ゲーム会社の株が動くと、投資家はまず新作の話を探す。だが、そこに答えが見つからないことも少なくない。セガサミーホールディングス(6460)の株価は2026年8月25日、前営業日から175円高い3,022円で取引を終えた。直近1カ月の値動きと、2027年3月期1Qの中身を並べて考えてみたい。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

ココがポイント
  • 株価は8月25日に3,022円まで上昇し、直近1カ月の起点である7月27日の2,664円からは13.4%の上昇となった
  • 2027年3月期1Qは売上高950億円で前年同期比+17.3%、営業利益23億円。通期予想に対する営業利益の進捗は5%台にとどまる
  • 2026年3月期の売上高は7割がエンタテインメントコンテンツ事業だが、セグメント利益では遊技機事業がほぼ並ぶ

1. 2,648円まで沈んだ株価が3,000円台を回復するまで

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月の終値を並べると、出発点は7月27日の2,664円である。そこから数日で水準が上がり、7月29日には2,922円、翌30日には2,911円まで乗せた。

ところが8月に入ると勢いが続かない。8月5日の終値は2,648円で、これが直近1カ月では最も低い水準になる。7月30日の2,911円からは260円あまりの下げになる。

その後は2,700円台での往復が2週間ほど続いた。8月13日には2,654円まで押し戻される場面もあり、方向感を欠いたレンジだった。

変化が出たのは月の下旬だ。8月21日に2,792円、8月24日に2,847円と水準を切り上げ、そして8月25日の3,022円である。前営業日からの上昇率は6%台に達した。

1カ月前の2,664円と比べると、上昇率は13.4%となる。月内でいったん2,648円まで沈んだうえで、直近1カ月の中で最も高い終値をこの日に付けた形だ。

では何が効いたのか。2027年3月期1Qの内容はすでに市場に出ており、当日の動きを決算材料だけで説明するのは無理がある。会社の今期見通しに対する見方の変化や、相場全体の地合いが重なった可能性が高い。

2. PER18倍台が見ているのは、前期の実績ではない

8月25日時点のPER(株価収益率)は18.85倍、PBR(株価純資産倍率)は1.73倍である。数字だけを見れば、特に極端な水準ではない。

もっとも、この18.85倍は前期の実績から出てくる数字ではない。2026年3月期のEPS(1株当たり当期純利益)は▲27.36円で、最終損益は赤字だったからだ。赤字の期にPERは成り立たない。

会社が2027年3月期に見込むEPSは160.36円である。3,022円をこの水準で割ると18倍台に収まる。つまりPERが映しているのは前期ではなく、今期の会社予想そのものだ。

PBRの側も同じ構図で、1株当たり純資産1,750円に対する1.73倍という値になる。株価が織り込んでいるのは、赤字からの復帰が実際に起きるかどうかだと読み取れる。

ここに一つ、落ち着いて見ておきたいねじれがある。2026年3月期の売上高4,875億円は過去5期で最も大きく、前期比+13.7%の増収だった。それでいて最終損益は赤字である。

売上が伸びた年に赤字になる。この組み合わせは、事業が縮んだから赤字になったのではないことを示している。原因は別のところにある。

3. 増収17%の1Qで、営業利益の進捗が5%台にとどまる意味

2027年3月期1Qは、売上高950億円で前年同期比+17.3%となった。営業利益は23億円、経常利益は36億円、当期純利益は21億円である。

一方で通期予想は売上高5,100億円、営業利益445億円、経常利益475億円、当期純利益325億円だ。1Qの営業利益は通期予想の5%台にすぎない。

四半期が均等に進むなら25%が目安になる。数字の見た目としては、かなり薄い立ち上がりだ。

なぜそれで問題にならないのか。会社によれば、大型新作タイトルの投入が3Q以降に偏るなかで、各セグメントの売上高は概ね想定どおりに進み、営業利益と調整後EBITDAは想定を上回った。1Qの調整後EBITDAは78億円である。

要するに、進捗の薄さは計画どおりの薄さだという説明になる。期初から下期偏重を前提に置いた計画であれば、1Qの進捗率をそのまま年換算する読み方は誤りになる。

ただし下期偏重の計画には、別の性質もある。稼ぐ時期が後ろに寄るほど、そこで計画から外れたときに手当てする時間が残らない。1Q末の自己資本比率は58.2%で、財務の受け皿はある。だが時間だけは買えない。

4. 筆者コメント

1カ月で水準を大きく切り上げた株価と、通期計画に対してごくわずかしか積み上がっていない1Qの営業利益。この二つは、どうやって同じ会社の中で同時に成り立っているのか。

答えは、両者が見ている時間軸が違うところにある。株価は今期の会社予想EPSを起点に動き、1Qの数字は下期偏重のスケジュールの入口を見せている。噛み合っていないのではなく、そもそも別の場所を指している。

私が気にするのは、下期偏重そのものではない。それが2期続いた点だ。前期は会社の説明でも、新作タイトルの投入の遅れが業績の低調につながったとされていた。

下期に集中する計画は、当たれば一気に効く。外れたときの逃げ場が狭いのも同じ理由からだ。1Qの進捗率を単純に悲観する必要はないが、下期の入口である3Qへの入り方は、意識して見ておきたいところだ。