「老後は家族と一緒に」というイメージは、いまや統計から見ると少数派です。厚生労働省が2026年7月に公表した「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上のいる世帯のうち単独世帯の割合は33.8%まで上昇しました。
40年前の1986年は13.1%だった単独世帯が、いまでは3人に1人以上へ拡大。夫婦のみ世帯32.0%と合わせると、65歳以上のいる世帯の6割超が「他の家族とは同居していない」暮らしになっています。
この記事では、単独世帯の増加背景と、一人暮らし高齢者の家計・備えの実情を、公的統計から整理します。
この記事では、以下の記事の内容も引用・参考にしています。
- 65歳以上のいる世帯の33.8%が単独世帯、1986年(13.1%)から40年で2倍超に増加
- 夫婦のみ世帯32.0%と合わせて65.8%、6割超が「家族との同居なし」の暮らし
- 単独世帯の家計は年金・貯蓄・制度活用の3本柱で支える設計が現実的
1. 65歳以上のいる世帯の33.8%が「一人暮らし」
まずは、単独世帯がどこまで増えているのかを最新データで確認します。
1.1 2025年の最新調査で単独世帯は33.8%
厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上のいる世帯のうち単独世帯は33.8%。前年より上昇傾向で、単独世帯の割合は右肩上がりを続けています。
1.2 40年で13.1%→33.8%、2倍超の伸び
過去の調査と比較すると、単独世帯の割合は1986年13.1%、2010年24.2%、2025年33.8%と伸び続けています。40年で2倍超に増えた計算で、この40年間の世帯構造の変化を象徴する数字です。
背景には、平均寿命の伸びで配偶者と死別した後の期間が長くなっていることや、子どもと同居する世帯構造そのものが縮小していることがあります。
2. 【ひとりの老後】単独世帯の暮らしを支える3本の柱とは?
一人暮らしの高齢者の家計は、公的年金・貯蓄取り崩し・制度活用の3本柱で組み立てるのが基本形です。
2.1 ①公的年金|世帯合算がない分、単独では厳しい
単独世帯では、夫婦のような年金合算ができません。国民年金だけの人は月6万770円(令和8年3月現在)、厚生年金の全体平均は月15万4747円と、収入源としての水準が世帯構造で大きく変わります。
厚生年金の受給者でも、単身高齢者の月平均消費支出(14〜15万円)を差し引くと余裕は限定的です。
2.2 ②貯蓄取り崩し|15年で数百万円〜1000万円規模
年金だけでは足りない部分は、貯蓄の取り崩しで補うのが一般的です。月3〜5万円の取り崩しを15年続けると、単純計算で540〜900万円規模になります。加えて、家電の買い替えや住まいの修繕、医療・介護の大型支出も想定する必要があります。
2.3 ③制度活用|見落としがちな支援を漏れなく
単独世帯こそ制度活用の効果が大きくなります。年金生活者支援給付金・住民税非課税優遇・高額療養費・介護保険の負担軽減など、申請主義の制度が多いため、自分から動かないと使いこぼしてしまいます。
3. 単独世帯特有のリスクにどう備えるか
単独世帯の暮らしには、経済面以外にも独自のリスクがあります。
3.1 認知機能低下時の家計管理
単身の高齢者では、認知機能が低下した際に家計管理や契約手続きが難しくなるリスクがあります。成年後見制度や日常生活自立支援事業など、事前に備えを検討しておく価値があります。
3.2 孤立と見守り
家族との同居がない分、地域や自治体の見守りサービス、民生委員、生協や配食サービスの活用など、生活を支える"人のつながり"の設計も重要です。
「ひとりの老後」と聞くと、どこか特別な事情のある人の話のように感じる方もいるかもしれません。けれど統計を並べてみると、それはもう例外ではなく、誰にでも起こりうる暮らしの形のひとつになっています。裏を返せば、家族と同居していることを前提にした老後設計のほうが、これからは少数派になっていくということでもあります。
「そのときになってから考えればいい」—そう思ってしまう気持ちは、よくわかります。ただ、単独世帯の家計が難しいのは、収入も支出も、そして判断も、すべてを自分ひとりで担うことになる点ではないでしょうか。夫婦であれば年金を合算でき、体調を崩したときにも互いに気づけますが、ひとりの暮らしにはその余白がありません。
だからこそ、金額の大小よりも先に「見えているかどうか」が効いてきます。年金の見込額、貯蓄の残高、そして使える制度—この3つを書き出してみるだけでも、これから何を準備すべきかがはっきりしてくるように思います。制度の多くは、自分から動かなければ届かない仕組みです。まずは現状を確かめるところから、始めてみてはいかがでしょうか。



