お盆休みなどで実家に帰省し、高齢の親と久しぶりに顔を合わせたことをきっかけに、老後のお金の話が気になり始めたという方も少なくないのではないでしょうか。
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年」によれば、65歳以上の単身で仕事に就いていない世帯の可処分所得は月平均11万8465円である一方、消費支出は14万8445円にのぼります。
差し引き毎月およそ3万円(2万9980円)の赤字を、貯蓄の取り崩しなどで補っているのが実情です。
「年金だけで暮らせる」と感じている人は一部にとどまり、実際にどれだけの年金を受け取れているかによって、老後の暮らし向きは大きく変わってきます。
本記事では、厚生労働省などの資料をもとに、公的年金の仕組みと2026年度の支給額、受給額の実態分布、シニア世代の生活実感、そして直近の制度改正の動きまでを整理します。
※本記事は一部「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」を引用のもと執筆しています。
-
65歳以上・単身無職世帯は可処分所得11万8465円に対し消費支出14万8445円、月約3万円の赤字
-
厚生年金受給者のうち月15万円以上を受け取っているのは全体の49.8%で、半数を下回っている
-
60歳代単身世帯の50.7%が「年金だけでは日常生活費もまかなえない」と回答、70歳代は35.5%
1. 国民年金と厚生年金の基本構造とは?日本の公的年金「2階建て」の仕組み
日本の公的年金制度は、すべての加入者の基礎となる「国民年金(基礎年金)」と、会社員などが上乗せで加入する「厚生年金」の2種類から成り立っています。
この構造は、しばしば「2階建て」に例えられます。
ここでは、それぞれの制度の基本的な特徴を確認していきましょう。
1.1 【1階部分:国民年金(基礎年金)】
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられているのが国民年金です。
自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが「第1号被保険者」として加入し、全員が一律の保険料を納めます。
会社員に扶養されている配偶者(年収130万円未満など)は「第3号被保険者」となり、個別の保険料負担はありません。
1.2 【2階部分:厚生年金】
厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員や公務員が加入するのが厚生年金です(第2号被保険者)。
国民年金に上乗せされる形で加入するため、将来は「基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)」の2階建てで年金を受け取ることができます。
保険料は給与額に応じて変動し、会社と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」が大きな特徴です。
国民年金と厚生年金とでは、加入対象者、保険料の算定方法、そして支給額の計算方法がそれぞれ異なるため、老後に受け取る年金額は、現役時代にどの制度に加入していたかや、収入の状況によって個人差が生まれます。
また、公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金変動に合わせて毎年改定される仕組みであることも、理解しておくべき重要な点です。
2. 【2026年度】厚生年金・国民年金の支給額はいくら?モデルケースで解説
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の動向に応じて毎年改定される仕組みです。
2026年1月23日に、厚生労働省は2026年度(令和8年度)における年金額の改定について公表しました。
新しい年度の4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)で+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)で+2.0%の引き上げとなります。
- 国民年金(老齢基礎年金)の満額:月額7万608円(1人分)
- 厚生年金の夫婦モデルケース:月額23万7279円
※厚生年金のモデルケースは、「平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)約43.9万円)で40年間就業した夫」と「専業主婦の妻」の2人分の老齢基礎年金を含む金額として設定されています。
年金は「雑所得」として課税対象になります。額面通りに振り込まれるわけではなく、税金や社会保険料が天引きされるため、手取り額は減少します。
ただし、これらの金額はあくまでモデルケースに基づいた試算です。
実際の支給額は現役時代の働き方や収入によって大きく異なるため、「ねんきんネット」などを活用してご自身の年金見込額を事前に確認しておくことが重要です。
3. 年金月額15万円以上を受け取る人の割合は?厚生年金受給者のリアルな実態
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者(男女計)の平均受給月額は15万289円です。
この金額には、1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)の支給額も含まれている点に注意が必要です。
受給額別の人数分布は、以下のようになっています。
3.1 厚生年金の受給額別・受給権者数の内訳
- 3万円未満:9万2933人
- 3万円以上~6万円未満:25万3349人
- 6万円以上~9万円未満:169万6235人
- 9万円以上~12万円未満:319万5770人
- 12万円以上~15万円未満:283万1925人
- 15万円以上~18万円未満:299万8308人
- 18万円以上~21万円未満:284万3094人
- 21万円以上~24万円未満:157万8595人
- 24万円以上~27万円未満:47万5674人
- 27万円以上~30万円未満:10万530人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータを見ると、厚生年金の月額が15万円以上の人は全体の49.8%であり、半数を下回っていることがわかります。
この数字は厚生年金受給者に限定したものであるため、厚生年金に加入していなかった人を含めると、この割合はさらに低くなると考えられます。
4. 60歳代単身世帯の半数が「年金だけでは生活が厳しい」と回答、その実情とは
実際に年金を受給しているシニア世代は、日々の暮らし向きについてどのように感じているのでしょうか。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が実施した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」のデータから、シニア世代が直面する厳しい現実が見えてきます。
4.1 「年金だけで不自由なく暮らせる」と考える人は少数派
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、60歳代と70歳代で「年金収入で特に不自由なく生活できる」と回答した人の割合は、二人以上世帯・単身世帯ともに8%~12%台に過ぎません。
4.2 単身世帯では「日常生活費をまかなうのも難しい」との声が多数
一方で「日常生活費をまかなうことさえ難しい」と回答した割合は、二人以上世帯では26%~33%台でした。これに対し、単身世帯では60歳代で50.7%、70歳代で35.5%と、より高い水準になっています。
4.3 生活にゆとりがない最大の要因は「物価上昇」
年金生活でゆとりを感じられない理由については、年代や世帯の別を問わず「物価上昇など」が最も多く、いずれの層でも50%を超えました。次いで「医療費の自己負担増」や「年金支給額の減額」といった理由が続いています。
この調査結果は、多くのシニア世帯が物価高騰によって家計が圧迫されていると感じており、年金収入のみでゆとりのある生活を送ることが困難になっている現状を浮き彫りにしています。
5. 【年金制度改正のポイント】「年収106万円の壁」はどう変わる?主な変更点を解説
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決、成立しました。
この法改正は、働き方や家族構成、ライフスタイルの多様化に対応した年金制度を構築することを目的としています。
同時に、私的年金制度の充実や所得再分配機能の強化を図り、高齢期の生活基盤を安定させることも重要な狙いです。
ここでは、今回の改正における主なポイントを見ていきましょう。
5.1 年金制度改正の主な内容
社会保険の適用範囲拡大
- 中小企業で働く短時間労働者などが厚生年金や健康保険に加入しやすくなり、将来の年金増額といった恩恵を受けられるようになります。
在職老齢年金制度の見直し
- 年金を受給しながら働く高齢者が、年金を減額されることなく、より意欲的に働ける環境を整えます。
遺族年金制度の見直し
- 遺族厚生年金における男女間の差をなくし、子どもが遺族基礎年金を受け取りやすくします。
保険料・年金額計算の基礎となる賃金上限の引き上げ
- 高所得者がその収入に見合った保険料を負担し、それに応じた年金を将来受け取れるようにします。
その他の改正点
- 子の加算や脱退一時金制度の見直しが行われます。
- 私的年金制度の見直し:iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢の上限引き上げなどが含まれます。
今回の改正内容が示すように、公的年金制度は単に老後の受給額に関わるだけでなく、現役時代の働き方やキャリアプラン、ひいては人生設計そのものに深く関わる重要な制度といえるでしょう。
6. 監修者からのコメント
本文で見た通り、単身無職の高齢世帯は毎月約3万円の赤字を貯蓄などで穴埋めしているのが実情です。
ここで見落とされがちなのが、貯蓄額の「平均」と「中央値」の差です。
総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」によれば、世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高は、平均値で2564万円、中央値では1777万円と、800万円近い開きがあります。
平均値は一部の多額貯蓄世帯によって引き上げられやすく、実際の「真ん中の世帯」が持つ資産はそれより少ないのが実態です。
年金の受給額だけでなく、ご自身の貯蓄が全体のどのあたりに位置するのかも、老後の家計を考えるうえで重要な手がかりになるでしょう。
特に退職後は、貯蓄の絶対額だけでなく、毎月の赤字幅に対して何年分の取り崩しに耐えられるかという視点も欠かせません。
「ねんきんネット」で見込み額を確認するのとあわせて、ご自身の貯蓄額が平均・中央値のどのあたりに位置するかも、一度整理しておくとよいでしょう。





