ココがポイント
  • 株価は昨秋から倍超。転換点は2026年7月の通期着地と増配
  • 増益を作ったのは「探索領域」ではなく「深化領域」
  • 高ROEは利益率ではなく、回転とレバレッジで作られている

中古品の売買と聞くと、安く仕入れて高く売る商売だから、もうけは厚いはずだという見方が先に立つ。ブックオフグループホールディングス(9278)の株価は、昨秋以降その期待に沿うように水準を切り上げてきた。ただ、決算をセグメントまで割って眺めると、稼ぎの出どころは思っていた場所と少しずれている。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

1. 株価が水準を変えたのは2026年7月。それまでは静かな切り上がりだった

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

まずは値動きを追っておこう。

2025年9月末の終値は1,500円台だった。そこから10月末には1,300円台まで下押しし、昨秋以降の月末終値ではこれが最も低い水準になる。

そこから先は、緩やかだが方向のはっきりした切り上がりが続く。11月末から12月末は1,400円台、2026年1月末に1,500円台、2月末には1,900円台まで水準を変えた。

3月末はいったん1,700円台に戻したが、4月末と5月末は2,000円台。6月末は1,900円台と、春から初夏はおおむね2,000円をはさんだレンジで揉み合っている。

局面が変わったのは2026年7月だ。7月末の終値は2,800円台。ひと月で水準が一段上に跳んだ格好で、2026年8月時点の直近終値は2,900円台に乗せている。

昨秋の水準と比べれば、株価は倍を超えている。時価総額の小さい銘柄はボラティリティが高くなりやすいとはいえ、1年弱でこれだけ水準が変わったのだから、会社の中で何かが動いたと考えるのが自然だろう。

もっとも、株価がなぜ動いたかは需給や相場全体の地合いも絡むため、誰にも断定はできない。7月の一段高については、後述する通期決算の着地と増配が同時に意識された可能性が高い。

興味深いのは、株価が最も低い水準にあった昨秋が、ちょうど業績の一番苦しい局面と重なっていることだ。そこから四半期を追うごとに、決算の表情と株価の水準が同じ方向へ動いていった。

2. 上期は増収減益、通期は会社計画を上回る着地。折り返しはどこで起きたのか

2026年5月期は、期の前半と後半で表情がまったく違う年になった。

上期の売上高は611億円で前年同期比+7.6%。ところが経常利益は14億円と▲15.1%、中間純利益は7億円で▲18.8%と、増収減益で折り返している。1Qの営業利益も4億円にとどまっていた。

なぜ利益が落ちたのか。会社によると、カザフスタンにおける合弁契約を解消して出資持分を全て譲渡したことに伴う関係会社出資金売却損、そして国内ブックオフ事業における戦略的な退店に伴う店舗等閉鎖損失引当金繰入額の影響があった。

つまり上期の減益は、稼ぐ力そのものの劣化というより、事業の整理に伴う費用が重なった結果という説明である。

実際、上期のうち2Q単体では経常利益が8億円と+67.1%の増益に転じている。国内ブックオフ事業とプレミアムサービス事業で増収増益になったという。

そこから先の巻き返しは速い。3Q累計は売上高957億円で+8.4%、営業利益36億円で+15.6%、経常利益38億円で+12.3%、純利益23億円で+18.4%と、累計ベースで増益に戻した。

3Q単体だけを取れば経常利益は24億円で+39.4%、純利益は15億円で+50.3%。増益の勢いは期の後半にかけて強まっている。

そして通期の着地は、売上高1,301億円で+9.2%、営業利益44億円で+27.8%、経常利益47億円で+20.9%、純利益27億円で+31.5%となった。営業キャッシュフローは48億円で+59.8%と、利益の伸びを上回って増えている。

見逃せないのは、この着地が会社自身の計画を上回っている点だ。3Q累計の開示時点で会社が置いていた通期計画は、売上高1,280億円・営業利益40億円・経常利益43億円・純利益24億円だった。実績はそのすべてを超えている。

配当も同じ形をたどった。3Q累計時点の予想は1株30円だったが、実績は36円。前期の25円から一段引き上げている。翌期の2027年5月期については1株40円を計画している。

保守的に置いた計画を実績で上回り、配当も予想を超えて出した。7月の株価の反応を説明する材料としては、これでおおむねそろっている。

3. 増益を主導したのは「深化領域」だった。探索領域の利益はまだ薄い

ここからが本題だ。1,301億円の売上と44億円の営業利益は、どこから出てきたのか。

会社は2028年5月期を最終年度とする中期経営方針で、事業を二つに色分けしている。認知度の高さを活かして安定した収益を獲得する「深化領域」が国内ブックオフ事業、経営資源とノウハウを投入する「探索領域」がプレミアムサービス事業・海外事業・新たな事業だ。狙いは事業ポートフォリオの変革だとしている。

この立て付けを聞けば、成長の主役は探索領域にあると受け取るのが普通だろう。ところがセグメント別の数字は、少し違う姿を映している。

国内ブックオフ事業の売上高は1,126億円で、連結の86.6%を占める。増収率は+8.0%。経常利益は63億円で、前期の53億円から+19.1%伸びた。売上に対する経常利益率は5.7%になる。

会社によれば、直営既存店でトレーディングカード・ホビー、貴金属・時計・ブランドバッグ、アパレル、書籍などの売上が前年を上回った。単価の高い商材が伸びた構図と読み取れる。

プレミアムサービス事業は売上高85億円で+18.8%と、伸び率では最も高い。ただ経常利益は1.6億円で、売上に対する利益率は1.9%にとどまる。

海外事業はもう少し複雑だ。売上高71億円で+15.8%と伸ばした一方、経常利益は6億円で前期比▲0.4%とほぼ横ばい。利益率で見ると前期の11.2%から9.7%へ下がっている。その他の区分は経常損失▲3億円で、赤字幅は前期より広がった。

並べてみると、増益の主役は明確だ。深化領域である国内ブックオフ事業の利益が10億円ほど積み増され、それが連結の増益をほぼ作っている。探索領域は売上構成比では1割強まで来ているが、利益への寄与はまだ小さい。

4. 設備投資の配分も深化領域に寄っている

資源配分の実態は、設備投資を見るとさらにはっきりする。

2026年5月期の設備投資は、国内ブックオフ事業が22億円。これに対してプレミアムサービス事業は0.92億円、海外事業は4.13億円だ。減価償却費も国内ブックオフ事業の18億円に対し、海外事業は4.76億円、プレミアムサービス事業は0.65億円である。

経営資源とノウハウを探索領域に投入する、という方針と、実際の投資額の重心が深化領域にあること。この二つは矛盾ではない。店舗網を持つ事業のほうが投資単位が大きくなるのは当然で、探索領域は文字どおり探索の段階にあるからだ。

ただ「ポートフォリオの変革が進んでいる」という語り口と、「深化領域が稼ぎ、投資し、探索領域を支えている」という実際の姿は、同時に成立している別の事実である。この二つを混同しないように気をつけたい。