原則として75歳になると、だれもが後期高齢者医療制度に加入します。窓口で払う割合が1割か2割か3割かという話はよく聞きますが、それ以外にどのような給付があるかはあまり知られていません。
高齢者の医療の確保に関する法律第56条は、後期高齢者医療給付の種類を定めています。
法律に名前が書かれているものが10、広域連合の条例で定める葬祭費を加えると11になります。
筆者は元自治体職員で、役場では後期高齢担当をしていました。この記事では、その11の給付を順に見ていきます。
- 法律に名前が書かれている給付が10、条例による葬祭費を加えて11
- 窓口で意識せずに使っているものと、申請してはじめて受け取るものに分かれる
- 後期高齢者医療だけの特別な制度ではなく、国民健康保険や健康保険にもある
1. 後期高齢者医療制度での給付の種類は法律で決まっている
まず、後期高齢者医療制度での給付の根拠を確認します。
1.1 3つの号に分かれている
高齢者の医療の確保に関する法律第56条は、後期高齢者医療給付を3つに分けています。第1号が療養の給付ならびに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費および移送費の支給です。
ここに8つ入っています。
第2号が高額療養費および高額介護合算療養費の支給で2つ。第3号は、これらのほかに後期高齢者医療広域連合の条例で定めるところにより行う給付です。
第86条により、条例で定めて行うものとされているのが葬祭費です。あわせて11になります。
2. 後期高齢者医療制度の給付11選
ここからは、東京都後期高齢者医療広域連合の説明にそって、ひとつずつ見ていきます。
2.1 療養の給付
病気やけがで保険医療機関にかかったときの給付です。法律では、診察、薬剤または治療材料の支給、処置や手術その他の治療、居宅における療養上の管理と看護、病院または診療所への入院と看護が挙げられています。
窓口で自己負担分を支払い、残りの額を広域連合が保険医療機関に支払います。ふだん病院にかかっているときに使っているのがこれです。
2.2 入院時食事療養費
入院したときの食事にかかる費用の給付です。食費のうち標準負担額を除いた額を広域連合が負担します。
入院費の請求書に食事代が全額のっていないのは、この給付があるためです。
2.3 入院時生活療養費
療養病床に入院したときの給付です。療養病床とは、主として長期にわたり療養を必要とする方のための病床を指します。
食費と居住費にかかる費用のうち、標準負担額を除いた額を広域連合が負担します。一般の病床に入院したときの入院時食事療養費とは、対象になる費用の範囲が違います。
2.4 保険外併用療養費
保険が適用されない療養を受けると、保険が適用される部分があっても全額が自己負担になるのが原則です。ただし一定の条件を満たした場合は、通常の治療と共通する部分の費用について保険が適用されます。
法律では、評価療養、患者申出療養、選定療養が対象として挙げられています。差額ベッド代を払って入院した場合の診察や投薬などが、この形にあたります。
2.5 療養費
保険証等を持たずに診療を受けた場合など、医療費の全額を自己負担したときの給付です。市区町村窓口に申請し、認められた部分について自己負担分を除いた額が支給されます。本来、保険適用となるものに限られます。
はり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師の施術も、一定の条件を満たしたうえで医師から同意書が交付された場合に限り、医療保険が適用されます。受ける前に医師へ相談しておく必要があります。
2.6 訪問看護療養費
居宅で療養している方が、主治医の指示に基づいて訪問看護ステーションを利用したときの給付です。自己負担分の利用料を支払い、残りを広域連合が負担します。
通院が難しくなってから使う場面が出てきます。主治医の指示が前提になる点は押さえておきたいところです。
2.7 特別療養費
被保険者資格証明書の交付を受けている方が保険医療機関にかかり、医療費の全額を支払った場合に、申請に基づいて自己負担額を除いた額が支給されるものです。
法律では、保険料を滞納している被保険者について、納付の勧奨や相談の機会の確保などを行ってもなお納付しない場合に、療養の給付等に代えて支給するとされています。災害その他の特別の事情があると認められる場合は除かれます。なお支給の際に、保険料未納分を相殺する場合があります。
2.8 移送費
負傷や疾病等により移動が困難な患者が、医師の指示により一時的、緊急的な必要性があって移送された場合の給付です。緊急その他やむを得なかったと広域連合が認めた場合に限られます。
東京都後期高齢者医療広域連合は、救急車は無料なので対象になりませんと明記しています。想像しやすいのは救急搬送ですが、それは含まれません。
2.9 高額療養費
月の1日から末日までの1か月ごとの自己負担額が限度額を超えた場合に、超えた額が支給されます。限度額までを自己負担し、それを超えた額は広域連合から支給される形です。
限度額は所得区分によって分かれます。入院や手術が重なった月に効いてくる給付です。
2.10 高額介護合算療養費
世帯で1年間に支払った後期高齢者医療制度の一部負担金等の額と、介護保険の利用者負担額の合算額が、世帯の算定基準額を超えるときの給付です。計算期間は8月1日から翌年7月31日までです。
申請により、超えた額が後期高齢者医療制度と介護保険それぞれの制度から払い戻されます。医療と介護の両方を使っている世帯が対象になります。
2.11 葬祭費
被保険者が亡くなったとき、その葬儀を行った方が市区町村の担当窓口に申請することで支給されます。
金額は法律には書かれていません。第86条が条例の定めるところによるとしているため、広域連合ごとに決められます。
筆者が窓口で受ける相談は、とくに療養費と高額療養費に集中していました。ほかの給付は名前を聞く機会が少ないだけで、条件にあてはまれば同じように使えます。
