住民税を自分で納める「普通徴収」の納期は、地方税法で6月・8月・10月・翌年1月と定められています。10月はその3回目。納付書が手元に届く人がいる一方で、何も届かない人もいます。

届かない側にいるなら、住民税非課税世帯として使える制度があるかもしれません。話題になるのは臨時の給付金ばかりですが、実際には毎月の保険料や医療費を継続的に軽くする仕組みのほうが、家計への効き方は長く続きます。

この記事では、代表的な8つの負担軽減を確認します。あわせて、よく引き合いに出される「年収110万円」「年収155万円」という境界線が、どういう計算から出てきた数字なのかも検算していきます。

田中 友梨
この制度でもったいないのは、対象なのに気づかないまま過ごしてしまうことです。8つの軽減措置は、自治体が勝手に判定してくれるものと、こちらから申請しない限り一生始まらないものが混在しています。制度名を覚える必要はありません。「放っておいても効くもの」と「動かないと効かないもの」の2つに仕分けしておけば、それだけで取りこぼしはかなり減ります。

なお、住民税非課税世帯を対象とした優遇措置・年収の境界線については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説
【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説 【元厚労省担当記者監修】住民税非課税世帯のボーダーラインや優遇措置を徹底解説。無申告の罠や扶養判定など、もらえるはずの給付金を取りこぼさないための実務的な防衛策をお届け
ココがポイント
  • 医療・介護・保育・進学まで、非課税世帯だけに用意された負担軽減が8つある
  • 自治体が勝手に適用するものと、申請しないと始まらないものが混ざっている
  • 神戸市の例では単身の境界線は給与110万円・年金155万円。この差は控除額の差で説明がつく

1. 住民税が非課税の世帯だけが使える、8つの負担軽減

住民税非課税世帯とは、その世帯にいる人全員の所得が、自治体の定めた基準額に届いていない世帯を指します。

この状態にある世帯には、ニュースになる臨時給付金とはまったく別の枠組みで、暮らしの固定費を下げる仕組みが用意されています。代表的なものを8つ挙げていきます。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/4

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 1.国民健康保険料の均等割・平等割が軽くなる

所得の水準に応じて、応益分保険料(均等割・平等割)が7割・5割・2割のいずれかで減額されます。ここは自治体が課税情報を見て自動で判定するため、申請書を出す必要はありません。年間で数万円単位の違いになることもあります。

1.2 2.65歳以上の介護保険料に、低い段階が適用される

65歳以上の第1号被保険者が対象です。介護保険料は所得に応じた段階制で、非課税世帯は下のほうの段階に位置づけられます。段階の刻み方や金額は市区町村ごとに設計が違うため、下がり幅も一律ではありません。

1.3 3.国民年金保険料は、免除や猶予を申請できる

所得の状況に応じて、全額免除・一部免除・納付猶予のいずれかを申請できます。ここは自動ではなく、申請してはじめて始まります。免除が認められた期間は、保険料を納めていなくても年金額の計算に一部反映される点が、単なる未納との決定的な違いです。

1.4 4.医療費の月額上限が、低い区分に入る

高額療養費制度では、1カ月に自己負担する医療費の上限が所得区分ごとに決まっています。非課税世帯は、課税世帯より低い区分が適用されます。入院や手術が重なった月に、この差がそのまま効いてきます。

1.5 5.NHK受信料に免除の枠がある

全額免除と半額免除の2種類があります。主に想定されているのは、世帯に障害のある方がいるケースや、生活保護を受給しているケースです。

1.6 6.0〜2歳児クラスの保育料がかからない

3歳以降の保育料は所得を問わず無償化されているため、0〜2歳の部分が無料になれば、小学校に入るまでの保育料負担はほぼ消えることになります。子育て世帯にとっては、金額の大きい軽減です。

1.7 7.大学の授業料減免と、返さなくてよい奨学金

高等教育の修学支援新制度により、授業料と入学金が減免されるほか、返済不要の給付型奨学金も受けられます。世帯の経済状況を理由に進学をあきらめずに済むよう設けられた仕組みです。

1.8 8.水道・ゴミ袋・交通費など、自治体ごとの上乗せ

水道の基本料金免除、指定ゴミ袋の無料配布、公共交通の無料乗車券など、市区町村が独自に用意しているものです。何があるかも、いくら軽くなるかも、住んでいる場所によってまったく違います。

なお、非課税世帯というと年金生活のシニアを想像しがちですが、対象はそこに限りません。失業して収入が途切れた方、育児休業で一時的に給与が下がった世帯、所得が基準を下回ったフリーランスなども当てはまり得ます。

では、どこまでの収入なら対象になるのか。基準額は市区町村ごとに設定されているため全国一律ではありませんが、兵庫県神戸市の例でいえば、単身世帯の境界線は給与収入のみで年収110万円以下、65歳以上で年金収入のみなら年収155万円以下です。配偶者や扶養親族がいれば、この線はさらに上がります。

田中 友梨
8つを仕分けすると、国保料と介護保険料は自治体まかせで構いません。逆に、国民年金の免除、進学の修学支援、NHKの受信料免除は、こちらから申し出ないと1円も軽くなりません。放置して困るのはこの3つです。年金を受け取っている世帯なら、非課税かどうかが要件に絡む「年金生活者支援給付金」の対象にもなっていないか、あわせて確かめておきたいところです。

2. 【検算】「年収110万円」「年収155万円」という線は、どこから出てきた数字か

神戸市が示す境界線は、単身なら給与110万円以下、65歳以上で年金のみなら155万円以下。並べて見ると、なぜ45万円も違うのかが分かりません。所得に換算し直すと、この違いの正体がはっきりします。

住民税の判定に使われるのは収入そのものではなく、そこから控除を差し引いた「合計所得金額」です。国税庁によると、令和7年分以後の給与所得控除は、給与収入190万円までなら65万円。公的年金等控除は、65歳以上で年金収入330万円未満なら110万円、65歳未満で130万円未満なら60万円です。この控除額を引いてみます。

2.1 神戸市の年収ラインを、合計所得金額に置き換えると

  • 単身・給与110万円 - 給与所得控除65万円 = 45万円
  • 単身・年金155万円(65歳以上)- 公的年金等控除110万円 = 45万円
  • 単身・年金105万円(65歳未満)- 公的年金等控除60万円 = 45万円
  • 扶養あり・給与166万円 - 給与所得控除65万円 = 101万円
  • 扶養あり・年金211万円(65歳以上)- 公的年金等控除110万円 = 101万円

ばらばらに見えた5つの年収が、単身なら45万円、扶養がいれば101万円という同じ数字に着地しました。判定しているのは最初から所得のほうであって、年収の数字が違って見えたのは、収入の種類ごとに引ける控除額が違うからにすぎません。

給与と年金で年収ラインが45万円ずれるのも、公的年金等控除(110万円)が給与所得控除(65万円)よりちょうど45万円大きいためです。同じ「合計所得45万円以下」でも、年金で受け取るほうが手にできる収入は多くなる、という関係になっています。

ここから読み取れるのは、収入が少し増えそうなときに見るべき数字が「年収」ではないということです。判定されるのは控除後の所得なので、年収ラインを暗記するより、自分の所得がいくらなのかを課税証明書で確認するほうが確実です。給与と年金の両方がある方は、それぞれの控除を引いたあとの合計で判定されるため、上記の年収ラインをそのまま当てはめることはできません。基準額そのものも自治体ごとに異なります。