「手元にまとまったお金ができたら、新NISAで運用するか、住宅ローンの繰上返済に回すか」は、多くの人が一度は迷うテーマです。

2024年以降、日銀が段階的に利上げを進めてきたことで、住宅ローンの変動金利も少しずつ上昇しており、この比較はこれまでよりも身近な問題になっています。

この記事では、2026年8月時点の最新の金利データをもとに、実質金利・期待リターン・資金の流動性という3つの観点から両者を比較し、具体的な数字でシミュレーションしたうえで、判断のポイントを整理します。

ココがポイント
  • 日銀は2024年3月以降、政策金利を段階的に引き上げており、2026年8月時点の政策金利は1.0%程度、変動型住宅ローンの金利も上昇傾向にある
  • 繰上返済は「確実に得られる利回り」、新NISAは「期待リターンが変動する」という違いがあり、単純に比較できるものではない
  • どちらが得かの答えは今後の金利動向とNISAの運用成果次第で変わるため、資金の流動性や自分のリスク許容度を踏まえて判断することが大切

1. 住宅ローンの変動金利は、ここ2年ほどで上昇している

まず前提として、住宅ローンを取り巻く金利環境を確認します。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、政策金利を段階的に引き上げてきました。

2024年7月に0.25%程度、2025年1月に0.5%程度、2025年12月に0.75%程度、2026年6月には1.0%程度まで引き上げており、2026年7月30〜31日の金融政策決定会合ではこの水準で据え置きとされています。

日銀の政策金利は2024年3月以降、段階的に上昇1/3

日銀の政策金利は2024年3月以降、段階的に上昇

出所:日本銀行の金融政策決定会合の公表資料をもとにLIMO編集部作成

この政策金利の上昇にともなって、住宅ローンの変動金利の基準となる短期プライムレートも上昇しています。日本銀行の公表データによると、2026年8月3日時点の短期プライムレートの最頻値は2.375%です。

実際の借入金利でみると、三菱UFJ銀行の場合、2026年8月時点の新規借入の変動金利(優遇後の実質金利)は0.945%、借換の場合は0.995%となっており、店頭表示金利からの優遇幅を考慮しても、以前より金利は上がりやすい環境になっています。参考として、同時期の固定10年は3.59%、フラット35などの全期間固定(21〜25年)は4.07%です。

つまり、「繰上返済で減らせる利息」と「新NISAで期待できるリターン」を比べるときの土台となる金利水準そのものが、以前より高くなってきているという点は押さえておく必要があります。

2. 実質金利・期待リターン・資金の流動性で比較する

新NISAと繰上返済は、そもそも性質が異なるお金の使い方です。比較する際に押さえておきたい3つの観点を整理します。

新NISAと住宅ローン繰上返済、3つの観点で比較2/3

新NISAと住宅ローン繰上返済、3つの観点で比較

出所:日本銀行、三菱UFJ銀行、金融庁の公表情報をもとにLIMO編集部作成

1つ目は実質金利です。繰上返済は、ローンの金利がそのまま「確実に得られる利回り」に相当します。たとえば変動金利0.945%でローンを組んでいる場合、100万円を繰上返済すれば、その分の金利負担がほぼ確実になくなります。一方、新NISAで期待できるリターンは、あくまで市場環境に左右される「期待値」であり、過去の実績が将来の成果を保証するものではありません。

2つ目は資金の流動性です。繰上返済に回したお金は、原則として手元に戻ってきません。急な出費が必要になったときに「あのお金を取り戻したい」と思っても、基本的にはできない仕組みです。これに対して、新NISAで投資した資産は、いつでも売却して現金化できます。売却すると、売却した商品の簿価分(取得金額ベース)は翌年に復活しますが、年間の投資枠(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=合計360万円)自体は復活しない点には注意が必要です。

3つ目はリスクの大きさです。繰上返済による利息の減少効果は、契約時点の金利をもとに確定的に計算できます。一方、新NISAでの運用は、投資した金額を下回る(元本割れする)可能性がある点が、繰上返済とは異なります。