺族厚生年金だけを受けている場合が多くなります。この構造の違いが、そのまま給付金の対象・対象外を分ける境目になっています。
1.2 遺族厚生年金と遺族基礎年金は、別々の受給権
会社員だった配偶者を亡くした場合、遺族厚生年金は受け取れても、子どもがすでに成人しているなど遺族基礎年金の対象条件を満たさないケースがあります。この場合、遺族厚生年金は受給できていても、遺族年金生活者支援給付金の対象にはならないという結果になります。
逆に言えば、遺族基礎年金の受給権があるかどうかさえ確認できれば、この給付金の対象になるかどうかは比較的シンプルに判断できます。まずは自分が受け取っている年金証書に「遺族基礎年金」という記載があるかどうかを確認することが、最初のチェックポイントです。
2. 編集部試算:給付額はいくらで、どう分けられるか
遺族年金生活者支援給付金の具体的な金額と、複数の子が受給する場合の扱いを確認します。
2.1 令和8年度の給付額は月5620円
日本年金機構の資料によると、令和8年度の遺族年金生活者支援給付金は月額5620円です。この金額は、老齢年金生活者支援給付金の基準額と同じです。物価変動率に応じて毎年見直される点も、老齢向けと共通しています。
2.2 複数の子が受給する場合は、人数で按分される
遺族基礎年金を複数の子が受け取っている場合、遺族年金生活者支援給付金も5620円を子の人数で按分して支給されます。たとえば子が2人であれば、1人あたり2810円が目安になります。1人あたりの金額は減りますが、世帯全体で受け取る総額は変わらない仕組みです。
配偶者がおらず子どもだけが遺族基礎年金を受け取っているケースでは、この按分の考え方によって、兄弟姉妹それぞれが公平に給付金を受け取れる仕組みになっています。誰か1人がまとめて受け取るのではなく、対象になる子の人数に応じて公平に配分される点を押さえておくとよいでしょう。
2.3 【受給する子の人数別・1人あたりの給付額目安】
- 1人:5620円
- 2人:2810円
- 3人:約1873円
3. 【編集者の視点】
実務上の注意点は、按分後の金額だけを見て「基準額より少ないのはおかしいのでは」と誤解しないことです。子の人数で割った金額は、あくまで1人あたりの目安であり、制度の基準額そのものが減額されているわけではありません。
通知書を受け取った際は、世帯全体の給付総額と、自分(または子)が受け取る按分後の金額の両方を確認しておくと、仕組みへの理解が深まります。
兄弟姉妹がそれぞれ別々に生活を始めた場合など、按分の対象になる子の人数が途中で変わることもあります。進学や就職で家族の状況が変わったときは、給付額にも影響が及ぶ可能性があるため、変化があった際は年金事務所への届出を忘れないようにしてください。
4. 所得基準は、老齢向けより大幅に緩やか
遺族年金生活者支援給付金にも、所得による制限があります。ただし、その水準は老齢向けとは大きく異なります。
4.1 前年所得479万4000円以下、世帯要件も明記されていない
日本年金機構の資料によると、遺族年金生活者支援給付金の所得基準は、前年所得が479万4000円以下(扶養親族の数に応じて加算)です。この基準は、障害年金生活者支援給付金と同じ水準です。老齢年金生活者支援給付金のような「世帯全員が住民税非課税」という要件も明記されていません。
扶養親族がいる場合の加算額は、扶養親族等の区分によって細かく決まっています。子どもを扶養している遺族基礎年金の受給者にとっては、この加算によって基準額がさらに引き上げられる可能性があるため、正確な金額は年金事務所で確認するのが確実です。
4.2 遺族年金そのものは非課税収入、所得の計算に含まれない
遺族基礎年金・遺族厚生年金はいずれも非課税の収入です。年金生活者支援給付金の判定に使う所得を計算する際、これらの遺族年金の金額は含まれません。給与収入やその他の課税対象の所得だけで、479万4000円という基準に照らして判定されます。
これは、遺族年金を受け取りながらパートやアルバイトで働いている人にとって重要なポイントです。遺族年金の金額がどれだけ大きくても、それ自体が所得基準を押し上げることはなく、あくまで給与収入などの課税対象の所得だけが判定の対象になります。
4.3 【老齢・障害・遺族・所得基準と世帯要件の違い】
前提条件:老齢・障害・遺族の各年金生活者支援給付金の所得基準・世帯要件の違いを、日本年金機構の公表情報から編集部で整理2/2
出所:日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」などを基にLIMO編集部作成
- 老齢年金生活者支援給付金:前年公的年金等収入+その他所得が80万9000円以下(※昭和31年4月1日以前生まれは80万6700円以下)※超える場合も90万9000円等まで補足的給付あり
- 障害年金生活者支援給付金:前年所得が479万4000円+扶養親族の数×38万円以下
- 遺族年金生活者支援給付金:前年所得が479万4000円+扶養親族の数×38万円以下
5. 【編集者の視点】
この一覧から見えてくるのは、「非課税世帯向け」という印象が強いのは老齢年金生活者支援給付金だけで、障害・遺族向けは所得基準そのものが別枠だという点です。配偶者を亡くして遺族基礎年金を受けている人が、「うちは非課税世帯ではないから関係ない」と思い込んで確認すらしていないケースがあるとすれば、この基準の違いを知っておくだけで見え方が変わります。
特に、遺族基礎年金の受給が始まったばかりの人は、老齢向けの情報だけを見て判断せず、遺族向けの要件を個別に確認することをおすすめします。焦る必要はありませんが、後回しにし続けると申請自体を忘れてしまうこともあるため、早めの確認が安心につながります。
配偶者を亡くした直後は、葬儀や各種手続きに追われ、年金生活者支援給付金のような付随的な制度にまで意識が向きにくい時期でもあります。落ち着いたタイミングで構わないので、一度この基準を確認しておくと、見落としを防げます。
6. 申請方法と、老齢基礎年金への切り替え時の注意点
最後に、申請の流れと、将来老齢基礎年金に切り替わる際の注意点を確認します。
6.1 遺族基礎年金の請求とあわせて手続きできる
遺族年金生活者支援給付金も申請主義の制度です。遺族基礎年金を請求する際に、あわせて年金生活者支援給付金の請求書を提出できる場合があります。すでに遺族基礎年金を受給していて、この給付金の手続きをした記憶がない場合は、年金事務所に確認することをおすすめします。
申請が遅れた場合の扱いは個別の事情によって変わるため、心当たりがある場合は早めに年金事務所へ相談し、実際にどこまでさかのぼれるのかを確認することをおすすめします。
6.2 将来、老齢基礎年金に切り替わるタイミングでは再確認が必要
遺族基礎年金を受けている人が65歳になり、老齢基礎年金を選択する場合、給付金の種類も遺族向けから老齢向けに切り替わります。老齢年金生活者支援給付金には世帯全員非課税という要件があるため、遺族向けでは対象だった人が、切り替え後に対象外になる可能性もあります。
※本記事は、編集部が日本年金機構が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
7. まとめ
- 遺族年金生活者支援給付金は、遺族基礎年金を受けている人が対象で、遺族厚生年金だけを受けている人は対象になりません。
- 令和8年度の給付額は月5620円で、複数の子が受給する場合はこの金額を人数で按分します。
- 所得基準は前年所得479万4000円以下(扶養親族の数に応じて加算)で、老齢年金生活者支援給付金のような世帯全員非課税という要件はありません。
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金そのものは非課税収入のため、所得の判定には含まれません。
- 65歳で老齢基礎年金に切り替わる際は、給付金の種類も変わり、要件が厳しくなる可能性があるため再確認が必要です。
遺族年金生活者支援給付金は、「遺族厚生年金だけでは対象外」という一見残酷に見えるルールの裏に、遺族基礎年金という別の受給権を判定基準にしているという明確な理由があります。所得基準も老齢向けより緩やかなため、「非課税世帯ではないから関係ない」と自己判断せず、まず自分が遺族基礎年金の受給者かどうかを確認することが出発点になります。
配偶者を亡くすという出来事のあとは、手続きが多岐にわたり、どうしても優先順位が後回しになりがちな制度です。落ち着いたタイミングで一度、この記事の内容を思い出して確認してみることをおすすめします。
今回紹介した所得基準や給付額は令和8年度時点のものです。基準額は物価変動に応じて毎年見直されるため、翌年度以降に確認する際は、最新の金額を日本年金機構の公表情報で確かめるようにしてください。
また、扶養親族の人数や状況が変わった場合は、所得基準そのものも変動します。子どもの就職や独立などで扶養状況が変わったタイミングでは、あらためて自分が対象になるかどうかを見直すことをおすすめします。
周囲に遺族基礎年金を受けている家族や知人がいる場合は、この記事の内容を共有してあげるだけでも役に立つはずです。制度の存在自体を知らないまま過ごしている人は、決して少なくありません。
自分が対象になるかどうか、具体的な手続き方法を知りたい場合は、日本年金機構や年金事務所の窓口に相談することをおすすめします。基礎年金番号がわかる書類を手元に用意しておくと、相談がスムーズに進みます。
8. よくある質問
8.1 Q. 遺族厚生年金を受けていますが、この給付金はもらえますか。
A. 遺族厚生年金だけを受けていて、遺族基礎年金の受給権がない場合は対象になりません。対象になるのは、遺族基礎年金を受けている人です。自分がどちらの遺族年金を受給しているかは、年金証書や年金振込通知書で確認できます。判断に迷う場合は年金事務所に問い合わせてください。
8.2 Q. 子どもが複数いる場合、給付額はどう分けられますか。
A. 基準額5620円を子の人数で按分します。子が2人であれば1人あたり2810円、3人であれば約1873円が目安です。世帯全体で受け取る総額は変わりません。
8.3 Q. 家族に課税所得がある場合、対象外になりますか。
A. なりません。遺族年金生活者支援給付金には、老齢年金生活者支援給付金のような世帯全員非課税という要件が明記されていません。本人の前年所得が基準額以下であれば対象になり得ます。
8.4 Q. 65歳になって老齢基礎年金に切り替わると、給付金はどうなりますか。
A. 給付金の種類も老齢年金生活者支援給付金に切り替わります。世帯全員非課税という要件が新たに加わるため、これまで対象だった人が対象外になる可能性があります。切り替えのタイミングで、あらためて世帯全体の課税状況を確認しておくことをおすすめします。
参考資料
齊藤 慧

