65歳になると、介護保険の「第1号被保険者」として保険料を納め始めます。

では、実際に介護保険から給付されている金額は、平均するとどれくらいなのでしょうか。

この記事では、厚生労働省の最新統計をもとに、第1号被保険者(65歳以上)を中心に介護給付費の平均額を確認し、その数字の意味を読み解いていきます。

ココがポイント
  • 第1号被保険者1人あたりの介護給付費は、全国平均で年29.6万円
  • この平均額は要介護認定を受けていない人も含めた金額で、認定者だけで見ると1人あたり約147.6万円になる
  • 給付費の内訳は居宅サービスが最も多く15.2万円、施設サービスが9.4万円、地域密着型サービスが5.0万円

1. 介護給付費の全国平均はいくらか

まずは、第1号被保険者1人あたりの介護給付費が全国でどれくらいになっているのか、内訳から見ていきましょう。

1.1 1人あたり給付費の内訳

厚生労働省「令和6年度 介護給付費等実態統計の概況」によると、第1号被保険者1人あたりの介護給付費(令和6年度累計)は、全国平均で年29.6万円となっています。

内訳を見ると、自宅で受けるサービスなどを含む「居宅サービス」が15.2万円と最も多く、特別養護老人ホームなどの「施設サービス」が9.4万円、小規模な事業所が地域の実情に応じて提供する「地域密着型サービス」が5.0万円という結果です。

介護給付費、第1号被保険者1人あたりの全国平均は年29.6万円1/2

介護給付費、第1号被保険者1人あたりの全国平均は年29.6万円

出所:厚生労働省「令和6年度 介護給付費等実態統計の概況」

1.2 高額介護サービス費等を含めると31.2万円に

ここで紹介した29.6万円は、居宅・地域密着型・施設の3つのサービスにかかった給付費の合計です。これに加えて、自己負担額が一定の上限を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」、医療保険と介護保険の自己負担を合算して払い戻される「高額医療合算介護サービス費」、低所得の方の施設利用時の食費・居住費を軽減する「特定入所者介護サービス費」を含めると、1人あたり給付費の全国平均は31.2万円になります。

2. この「平均額」の意味を正しく理解する

29.6万円という数字は、そのまま「介護サービスを使うと平均でこれくらいかかる」と受け取ってしまいがちですが、実際の計算方法を確認すると印象が変わってきます。

2.1 29.6万円は「1号被保険者全員」で割った金額

ここで注意したいのは、29.6万円という金額が「実際に介護サービスを利用した人」だけを対象にした平均ではないという点です。この金額は、給付費の総額を第1号被保険者数(65歳以上の全員)で割って算出されています。

同じ資料によると、第1号被保険者のうち、実際に要介護・要支援の認定を受けている人の割合は全国平均で19.7%です。つまり、65歳以上の8割以上は、この時点で介護サービスを利用していない(あるいは認定を受けていない)ことになります。

2.2 実際にサービスを利用している人の給付額は

そこで、第1号被保険者分の給付費を、認定を受けている人の数だけで割り直すと、1人あたり年間で約147.6万円という試算になります。29.6万円という全体平均に比べると、5倍近い金額です。

「平均29.6万円」は認定を受けていない人も含めた金額2/2

「平均29.6万円」は認定を受けていない人も含めた金額

出所:厚生労働省「令和6年度 介護保険事業状況報告(概要)」の数値をもとにLIMO編集部試算

この147.6万円も、要支援1の軽度な人から要介護5の重度な人までをならした金額である点には注意が必要です。実際に施設に入所している場合など、より重度な状態でサービスを多く使うほど、給付額はさらに大きくなります。

和田 直子

「介護給付費の平均は29.6万円」という数字だけを見ると、意外と少ないと感じるかもしれません。しかし、これは65歳以上のほとんどの方(介護を必要としていない8割の方)を含めて平均した数字であることを踏まえておく必要があります。

ご自身やご家族が実際に介護サービスを利用する場面を考えるときは、この29.6万円ではなく、認定を受けている方の平均額である約147.6万円の方が実態に近いイメージになります。保険料負担の議論と、実際にサービスを使う際の費用感を、それぞれ別の数字で捉えておくとよいと思います。