公的年金は偶数月の15日に支給されます。2026年8月は15日が土曜日にあたったため、前倒しで14日に振り込まれました。次の支給日は10月です。
2カ月分がまとめて入るこのサイクルは、毎月給料日があった現役時代とは家計の回し方が変わります。手元の貯蓄がどれくらいあれば安心なのか、改めて確認しておきたいところです。
この記事では、65歳以上・無職世帯の平均貯蓄額と家計収支、2026年度の年金額改定、そして国民年金・厚生年金の平均月額を確認していきます。
なお、65歳以上世帯の貯蓄額や家計収支の実態については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 65歳以上・無職世帯の平均貯蓄額は2494万円。6年ぶりに前年から減少に転じた
- 65歳以上の夫婦のみ無職世帯は毎月約4万2000円の赤字。貯蓄の取り崩しでカバーする構図
- 60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答
1. 65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額
65歳以上世帯の貯蓄と年金の全体像については【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説でも解説されていますが、ここでは最新の内訳を確認していきます。
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の平均貯蓄額は2494万円でした。
1.1 世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄の種類別現在高の推移(二人以上の世帯)
この貯蓄額は近年増加傾向にあり、2024年には2560万円まで右肩上がりの状態が続いていました。この点について、同記事ではこう述べられています。
この平均貯蓄額は、2024年の2560万円から66万円(▲2.6%)減少し、6年ぶりにマイナスに転じました。
貯蓄の種類別に見ると、最も多いのは定期性預貯金で778万円です。次いで通貨性預貯金が766万円、有価証券※1が510万円、生命保険などが426万円、金融機関外※2の貯蓄が13万円となっています。
前年からの増減では、定期性預貯金が-81万円(-9.4%)、通貨性預貯金が-35万円(-4.4%)とそれぞれ減少した一方で、有価証券は+9万円(+1.8%)と伸びを見せています。
※1 有価証券:株式、債券、株式投資信託、公社債投資信託、貸付信託、金銭信託など(いずれも時価)
※2 金融機関外:金融機関以外への貯蓄のことで、社内預金、勤め先の共済組合への預金など
2. 65歳以上《有職世帯を含む》の貯蓄額
同じく「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」から、有職世帯も含めた世帯主が65歳以上世帯全体の貯蓄額を見てみましょう。
2.1 世帯主が65歳以上の世帯の現在貯蓄高階級別世帯分布(二人以上の世帯)ー2025年ー
65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 平均値:2564万円
- 貯蓄保有世帯の中央値(※):1777万円
有職世帯を含めた65歳以上の二人以上世帯における平均貯蓄額は2564万円ですが、貯蓄が0円の世帯を除いた中央値を見ると1777万円にとどまり、平均値よりも約790万円低い結果となっています。
貯蓄現在高の分布を見ると、2500万円以上の世帯が全体の36.3%(約3分の1)と高い階級に広がっている一方で、300万円未満の世帯も14.9%存在しています。
このことから、一部の貯蓄額が非常に多い世帯が全体の平均値を押し上げている構造が分かります。
※貯蓄保有世帯の中央値とは、貯蓄現在高が「0」の世帯を除いた世帯を貯蓄現在高の少ない方から順番に並べたときに、ちょうど中央に位置する世帯の貯蓄現在高をいいます。
3. 65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支
老後のお金について具体的にイメージするため、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見てみましょう。
3.1 「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支
3.2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯:毎月の収入
- 収入合計:25万4395円
- うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
3.3 65歳以上の夫婦のみの無職世帯:毎月の支出
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
支出合計29万6829円
この世帯の場合、ひと月の収入は25万4395円、その約9割の22万8614円を公的年金などの社会保障給付が占めます。
一方で支出の合計は29万6829円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万2850円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が26万3979円でした。
この夫婦世帯の場合、毎月約4万2000円の赤字となり、貯蓄の取り崩しなどでカバーすることになるでしょう。
4. 2026年度の年金額はいくら?
公的年金額は、物価や現役世代の賃金を考慮して年度ごとに改定されるルールです。2026年度分は、法律の改定に基づき前年度より国民年金(基礎年金)1.9%、厚生年金(報酬比例部分)2.0%増額され、4年度連続のプラス改定となりました。
4.1 2026年度の年金額例
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの老齢基礎年金(満額1人分)は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
ただし上記はあくまでも「年金例」です。実際に支給される年金額は、現役時代の年金加入状況により個人差が出ます。
なお、年金額自体は国民年金1.9%、厚生年金2.0%増えていますが、「マクロ経済スライド」の発動により、実質的には目減りしている点には注意が必要です。
マクロ経済スライドとは、公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動と平均余命の伸びに基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除する仕組みです。
5. 国民年金・厚生年金の平均月額と男女差
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年度末現在の平均年金月額は以下の通りです。
※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。また、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)部分が含まれています。
5.1 国民年金・厚生年金「平均月額や個人差を見る」
5.2 国民年金(老齢基礎年金):平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
5.3 厚生年金(国民年金部分を含む):平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
国民年金のみを受給する場合は男性が6万円台、女性が5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)では男性が16万円台、女性が11万円台が平均です。
しかし、グラフから分かるように、受給権者の間で年金額には大きな個人差があります。ご自身の年金見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。
年代別の平均年金月額や手取りの目安は、【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金で確認できます。
6. 「年金だけでは日常生活費もまかなえない」と感じる世帯の割合
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」では、60歳代・70歳代の二人以上世帯において、60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。
6.1 「年金にゆとりがない」と感じる理由
年金にゆとりがないと感じる理由としては、物価上昇や医療費・介護費負担の増加が上位に挙げられます。
完全リタイア後の老齢年金世帯は、現役時代に比べて収入が減少するのが一般的です。そのため、家計への負担感は今後も増していくことが予想されます。
また、現役時代は毎月給料日があったものの、老後の年金は「偶数月に2カ月分まとめて支給」となるため、家計管理のサイクルも変化します。
年金支給のサイクルに合わせ、日ごろの生活費のやりくりに工夫を加える必要があるでしょう。
7. 【監修者コメント・安達さやか】貯蓄が減ったのは預貯金、増えたのは有価証券
この記事では、65歳以上・無職世帯の貯蓄額と家計収支、2026年度の年金額改定、そして国民年金・厚生年金の平均月額をご紹介しました。
世帯主が65歳以上の無職世帯の平均貯蓄額は2494万円で、2024年の2560万円から66万円減り、6年ぶりのマイナスに転じています。
なお、この減少がどこで起きているかは、種類別の内訳に表れています。定期性預貯金が81万円、通貨性預貯金が35万円それぞれ減った一方で、有価証券は9万円増えています。減ったのは預貯金のほうで、取り崩しの出どころが読み取れます。
また、2026年度の年金額は基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%の引き上げとなりましたが、マクロ経済スライドによる調整が入るため、実質的な価値は目減りします。
額面の増加分と、実際に使える価値は分けて見ておくとよいでしょう。増えた分をそのまま余裕として見込むより、物価の動きと合わせて確かめておくことが大切です。


